IN CUSTOMER · ISSUE 247

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「営業には五つの型があって、そのうちの一つが飛び抜けて売っている。」この号は話し方を並べません。数字の出どころを追って行き着けたのは、一般向けの本と、ある調査会社が会員向けに配っている報告書まで。査読誌ではありません。

行き着けなかったほうを先に。標本の抽出方法、質問文、分析の手順、群分けの基準、「どの型が何%」の算出方法——これらを検証できる形で示した文書には、学術文献を二通りの言い方で検索した範囲では行き着きませんでした。「存在しない」とは書きません。確認できた範囲では、までです。

だからこの号は、割合の数字も、人数も社数も書きません。傍証を一つだけ——二次的な記事のあいだで、その割合が食い違っています。査読を通っていないこと自体が悪いのではなく、その数字が査読された結果と同じ顔で流通することのほうが問題です——というのが、この号の読み筋です。

中身がどう作られたかは確認していません。方法論を批判した論者がいることも、実務系の記事の記述としては確認しました。けれど批判そのものには到達していないので、中身も名前も書きません。

だから、確かめられている側を見ます。ただし「四十年ぶんの蓄積」には断りが要ります。いちばん古く引くのは1982年の論文、新しいのは2011年の統合。四十年は今日までを丸めた言い方で、どれか一つの研究が四十年ぶんを測ったのではありません。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
辿れたのは、一般向けの本と、会員向けの報告書という二つの入れ物まで。確認できた範囲では、その先の手続きに届かなかった。 Visual: ALIFE

数えているのは営業担当の一人ひとりです。会社でも、取引でもありません。言葉を先に——メタ分析〔別々の研究をまとめ直すやり方〕、β〔ほかの要因を差し引いて比べる数字。マイナスは逆向き〕、相関〔一緒に動く度合い。−1から1〕、有意〔偶然では説明しにくい水準〕。

012011年の統合で上位に来たのは、型ではなく知識だった。2011年に Journal of the Academy of Marketing Science 39巻3号へ載ったメタ分析。1982年から2008年の実証をまとめ直し、有意な関係を示した下位分類は五つ——売ることに関わる知識(β=.28)、相手に合わせて変える度合い(.27)、役割の曖昧さ(−.25)、認知的な適性(.23)、仕事への没頭(.23)。ただし同じ抄録は、この五つが測定の方法・研究の文脈・営業の種類で調整されるとも。

022006年の統合で、幅は負から正までまたいでいた。2006年に Journal of Marketing Research 43巻4号へ載ったメタ分析。155の標本・3万1千人を超える営業担当をまとめました。155は標本の数で、研究の数ではありません。ランダム効果〔研究ごとに真の値が違いうるとして統合する〕での統合は、28の相関について −.16 から .35 の範囲の平均値を与え、19が有意。28は相関の数で、9本は有意になりませんでした。

031985年の統合は、強さが製品の種類で動くと書いた。1985年に Journal of Marketing Research 22巻2号へ載ったメタ分析。116本の論文から1,653件の報告された関連を集めました。116は論文の数、1,653は関連の数。平均的な関連の大きさ順は、①役割変数 ②技能 ③動機づけ ④個人的要因 ⑤適性 ⑥組織および環境要因。同じ抄録の別の並べ方は使いません。そして——関係の強さは、売っている製品の種類によって影響される。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
2011年の五つの下位分類・2006年の28の相関・1985年の116本の論文。まず測られたのは、この三つの統合。 Visual: ALIFE

有意でないことは、劣っていることではありません。28本のうち9本は有意になりませんでしたが、それは「関係が無かった」ではなく「まとめると向きが定まらなかった」という意味です。幅が負から正までまたぐのは、「効く」と一言で言えるほど揃っていない、ということです。

相手に合わせて変えるほうの尺度は、1990年に Journal of Marketing Research 27巻1号へ載った16項目。信頼性は.85で、測るのは五つの側面の自己報告——必要の認識、複数の進め方への自信、その場で変える自信、情報を集めること、実際に変えること。妥当性は"failure to disconfirm"(反証されなかった)と書かれています。「確かめられた」ではありません。

