IN CUSTOMER · ISSUE 254

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

会議で読み上げられる数字があります。0から10で「勧めますか」と尋ね、上の二段の割合から下の七段の割合を引く。一つの数になり、こう添えられます——成長を予測できる数字は、これひとつだ。

この号が見るのは、その言い方の出どころです。2003年12月の実務誌の記事で、査読誌の論文ではありません。読めたのは抄録の全文と、無料で読める本文の前半まで。課金壁の内側には未到達です。人名も社名も商標も、この号は書きません。

読めた範囲の、原典自身の語です——売上の伸びのもっとも良い予測子は「たいてい」一問の設問でつかまえられる。研究した業種の「多くで」、勧めるほど熱心な客の割合が競合との成長率と相関した。設問は成長の「有用な」予測子になりうる。限定語が三重です。

四つめの限定は、一人称でした。"I don't want to overstate the findings … that wasn't the case in every single industry."(この発見を言い過ぎたくない。どの業種でもそうだったわけではない)。同じ段落は、それは成長を保証しないが、それ無しに利益を伴う成長は達成できない、とも続きます。

では「もっとも信頼できる唯一の指標」は、どこから来たのか。読めた範囲の原典に、その最上級は一度も出てきません。印字されていたのは、2007年に追試した側の抄録の冒頭——"advocates as the single most reliable indicator of firm growth"(もっとも信頼できる唯一の指標として提唱している)。提唱した側の自己記述ではなく、追試した側の要約です。

9と10を推奨、7と8を中立、0から6を批判という切り方と、世界水準の企業は75%から80%超という一文は、著者の地の文ではなく、編集部の要約枠にあります。同じ段落が、二通りを書きます——"the ratio of promoters to detractors … Then subtract the percentage of detractors from the percentage of promoters."(推奨する人と批判する人の比である……次に、割合を引く)。比と定義した直後に、引き算を指示しています。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
原典の語は「たいてい」「多くで」「有用な」。最上級が印字されていたのは、追試した側の抄録でした。 Visual: ALIFE

起点も、原典自身に書いてあります。ある業種の会社が毎月二問だけを尋ね、5,000の支店の順位を公表していた。その運用を見たところから、二年の研究が始まった、と。〔会社の名前は伏せました。〕無料で読める範囲は、ここで切れます。

01追試は、行われている。再現できなかったのは「明白な優越性」の主張である。2007年の論文が、その追試です。21社を繰り返し測ったデータと、ノルウェーの顧客満足の指標による15,500件超の聞き取りで、提唱者が模範例に挙げる業種をやり直しました——"fails to replicate his assertions regarding the ‘clear superiority’"(「明白な優越性」の主張を追試できなかった)。予測力がゼロだとは書かれていません。

02六つの指標を並べると、もっとも予測価値が大きかったのは平均の満足度だった。2006年の論文は、米国の顧客満足の指標と財務・株式の公開データで、六つの指標が先の業績を言い当てる力を1994年から2000年、企業の水準で比べました。最大は平均の満足度、上位二段もよい予測価値、再購買の見込みと苦情の割合は業績の側面による。推奨の意向と行動には、ほとんど、あるいはまったく予測価値がありませんでした。結びは、推奨だけに絞れという処方は誤りである、と。

03同じ2006年に、満足と株式の市場価値の関連を報告した研究がある。もう一本の2006年の論文の問いは、顧客満足への投資は超過収益をもたらすか(「はい」)、それは高い株式市場の危険と結びつくか(「いいえ」)。米国の顧客満足の指標は株式の市場価値と有意に関連するのに、その結果についての報道は株価を動かさない。二つの株式の組み合わせが低い危険で市場を上回ったとも報告しますが、この一本を投資の話としては使いません。20年前の期間の結果です。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
追試は「明白な優越性」を再現できず・六つ並べると平均の満足度が最大・満足と株式の市場価値。まず並べたのは、この3本。 Visual: ALIFE

その前に、二本。2013年の論文は表題からして追試で、その二年後の2015年は、顧客の維持について異なる指標の予測能力を比べたもの。読めたのは書誌だけで、標本も方法も結果も書きません。

