IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 224
● 12 SEC「組織の作り替えは、70%が失敗する。」よく見る一句です。この号が見るのは、この数字がどこから来たのか、です。
よく併記されるのは1995年に実務誌へ出た記事です(査読誌ではありません)。刷り出しを2版(1995年3-4月号のリプリントと2007年の再掲版)そろえて全文を走査しました。「70」は、2版とも0件。
そして、その数字は、査読誌に出た論文の要旨の1行目に、前提として置かれていました。
その記事は、変革がなぜ失敗するかを論じたもの。行末で割れた語を連結してから探さないと、割れたまま0件が返ります。その処理を入れて、1995年版も2007年版も0件。
では百分率はいくつあるのか。4つ。大きいものは2つ。失敗を数えたのはこちら——「私が見てきた企業の半分をゆうに超えるものが、この最初の段階でつまずく。」第一段階、つまり危機感を高める段階での失敗率で、全体の失敗率ではありません。約75%は経営陣の納得度の目安、残る2つは社内の年間のやりとりの量に対する .0001% と .0005% です。
失敗の多さについて書かれているのは、数字ではなく言葉でした。この10年で100社を超える企業を見てきた、という観察から出ているのは、割合ではありません。

では、70%はどこから来たのか。元とされる1993年の一般向けの著書(査読誌ではありません)には、経路12すべてで届きませんでした。
だから以下は二次経由です。査読誌の論文と公開されている引用集が、同じ一節を掲げます。「我々の非科学的な見積もりでは、作り替えに取り組んだ組織の、50から70%もが、意図した劇的な成果を達成しない。」ただし別の二次は頁が食い違い、語も増減します。書けるのは、二次のあいだで頁が割れている、という事実のほうです。
01流通しているのは、幅の上の端だけ。一節は50から70%という幅で、下の端の50は途中で落ちています。ただし原書で確かめたものではなく、二次2つが一致しているところまでです。
02動詞が「達成しない」から「失敗する」へ振れている。一節が書いているのは達成度です。思っていたほど変わらなかった組織と、途中で立ち行かなくなった組織は、同じ枠に入りません。測っている対象が、途中で入れ替わっています。
03「我々の非科学的な見積もりでは」が落ちている。著者たち自身が、科学的に出した数ではないと書き添えているわけです。落ちる順番は決まっています——幅の片端、動詞、但し書き、一般向けの著書だという性格、最後に数だけが残る。

2011年に査読誌へ出た論文の要旨は、およそ70%が失敗するという相当の証拠がある、と始まります。俗説の紹介ではなく、書き出しの前提です。標本は、2つの組織の事例研究でした。
2014年に査読誌へ出た調べものは、過去30年に査読誌へ載った組織変革の研究を4つのデータベースから集め、条件を満たした563件を評価しました。「一発勝負の研究が大半を占め、内的妥当性〔別の理由では説明しにくくできているか〕は低い。追試はまれである。」
内訳は、同じ4人が同じ号に書いた短い応答の文章にあります。563件のうちコホート研究の設計は17件(3%)、ケースコントロールは14件(2%)。よく引かれる統制群〔手を加えていないほうの集まり〕75件・うち無作為化11件は、引用の側で一致するところまで。確定した17件・14件と足し合わせていません。この2つの文章は、独立した2つの証拠でもありません。
01「あの1995年の記事が70%と言った」。確かめたのは、手に入れた2版の範囲です。「どこにも無い」とは書きません——同じ数字は2011年の要旨に実在します。記事の50%台は第一段階でつまずいた企業の割合。「70%ではなく50%」と言い換えると、間違いが1つ増えます。
02「査読誌に載っている以上、裏づけがある」。査読を通ったかどうかと、その一文の中身が確かめられたかどうかは別です。数え上げたほうの結論も、量ではなく質を指しています。書けるのは563件と、確定した17件・14件までです。
03「入れたら翌期に変わる」。2003年に査読誌へ出た論文は、米国の大企業527社の1987年から1994年を、見る幅を分けて測りました。計算機化の寄与は、1年の差分では投資のふつうの収益率と整合的、5年から7年の差分では最大5倍。変えたのは、見る幅だけ。要旨が理由に挙げるのは、通常の計算では抜け落ちるかもしれない補完的な投入です。

日本の公益財団法人が2025年12月に公表した資料(査読誌ではありません)に、算式があります——付加価値額や生産量などを、労働投入量(労働者数、または労働者数×労働時間)で割ったもの。分子は付加価値額。作ったものの中身でも、受け取った側の満足でもありません。比較は購買力平価〔物価の水準を考えた換算率〕を通します。
日本は時間当たり60.1ドルでOECD加盟38カ国中28位、一人当たり98,344ドルで29位。分母を変えると、同じ資料で順位が動きます。「主要先進7カ国で最下位」は一人当たりの節にあり、別の節——時間当たりの実質を2019年と比べた副節——には「水準でみると主要先進7カ国で最も低いものの、上昇幅でみれば米国に次ぐ位置にある」。上昇幅は2019年を基準にした回復率で、日本102.7%・米国109.7%、38カ国中では22位。
ある調査部門が2017年に出した報告(査読誌ではありません)の要約は、丸ごと自動化できる職業は5%未満、約60%の職業が構成活動の30%以上を自動化されうる、と並べます。60%の主語は業務ではなく職業。2010年の作業論文版は、米国の製造業の同じ産業分類で、上位10%と下位10%の事業所の全要素生産性〔同じ投入でどれだけ多く産み出しているか〕の対数差が平均0.651、比で約1.92倍(著者自身の2004年の研究の再掲・売上高ベースの指標について)。
全文まで読めたのは11点のうち5点。読めていないものについては書きません。査読誌のものは1つで、しかも研究論文ではなく短い応答の文章。測られたのは記録が残る側で、続いた組織のデータだけが残る、という逆向きも排除できません。
ほとんどは中間で、はっきり下寄りである——1995年の記事は、失敗の多さをこう書きます。
すべての変革の取り組みのおよそ70%が失敗するという、相当の証拠がある——2011年の査読誌の要旨は、こう始まります。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。出どころを辿ると何が起きるかを確かめた研究は、ありません。判定はしません。良い悪いも書きません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
今日、当たり前のように目にした数字を1つ選ぶ。日付と、その数字と、何を数えていると書かれていたかを書く。
- 02TRACE
1段めは自分がどこで見たか、2段めはその先、3段めはさらにその先。辿れなくなったら止め、**段数だけ書く**。
- 03LABEL
いちばん奥の資料の種類を一語で書く——査読誌・公的統計・公開資料・記事・辿れず、のどれかでよい。
1993年の一般書から2025年の日本の資料まで、32年で細かくなったのは、条件のほうでした。条件は、外へ出るときにたいてい落ちます。
確かめられたのは四つ。1995年の記事の2版に70が現れないこと。1993年の著書には届かず、二次が掲げる一節は幅と但し書きを持ち、頁が割れていること。2011年の要旨の1行目に、その数字が前提として置かれていたこと。分母を変えると、同じ資料で順位が28位と29位に動くこと。今日残せるのは、選んだ数字と、辿れた段数と、いちばん奥の種類。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUSプロセス革新力(BPR・デジタル化)を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 無作為化比較試験
- くじ引きの要領で「介入を受ける群」と「受けない群」に分けて比べる実験。「効いたかどうか」を言うための標準的な設計です。