01「顧客志向を高めれば、営業の成果は上がる」。2006年の抄録が高いほうと結びついたと書くのは、自己評価の成果だけ。冒頭の「性別と販売経験を統制したうえで」は、引かれるとき落ちがちです。構造方程式モデル〔変数間の関係を一つの模型に当てはめる〕での結果で、実験ではありません。ただし同じ抄録は、両方とも職務満足は高めるとも書きます。無意味だった、ではありません。

02「五つの型を知れば、自分の売り方がわかる」。三つの抄録の範囲に、営業担当を群に分けたという記述はありません。測られているのは、度合いや知識といった、程度で表される変数です。「あなたはこの型だ」という判定は、ここにはありません。型の話のほうは、確認できた範囲では、その作り方を検証できる文書に行き着いていません。

03「成果を左右する要因は、もう決着している」。決着していない側を三つ。2006年の統合は28の相関の平均値が −.16 から .35 の範囲で、9本は有意にならず、幅は負から正までまたぎます。2011年の統合は五つが測定の方法・研究の文脈・営業の種類で調整されると書き、1985年の統合は強さが製品の種類で動くと書きます。「効かない」ではなく、「一つの答えに畳めない」という話です。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
顧客志向が結びついた先・抄録の範囲では型に分けた統合は見あたらないこと・28本のうち9本は有意でないこと。入れ替わるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

読めたのは六つとも公的な書誌データベースの抄録まで。本文まで読めたものは一つもありません。標本の国も業種も企業の数も書いていません。2011年の統合については、何本を何人ぶんまとめたのかが抄録に印字されていません。六つの分母は足し合いません——標本155、営業担当3万1千人超、相関28、論文116、関連1,653、項目16。

無作為な割り付けの実験は、六つの抄録の範囲にありません。割り付けに関わる語が出たのは1か所だけで、中身は推定方式の名前(ランダム効果)。「因果模型」も模型の名前です。1985年と1986年の抄録は営業の管理側への含意と提案で結ばれますが、この号はそれを運びません。数字は、人の評価や査定の材料にはなりません。

性別と販売経験を統制したうえで、構造方程式モデルが示すのは、
相手に合わせて変える行動は自己評価・上司評価・客観的な指標のいずれの成果も高めるが、
顧客志向は自己評価の成果しか高めない、ということである。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。直近の二人を思い出して書いたとき何が起きるかを確かめた研究は、この号では扱っていません。判定はしません。どの型かを決めることもしません。

TRY IT TODAY

  1. 01RECALL

    紙かメモアプリを開く。直近に話をした相手を**二人**思い出す。仕事の商談でなくてかまいません。名前は書かず、自分だけが分かる呼び方で。

  2. 02WRITE

    その二人に対して自分が**変えたこと**を、それぞれ一つだけ書く。話す速さ、聞く順、省いたところ。思い出せなければ「同じだった」と。それも悪いことではありません。

  3. 03LABEL

    その二行が「認識」「自信」「情報を集めた」「実際に変えた」のどれに近いかを、一言だけ添える。当てはまらなければ「どれでもない」で終わりです。

5分。採点も、型の判定もしません。誰にも見せず、提出もしません。**人の評価や査定に使えるものではありません。**負担に感じたら中止を。

顧客志向の尺度(1982年・Journal of Marketing Research 19巻3号)、その枠組み(1986年・Journal of Marketing 50巻4号)、16項目の尺度(1990年)。この三本には、同じ1名が著者として並びます。残る三つの統合に、この重なりはありません。三つの統合が同じ一次研究を何本共有しているかは、どの抄録にも書かれていません。

この号で確かめられたのは三つ。型の出どころが本と会員向けの報告書で止まったこと。三つの統合は、抄録の範囲では営業担当を型に分けていないこと。9本は有意にならず、強さは測り方と製品の種類で動くこと。型の話が長くもったのは、当たっていたからではなく、自分がどれかを判定できるからだ——というのが、この号の読み筋です。記録が二行、残るだけです。

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HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。