IN CUSTOMER · ISSUE 253

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

顧客の離反を5%減らすと、利益が25%から85%増える。この分野でいちばん引かれる数字です。この号が見るのは増やし方ではなく、その出どころに何が書いてあるかです。〔本文に企業名は書きません。〕

出どころは1990年の実務誌の記事で、査読誌ではありません。読めたのは二層——公式の抄録は全文まで、発行元が無料で公開していた本文の前半はその範囲まで。記事の後半と、参照される棒グラフの本体には届いていません。

抄録の逐語です——離反率をわずか5%下げるだけで、ある銀行の支店網では85%、ある保険の仲介業では50%、ある自動車整備の連鎖店では30%多くの利益が生まれる。三つは、三つの別々の商いの値。ところが同じ記事の地の文は、業種を分けずに書きます。

射程を先に。読めたのは抄録の全文と、無料公開されていた本文の前半まで。そのうち2013年の版にだけ編集部の要約枠が付き、枠の中の文は著者の地の文ではありません。「毎年15%から20%の顧客を失っている」は、枠の中にしかない一文です。

85%・50%・30%は別々の商いの値で、いずれも「離反率を5%下げると」の話。下端は30%。ところが本文の地の文は——顧客をわずか5%多く維持することで、利益をほぼ100%押し上げることができる。同じ抄録の125%は、ある一社が10%の離反率を半分にした(5ポイント下げた)話で、5%の話ではありません。

いちばん流通している「25%から85%」は、どこから来たのか。読めた範囲に、その形は出てきません〔「25%」も「95%」も0件〕。ただし「原典に無い」とは書きません——参照される棒グラフの本体が、購読の壁の内側だからです。手がかりは2004年の査読論文の抄録で、その書き出しが「離反を5%減らせば利益が25%から85%増える」を原典の言明として引用符で囲っています。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
公式の抄録は、ある銀行の支店網で85%、ある保険の仲介業で50%、ある自動車整備の連鎖店で30%。本文の地の文は、業種を分けずに「ほぼ100%」。 Visual: ALIFE

ここまでが、査読を経ていない一本の記事の中の話です。査読の側が測ったのは、別のことでした。

01契約に縛られない売り買いで四つの命題を検証すると、実証は期待のすべてに異議を唱えた。2000年の論文。材料は大手の通販業者の三年ぶんの日次記録〔国も年も抄録に印字なし〕。結果は「長く続く顧客が、必ずしも儲かる顧客とは限らない」。否定で終わらず、判別分析〔群を手がかりで見分けられるかを調べるやり方〕で三つの指標も特定しています。

021994年の論文は質と満足と収益性の道筋を支持し、同時に、市場占有率の拡大が満足を下げうる仮説にも予備的な支持を得た。材料は全国的な顧客満足の指標と、投下資本利益率〔投じた資本に対する利益の比〕のような会計上の測度。無作為な割り付けの実験ではなく、関係が観測され、仮説が支持されたところまでです。

03満足から利益への鎖の各環は非対称で非線形。ただし同じ抄録は、鎖そのものは概念として堅いとも書いている。2000年のもう一本。満足の測定を「罠」と呼んで放棄すべきだと論じた人々に、鎖は概念として堅いと応じ(著者らの主張です)、そのうえで——結果を得るには、各環が非対称であり非線形であると認識することが重要な一歩である。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
四つの命題すべてに異議(ただし「必ずしも」)・質と満足と収益性の道筋・鎖は非対称で非線形。まず数えられたのは、この3本。 Visual: ALIFE

もう二本。一本は、長さそのものを測った研究です。1998年の論文は、ある携帯通信の顧客を22か月記録したデータを左側切断の比例ハザード回帰〔関係がいつ終わるかを模型にするやり方〕で推定し、決定より前に引き出された満足の評価が、関係の長さと正に関連していたと報告しました。何か月もの経験を持つ顧客ほど、累積した満足を重く、新しい情報を軽く重み付けする。

