IN CUSTOMER · ISSUE 249

(仮ビジュアル)暗い石の台の上に、洋梨とさくらんぼとオーツ麦を盛った器、半分に切った洋梨、水の入ったグラス、麻の布が並んでいる朝食の静物● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

契約のあとに、使いはじめの時期があります。そこで回っている合言葉が、価値に到達するまでの時間を短くせよ。この号が見るのは、その出どころに何が置かれているか、です。

一つの書誌データベースと一般のウェブ検索で当たった範囲では、この指標の効果を推定した査読論文に行き着きませんでした。出てくるのは実務の記事だけ。〔専門の有料データベースは未確認なので、「無い」とは書きません。〕

代わりに積み上がっているのは、契約と継続を別の行動として扱う研究のほうです。読んだのは六本。

入口は2001年の論文。期待確認の理論を消費者行動の文献から借りて模型を組み立て、五つの研究仮説をオンライン銀行の利用者への実地調査で検証しました。

関係は三つ。使い続ける意図は満足と、使い続けることの有用性の認識で、満足は期待が確認された度合いと有用性の認識で、受け入れたあとの有用性の認識は確認の度合いで影響される。抄録はそのうえで、受け入れの行動と使い続ける行動の実質的な違いに注意を向ける、と書きます。

自らを「最初の一本」とは書きません。"one of the earliest theoretical models"(最も早い理論模型の一つ)。測られたのは使い続ける意図であって、実際に使い続けたかどうかではありません。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
受け入れの行動と、使い続ける行動。実質的な違いに注意を向ける、と2001年の抄録は書いています。測られたのは意図です。 Visual: ALIFE

意図と行動の距離を扱ったのが2007年の論文。頻繁な行動は習慣的・自動的になるから、「利用は主に意図で決まる」という前提は、使い続ける行動には当てはまらないかもしれない。習慣は「学習のために、人が行動を自動的に行うようになる度合い」です。

模型が想定したのは、習慣的になるほど意図の重要性が下がる向き。結果はその調整の働きを支持した、と報告されます——"may put a boundary condition on the explanatory power of intentions"(意図の説明力に境界条件を置くかもしれない)。留保はそのまま置きます。

01受け入れる行動と、使い続ける行動は、別のものとして扱われている。2001年の材料は、五つの仮説と、オンライン銀行の利用者への実地調査だけ。受け入れたのに使わなくなるという変則へ、初期の説明を一つ。それ以上は抄録にありません。

02使う前の態度は五つの知覚に基づき、使ったあとは二つだけだった。1999年が調べたのは、単一の組織の、ある一つの技術の導入〔名前は出典欄に〕。使う前の態度が基づくのは有用性・使いやすさ・結果を示せること・目に見えること・試せることの五つ。使ったあとは、有用性という道具的な信念と、印象が良くなるという知覚の二つだけ。意図も、これから使う人はもっぱら規範的な圧力、すでに使っている人はもっぱら態度で決まります。五つと二つは知覚の数で、人数でも割合でもありません。

03習慣は、意図と使い続ける行動の関係を調整する変数として働きうる。「調整する変数」とは、関係の強さが第三のものの水準で変わるということ。習慣の形成には満足・過去の行動の頻度・使い方の網羅性が効くとも。場面は自発的なウェブの継続利用で、契約した道具の使いはじめではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
受け入れと継続は別の行動・五つと二つ・習慣が意図の説明力に条件を置くかもしれない。まず読めたのは、この3本。 Visual: ALIFE

残る三本。2000年の論文は受容の模型を拡張し、四つの組織の四つのシステム、合計156名で検証。自発的な利用が二つ、義務的な利用が二つ。測定は導入前・1か月後・3か月後の三時点で、二つは導入後です。説明できたのは有用性の知覚の分散の40%から60%と、利用の意図の分散の34%から52%〔ばらつきのうち模型で説明がついた割合。残りは模型の外です〕。知覚と意図で、実際の利用ではありません。

