IN FINANCE · ISSUE 260
● 12 SEC会社の成果の話は、たいてい途中の利益から始まります。粗利、営業利益、EBITDA。見るのは、いくら残ったかではなく、どの段で線を引いたかです。
よく引かれるEBITDA〔利払い・税・減価償却の前の利益〕について、規制の側の原文が何を書いているかを読みます。土台は2003年3月28日発効の米国の証券規則で、根拠法は2002年の企業改革法。
規則は非GAAP指標〔GAAP=一般に認められた会計原則の外で作られる尺度〕を、基準どおりの最も近い尺度から金額を除く、または除かれた金額を含める調整を受けたもの、と定義します。そのGAAPは米国の会計原則だ、と規則自身が断る——「国」が原文にあるのはここだけ。
例示が続きます——"Another example would be EBITDA, which could be calculated using elements derived from GAAP financial presentations but, in any event, is not presented in accordance with GAAP."(基準どおりの表示から導いた要素で計算されうるが、いかなる場合も、GAAPに従って表示されたものではない)。基準の側が「定義していない」のではなく、規制の側が名指しで書いている。これが土台です。
課されるのは二つ。最も近い基準どおりの数字を並べることと、橋渡しを示すこと。加えて、一度きり・頻度が低い・異例とされた項目の平滑化は、2年以内に再発の可能性が合理的にあるとき、または過去2年以内に同種があったときは禁じられる。「一度きり」の名目に、規則が2年の物差しを当てている。
例外は一つだけ。利払い・税の前の利益(EBIT)とEBITDAは、現金決済を要する費用や負債を除く禁止から免除されました。理由も規則が書きます——"We are exempting EBIT and EBITDA from this provision because of their wide and recognized existing use."(広く認知されて既に使われているから)。ただし免除は橋渡しの免除ではなく、これらも最も近い数字と結びつけよ、と続きます。
会計基準の側は、射程が狭い。到達したのは基準の全文ではなく、国際会計基準を作る側の公式解説頁——表示の要求事項と構成の指針と内容の最小限を定める頁です。その全文に、EBITDAという語は現れません(走査して0件)。基準本文に定義が無いことの確認ではありません。米国側の基準の原ページは未到達で、何も書きません。

基準の外に数字がある。出すときは並べて、橋を架けろと言われる。では、その数字は何と結びついていたのか。
01除外された費用が多いほど、その後のキャッシュフローは低かった。pro forma(調整後)利益〔一度きり・現金の出ない・重要でないとされた費用を除いた利益〕。要旨いわく、その費用は重要でないどころではない——"Higher levels of exclusions lead to predictably lower future cash flows."(除外が多いほど、将来のキャッシュフローは予測どおり低い)。投資家は発表時点でその含意を汲み取らず、売買戦略が発表後の年に大きな正の異常リターン〔市場の動きを差し引いた残り〕を生んだ、とも。読めたのは2002年10月付の作業論文版の要旨まで。標本も期間も国も印字なし。
021,149件の発表を調べた研究には、別の発見が二つある。2003年の要旨は、pro formaを発表する会社が基準どおりでは頻繁に損失を報告し、サービス業とハイテク産業に集中していた、と書きます。同じ要旨が、短期の異常リターンとアナリストの1四半期先の予想の改訂を分析して——"pro forma earnings are more informative and more permanent than GAAP operating earnings."(pro formaのほうが情報量が多く持続的)。中心は後者。1,149は発表(プレスリリース)の件数で、会社の数ではありません。期間も国も印字なし。
031997〜99年の249件を調べた研究は、判定できないと自ら書く。2004年の要旨は、基準どおりの利益の情報価値が低い会社ほどpro formaを開示しやすく、利益のサプライズの方向で測った戦略的な考慮が報告の重要な決定要因だと報告し、そのうえで留保します——"Tests of the predictive ability of pro forma earnings for future profitability and returns are mixed, and we therefore cannot conclusively determine whether the investor reaction to pro forma earnings at the time of the press release is consistent with market efficiency or mispricing."(予測力の検定は結果が混在し、投資家の反応が市場効率性か誤反応かは判定できない)。249も発表の件数で、期間があるのは3本のうちこの1本だけです。

査読の外の資料も一つ。金融の実務教育の事業者が出すEBITDA解説で、査読誌ではありません。推奨側は、財務や会計方針の雑音なしに中核事業の利益を際立たせるから好まれる、と書く。限界側の見出しは「EBITDAを使うことの不利な点」で、基準に準拠しない。算定と解釈が変わりうる。設備投資を無視する。利息と税という実費用を除く。批判者〔人名は書きません〕の「減価償却を無視するので頼りすぎるな」という警告と、他の指標と併せて使えという勧めも。限界も併記したうえで、なお勧める側に傾く。
01「基準に定義がないのだから、使ってはいけない」。規則が書いたのは「基準どおりの表示ではない」であって、「使うな」ではありません。同じ規則が二つの指標だけを免除し、それでも橋渡しの義務は残した。書けるのは、そう名指しされたことと、出すなら並べて橋を架けろと課されていることまで。
02「調整後は、一度きりの費用を除いた本業の実力だ」。要旨が報告したのは、外された費用が翌期に出てくる、ではありません。除外の水準の高さと、その後のキャッシュフローの低さが、予測できる形で結びついていたという関係までです。
03「調整後を出す会社は、都合の悪い数字を隠している」。偏りは、たしかに報告されています——基準どおりでは損失が多く、情報価値の低い会社ほど開示しやすい。ここで止めると「隠している」に着地します。ところが同じ要旨の中心は、市場がpro formaを情報量が多く持続的だと受け止めた、のほうです。もう一本は判定できないと自ら書く。一方を正しい値にしない。

全文まで読めたのは6点のうち3点。査読の3本は抄録までで、うち二本は作業論文版・会議稿の要旨。国はどの抄録にも印字されていません。無作為な割り付けの記述も対照群の記述も、要旨の範囲にはありません。本文未読なので「実験ではない」とは書きません。
銘柄選びの話ではありません。要旨には異常リターンが出てきますが、どれも過去の標本で観測された関係の報告で、三本目は判定できないと自ら書いています。買う・売るの合図に読み替えないでください。
基準どおりの表示ではない、と規制の側が名指しで書き、
そのうえで、広く使われているから、と例外を置いた。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。利益を1つ書き写して何が起きるかを確かめた研究は、ありません。直さない。計算し直さない。評価もしない。
TRY IT TODAY
- 01PICK
紙かメモアプリを開き、**いま目にしている利益の数字を1つだけ**選ぶ。手元の資料でも報道の数字でも。勤め先がなければ家計や副業の「儲け」で。
- 02SORT
分かる範囲で三つ書く。(1)どの段の利益か(粗利・営業利益・EBITDA・調整後)。(2)基準どおりか、足し引きしたものか。(3)足し引きしたなら何を。不明は「不明」と。
- 03NOTE
書けなかった項目の数を、1行書く。それで終わり。良い悪いの判定はしません。
三本のあいだに、著者の重なりはありません。重なるのは材料の型——1,149件と249件はどちらも実際の発表を数えたもので、別々の標本。足し合わせられません。
確かめられたのは三つ。規則がEBITDAを名指しで基準の外に置き、それでも例外を作ったこと。基準を作る側の解説頁に、その語が無かったこと。三本の要旨が、偏りと市場の評価と判定不能の留保を並べたまま残したこと。動いたのは、呼び名のほうでした。そのうち「実力」だけが、測ればそこにある何かだ、という含みを持ち込む——というのが、この号の読み筋です。今日残るのは、その三つと書けなかった数。記録が1件、残るだけです。
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