年代順では、2003年の実務誌の記事、2006年に六つの指標の比較と、満足と株式の市場価値、2007年に追試、2013年にもう一本、2015年に維持の予測。六つです。ただし追試側の三本には、材料の重なりがあります——米国の顧客満足の指標が、三本すべてに共通です。

01「原典が、もっとも信頼できる唯一の指標だと言った」——語は、たいてい・多くで・有用な、だった。強い言い方のほうが引用しやすいので、この取り違えは静かに起きます。最上級が印字されていたのは、2007年の追試の抄録の冒頭で、追試する側が対象を要約した一文でした。原典の側で読めたのは、抄録の全文と本文の前半までです。

02「まだ追試されていない」——追試はある。再現できなかったのは「明白な優越性」の主張である。「確かめられていない」と「確かめられて、再現できなかった」は、まったく違います。予測力がゼロだとは、どこにも書かれていません。書かれているのは、他の測度より優れているとは言えなかった、まで。主なデータはノルウェーのもので、日本の商いではありません。

03「平均に替えればいい」——出たのは1994年から2000年の米国の企業の水準で、指標を選び直す話ではない。「平均の満足度を目標欄に置けば、成長を言い当てられる」とは、どの論文も書いていません。書かれているのは、予測価値の大小まで。その数字は、平均なのか、割合の引き算なのか。十一段の両端の割合だけを引く式では、中立の二段は計算に入りません。推奨が減ったのか、批判が増えたのか、中立が散っただけなのか。一つの数からは、同じに見えます。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
最上級の出どころ・「追試が無い」と「再現できなかった」・出た場所と水準。取り違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

公式の抄録まで読めたのは、六本のうち四本です。実務誌の記事だけは本文の前半も読めましたが、全文まで読み通せた論文は一本もありません。残る二本は書誌だけ。読めていないものについては書きません。読めた四本に、人や企業を無作為に割り付けた記述はありません。

提唱の側は実務誌の記事1本で、査読誌に出た側はいずれも追試・比較の側。この主張を査読誌で支持した論文は、出典にありません。測られたのは、ノルウェーの聞き取りと、1994年から2000年の米国の企業。関連が報告されていても、何をいつ買えばよいか・売ればよいかは一切示しません。

原典の語は、たいてい・多くで・有用な、でした。
最上級を書いたのは、追試した側です。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは企業の水準の指標と、その先の業績の結びつきです。誰にも尋ねず、点数もつけません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙でもメモアプリでも。**今日、自分が目にした「顧客についての数字」を一つだけ**選ぶ。満足度でも、継続率でも、売り文句の中の数字でも。

  2. 02COPY

    その計算式を、一行でそのまま書き写す。分からなければ「分からない」と書いて終わり。次に、平均なのか、割合なのか、割合の引き算なのかを一言で。

  3. 03NOTE

    最後に、回答や記録の一部が計算から落ちていないかを確かめ、落ちていれば範囲を一言書く。「中央の回答が入らない」——その程度で足ります。

5分。採点はありません。誰にも尋ねず、見せず、提出もしません。**株式やお金の出し入れの判断には使えません。**息苦しくなったら、中止してください。

2003年から、2026年のいまで、23年です。動いたのは、この数字の使われ方のほうです。割合の引き算は符号を持ち、マイナスは会議で強い——というのが、この号の読み筋です。

この号で確かめられたのは四つ。原典の語が「たいてい」「多くで」「有用な」だったこと。最上級が印字されていたのは、2007年に追試した側の抄録だったこと。切り方と「75%から80%超」は編集部の要約枠にあり、同じ段落が「比」と「引き算」を書いていたこと。六つを並べると、平均の満足度が最大だったこと。今日残せるのは、数字が一つと、式が一行。記録が1件です。

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HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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ISSUE 253出どころの記事には、ほぼ100%とある。ISSUE 255続いたのは、紹介者がいるあいだ。
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本コンテンツは学習目的であり、投資助言や個別の金融商品の推奨ではありません。