2004年の論文は、信念が変わる過程を扱いました。標本は抄録の主語のまま"Student data"(学生のデータ)、二つの縦断研究——計算機による訓練システムの利用と、迅速なアプリケーション開発ソフトの利用。結論は、予想が確かめられなかったことと満足が、信念と態度の変化の理解に決定的だ、というもの。内容分析が量的な結果の一部を裏づけたとも。著者の一人は2001年と同じ人で、独立した二つの検証ではありません。

1980年の論文は、満足を期待と期待の不確認の関数として表しました。"Satisfaction, in turn, is believed to influence attitude change and purchase intention."(満足は態度の変化と購買意図に影響すると考えられている)。観察されたとは書かれていません。支持されたのは枠組みのほうで、二段階の実地調査の対象は、ある予防接種を受けた人と受けなかった人。買い物や接客の研究ではありません。

01「使い続ける意図が高い」を「使い続けた」として読む。2001年が検討したのは意図に影響する信念と情動、2000年が説明したのも知覚と意図の分散。どちらも、使い続けたかどうかの記録ではありません。

02「五つが二つに減った」として読む。1999年の論題そのものが「導入前の信念と導入後の信念の、横断的な比較」です。比べたのはこれから使う人の群と、すでに使っている人の群。原典自身の要約も、これから使う人のほうが"a richer set"(より豊かな組)の特徴に基づく、という形。同じ人を追った記録ではないので、五から二を引いた三が消えたという意味でもありません。

03「使いはじめ一般の話」として読む。六本の場面は、五本が情報システムの利用、一本がある予防接種の利用者と非利用者です。物を売る商い、場で提供する役務、一回きりの取引は入っていません。義務的に使う場面が二つあり、そこでは続けるかどうかを本人が決めていません。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
意図を行動として読む・五つが二つに減ったと読む・使いはじめ一般の話として読む。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

六本とも、到達できたのは公式の抄録までです。本文は購読の壁の向こう、一本は紹介の頁までしか開けませんでした。国も業種も回答者の人数も、学生の二つの縦断研究の標本の大きさも、印字が無いので書きません。走査しても、「無作為」「実験」「対照群」「割り付け」はいずれも0件。

この号は、使いはじめを設計する手順の話ではありません。「何日以内なら、どれだけ残る」型の数字は読めた範囲に無く、続けさせる方法も、健康について何かを勧めることも書きません。

使う前の態度は五つの知覚に基づき、使ったあとの態度は二つだけに基づく。
同じ組織の中で、別々の人の群を比べた結果です。

次の3手は、研究が命じた順番ではなく、ALIFEが提案する入口です。誰にも聞きません。誰にも渡しません。続けるかどうかも決めません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙かメモアプリを開く。**この三か月に使いはじめたもの**を一つだけ選ぶ。基準は「いちばん最近のもの」で十分。

  2. 02LIST

    使いはじめる前に見ていたものと、いま見ているものを、二列に書き出す。言葉は自分のもので構いません。

  3. 03MARK

    二つの並びを見比べ、**片方にしか出てこないものに印を付ける**。どちらが正しいかは決めません。

5分。採点はありません。**誰かに感想を聞きません。使っている会社にも伝えません。**誰にも見せず、提出もしません。続けるかやめるかを決める課題でも、解約や契約の判断に使えるものでもありません。息苦しくなったら中止を。

使いはじめがこれほど語りやすいのは、そこで特別なことが起きているからというより、そこが記録の残る場所だからかもしれません——というのが、この号の読み筋です。契約の日付は残り、最初に触った日も残る。そのあいだで何を見ていたかは、どこにも表示されません。

確かめられたのは三つ。当たった範囲では、この指標の効果を推定した査読論文に行き着かなかったこと。2001年が受け入れと継続を別の行動として扱い、自らを最も早い模型の一つ・初期の説明の一つと置いたこと。五つと二つが、同じ組織で別々の群を比べた結果だったこと。今日残せるのは判定ではありません。記録が1件、残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUSオンボーディング成功力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

観察研究・前向き研究
介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。

Next in customer

VIEW ALL
ISSUE 2483を広めた本人が、言い忘れたと書いた。ISSUE 250強く結びついたのは、本人の予想だった。
ALIFE · ISSUE 249

本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。