もう一本は、続きです。2003年の論文は、予測される収益性を継続期間の計算に組み込み、「儲かる継続期間」のばらつきを説明しました。「長さ」ではなく「儲かる長さ」を測り直す方向。この二人は「必ずしも儲かる顧客とは限らない」を書いた二人と同じで、独立した検証ではなく連作です。査読論文は六本、独立した著者集団は四組。

01「維持率を5%上げれば、利益が◯%増える」を、自分の商いの目標に置く。業種ごとの30%から85%と、業種を分けない「ほぼ100%」が、同じ一本の中に同居しています。125%はそのどちらでもなく、10%を半分にした一社の話。この記事は査読を経ておらず、標本も手続きも読めた範囲にありません。

02「長く続く客ほど、儲かる客である」——四つの命題すべてに、実証が異議を唱えていた。四つとは、継続期間と収益性の強い正の関係、時間とともに増える利益、長く続く客に応じる費用の低さ、払う価格の高さ。ただし原典の言い方は「必ずしも」。同じ抄録は、契約のある関係については一般に有益だとも書いています。契約の有無で、話が変わります。

03「満足度を1点上げれば、利益が一定の割合で増える」——鎖の各環は非対称で、非線形だった。非対称なら、下がったときと上がったときで効きが違う。非線形なら、どの水準からの1点かで効き方が違う。一定の割合という形が、そもそも作れません。ただし、値切りで終わってもいません。1994年の論文も、道筋の支持と、市場占有率の拡大が満足を下げうる仮説への予備的な支持が同居する形。二本は筆頭著者が同じ人です。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
同じ一本に二通り・四つの命題すべてに異議(ただし「必ずしも」)・鎖は非対称で非線形。取り違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

材料は七点——1990年の記事が一点と、査読論文が六本。全文まで読めたものは、一点もありません。1990年の記事だけは抄録が全文まで読め、本文の前半にも届きましたが、後半と棒グラフの本体には届いていません。通販の研究も22か月の研究も、抄録に国の印字がありません。

無作為な割り付けの実験は、読めた範囲に1本もありません。材料は、一社の通販、ある携帯通信の顧客、全国的な満足の指標(表題によればスウェーデン)、商用の満足度調査の例。水準は企業と顧客。小さい商いも非営利も行政も入っていません。維持率の上げ方も、どの客を切るかの判断も渡しません。

離反率を5%下げると、ある銀行の支店網では85%、ある保険の仲介業では50%、ある自動車整備の連鎖店では30%多くの利益。
本文の地の文は、業種を分けずに「ほぼ100%」。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。判定しません。やめる相手を選びません。誰にも見せません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙かメモアプリを開き、**長く続けている支払いか付き合いを三つ**——毎月の購読、通っている店、定期の買い物など——A・B・Cとして書き出す。

  2. 02SPLIT

    欄を二つ作る。**左に「どのくらい続いているか」、右に「直近にどのくらい使ったか」。**分からなければ「分からない」と書いて先へ。

  3. 03NOTE

    最後に、左の欄の順番と右の欄の順番が同じかどうかを一言。「同じ」「違う」「分からない」で足ります。

5分。採点はありません。**解約や乗り換えの判断にも、家計の見直しにも使いません。**誰にも見せず、提出もしません。

年代順に並べると、1990年に記事が数字を出し、1994年に道筋が支持され、1998年に関係の長さが22か月のデータで測られ、2000年に四つの命題すべてに異議が唱えられ、同じ2000年に鎖は非対称で非線形だと整理され、2003年に「儲かる継続期間」の枠組みが出て、2004年に査読論文の抄録が1990年の言明を「25%から85%」の形で引きました。幅は14年。動いたのは数字ではなく、数字の運ばれ方でした。

確かめられたのは四つ。同じ一本の記事の中に、二通りの書き方が同居していること。125%は10%を半分にした別の一社の話であること。「25%から85%」は読めた範囲に出てこず、引いたのが2004年の査読論文の抄録であること。長く続く顧客が必ずしも儲かる顧客とは限らないと報告されたこと。「5%で25%から85%」という言い方だけが、割り当てより先に流通した——というのが、この号の読み筋です。記録が1件、残るだけです。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。