IN CUSTOMER · ISSUE 256
● 12 SEC利用者に「これがもう使えなくなったら、どう感じますか」と尋ね、「とても困る」が40%を超えていれば達成している。一つの数で言えて、会議で通る判定です。この号が見るのは、その出どころです。
出どころにはたどり着けました。2009年公開の、ある実務家の個人ブログの記事です。査読誌ではありません。審査も、追試も、標本の一覧もありません。なお本文では、企業名も製品名も場の名前も書きません(出典欄にだけ現れます)。
40%と並んで語られるのが「輪」——使った人が新しい人を呼ぶ、という増え方です。これを定義して効果を推定した査読研究には、当たった範囲では行き着きませんでした。「存在しない」とは書きません。行き着いたのは、その手前の古い模型と、前提への検証です。
記事は動機から始まります。適合は抽象的すぎて達成が分かりにくかった——だから具体的な目安を一つ出した、と。40%は「正しい合格線」ではなく、抽象的な言葉を具体的にするための目安です。〔40%は、答えた利用者に占める割合。会社の割合ではありません。〕
芯は次の一文——「率直に言えばこの閾値はいささか恣意的だが、私は100社近くの結果を比べたうえでこれを定めた。」前半だけを引けば根拠のない数に、後半だけを引けば検証を経た基準になる。原文は、その両方です。〔100社近くは、比べた会社の数です。〕
もう一つ非対称な一文——「苦労する会社は常に40%を下回り、強い勢いを得る会社のほとんどは40%を超える。」「常に」と「ほとんど」。この非対称も原文のまま。ただし比べた100社近くの一覧は公開されておらず、当たった範囲では、それを確かめられる資料に行き着いていません。

この記事は、公開の年のうちに一度だけ書き換えられています。2009年7月末の初出から9月下旬までは「50社近く」、同年12月以降が「100社近く」。違うのはその一語だけで、但し書きの文も、いま引いた非対称の一文も、両版で一字一句同じ。現行URLは古い記事の一覧へ転送され、読んだのは2024年3月20日取得の保存版です。
012001年の再分析——統制すると、伝染の効果は消える。2001年の American Journal of Sociology 106巻5号が、伝染の証拠として長く引かれてきた古典的な普及研究を、新たに集めた広告のデータを補って再分析しました——「売り込みの努力を統制すると、伝染の効果は消える。」〔広告の分を数え入れた模型で残らなかった、という意味です。
022009年の論文——仲間の影響は300%から700%過大に推定されていた。2009年の Proceedings of the National Academy of Sciences 106巻51号は、影響と類似性を分ける枠組みを、2,740万人の利用者からなる世界規模の連絡網に当てました。従来の方法はこの網における取り入れの決定で仲間の影響を300%から700%過大に推定し、類似性が知覚された行動の伝染の50%超を説明する、と。〔幅であって、倍率ではありません。50%超は、見かけの伝染の半分より多くが類似性で説明がつく、ということ。
032012年の1本だけが無作為化実験。上の2009年と、著者が一人重なる。2012年の Science 337巻6092号は、無作為化実験で影響と被影響性を分けて測ります。130万人の代表的な標本〔全体の縮図として選んだ一部〕で、影響力のある個人ほど影響を受けにくく、網の中で固まっている——ただし断定はせず、その人々が広がりに関わっている「かもしれない」で止めています

輪の手前に、二本あります。1969年の Management Science 15巻5号は、新しい商品の最初の購入の時期の成長模型を11の耐久消費財で検証しました〔11は品目の数〕。購入の時期はそれ以前に買った人の数に関係する——輪という発想の土台です。売上の頂点と時期をよく予測し、最後にカラーテレビの長期予測。輪の効果の推定ではありません。
1992年の The Journal of Industrial Economics 40巻1号は、利用者が増えるほど価値が上がる市場での商品の投入を扱う形式模型で、効果の推定ではありません。通念を後押しする側でもない——「そうした市場は既存の商品へ偏るという通念がある。著者らは逆に、新しく互換性のない技術へ急ぎすぎる均衡の条件を示す。」五本は材料も対象も設計も違い、年の順に並ぶだけです。
01「40%を超えたから、達成している」。閾値を、達成の証明として扱わないでください。しかも40%の直後には、これらの利用者が十分に大きな対象市場を代表している必要がある、と続きます。超えるだけでは足りない、と原典自身が書いている。
02「増えているのだから、輪が回っている証拠である」。増えたという観測は、増えた理由を一つに決めません。2001年の論文は、その古典的な研究とその後の複数の研究が、社会的な伝染と売り込みの効果を取り違えていた、と書きます。当時の状況からは伝染を予期する理由が見つからず、むしろ積極的な売り込みが働いた可能性がある、と。再分析で、その効果は弱くなる、ではなく、消える。扱われたのは、一つの薬の普及でした。
03「似た人が同じ頃に同じことをしたなら、影響が伝わったのである」。似た者どうしは、つながりやすい。誰も誰にも影響していなくても、つながっていれば同じ行動が同じ頃に現れます。2009年の過大推定と50%超には、「この網における」という限定が原典の一文に入っています。別の場所や商品で同じ幅になるとは書かれていません。2012年の1本が測ったのも輪の効果ではなく、誰が影響を与えやすく、誰が受けやすいか、でした。

全文まで読めたのは、六つのうち一つ——2009年のブログ記事だけです。残る五本は抄録までで、読めていないものについては書きません。無作為な割り付けの明記は2012年の1本だけ。残る四本の抄録に記述はありませんが、「実験ではない」とは断定しません。
測られたのは、ある連絡網の2,740万人、ある場の130万人、11の耐久消費財、一つの薬の普及、一覧の公開されていない100社近く。規模も年代も水準も揃わず、足し合わせられません。増やし方も、輪の作り方も、40%を上げる方法も書きません。投資や資金調達の判断にも使えません。
率直に言えばこの閾値はいささか恣意的だが、
私は100社近くの結果を比べたうえでこれを定めた。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。定義を一行書いたとき何が起きるかを測った研究は、ありません。判定も、良し悪しも付けません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
**「うまくいっている」と判断するときに見ている数字を、一つだけ**選ぶ。売上でも件数でも。他の人の数字は見ません。
- 02DEFINE
その定義を一行で書く——何を、どの期間で、誰について数えたものか。書けなければ「書けない」と。それも記録です。
- 03DATE
最後に変えたのがいつかを一言。変えていなければ「変えていない」、思い出せなければ「思い出せない」と書く。
動いたのは、増え方の呼び名でした——普及、伝染、影響、輪。「輪」という呼び名だけが、回るほど自分で回りつづける含みを持ち込みます。その含みは、到達した五本の側からは出てきていません——というのが、この号の読み筋です。ブログの記事に、これらの論文への言及はありません。
確かめられたのは三つ。40%の出どころが個人のブログで、査読誌ではないこと。本人が「いささか恣意的」と「100社近く」を一文に並べ、その一覧は公開されていないこと。輪を定義して効果を推定した査読研究には、行き着かなかったこと。今日残せるのは、数字が一つと、定義の一行と、最後に変えた日の一言。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS成長ループ・PMF深化力を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 無作為化比較試験
- くじ引きの要領で「介入を受ける群」と「受けない群」に分けて比べる実験。「効いたかどうか」を言うための標準的な設計です。
