IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 220

(仮ビジュアル)暗い室内の黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「行動規範と研修を入れれば、不正は減る。」この言い方の後ろで数えられていたのは、制度がどこまで入っているか、でした。1999年に Journal of Business Ethics 18巻3号へ出た論文が、ある経済誌の大企業番付の上位1,000社で、倫理の制度の採用の度合いを測っています。

並べるのは論文8本と、ある雑誌の投稿規程。8本のうち全文まで読めたものは0本、7本は要旨まで、1本は書誌までです。読めていないものについては書きません。

その要旨が並べたのは、採用の高さと、実行のばらつき、そして「低費用の側面」でした。そろって入っていたのは、安いほうです。

題名に1990年代半ばと入るその論文が測ったのは、制度の要素の一式でした——方針の文書、責任の明文化、独立した部署、電話による通報・相談、上層部と各部門の関与、研修と啓発、調査の機能、制度の評価。いまコンプライアンスと呼ばれるものの、ほぼ一式です。

結果の一文はこうです——採用の度合いが高いこと、しかし、それらの方針がどの程度実行されているかには、大きなばらつきがあること。

続けてもう1文——事実上、大多数の企業は、倫理の管理のうち低費用の、おそらくは象徴的な側面に取り組んできた。「おそらくは象徴的な」は原典の言い方。測ったのは企業の側で、そこで働く一人ひとりの行いではありません。要旨に割合の数字はありません。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
1999年の要旨は「採用の度合いが高い」と書き、そのすぐ後ろで「実行の度合いには大きなばらつきがある」と書いている。 Visual: ALIFE

1,000は対象にした名簿の側の数であって、答えた社数ではありません。回答率らしき数字は同じ3人の別の1本の本文にあると他の論文が伝えますが、その本文に到達していないので書きません。入っているかどうかには日付や人数が付き、実行の度合いには付かない——というのが、この号の読み筋です。

01要旨に並ぶのは、採用の高さと実行のばらつきの二つ。要旨が名乗るのは「実証研究」までで、調査票による調査にあたる語も、割合の数字もありません。国名も同じで、走査すると「米国」にあたる語は0件。だから国名を付けていません。水準は企業です。

02同じ3人が同じ年に3本。独立した三つの証拠としては数えない。別の学術誌の42巻5号が「切り離された形」と「統合された形」を扱います。外圧は切り離せる過程を促し、上層部の関与は両方を促しうる——分析はこの立場をおおむね支持した、と要旨は書く。同じ調査に基づくかは本文未到達で断定できず、42巻1号との取り違えも起きやすい。

03オーストラリアの大企業999社。要素だけでは足りない。2009年の研究の結論はこうです——要素の少なくともいくつかは実務の良い管理へ転換されうる。しかし経営の関与、監督と計画、資源も同じくらい重要である。999は回答が分析された大企業の数。「されうる」は可能性の言い方で、大きさは要旨にありません。実験ではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
採用の度合いは高い・同じ3人の3本は独立ではない・999社では要素だけでは足りない。訊かれたのは、どれも組織の側。 Visual: ALIFE

1999年に California Management Review 41巻2号へ出たのは、米国の大企業6社の従業員への調査。要旨は、価値観にもとづく文化的な取り組みが最もよく働くとし——著者の結論の言い方です——効果を最も損なうのは、上層部を責めから守るためだけの制度だと従業員が信じている状態と、権威への服従と自己利益に焦点を当てる文化だとします。実験ではなく、水準は従業員個人。著者4人のうち2人は先の3本と重なります。

媒体にも層があります。発行元の保存版を年代順に開くと、1999年に最も近い2000年12月の版は実務家に向けた論文を歓迎するとだけ書き、査読への言及がありません。2001年4月・6月・8月の版も同じで、「査読」の語は4版すべて0件。すべての投稿は査読に付されるの初出は2001年11月16日の版です。ただし書かれていないことは行われていなかった証明ではなく、現在の同誌の説明はダブルブラインドの査読に触れています。

01「切り離されていても、入れないよりまし」——三つめの場合がある。2010年の論文は、大手の金融サービス企業での広範な欺瞞的販売の事例から、遵守の制度を中核の事業から切り離す危険を示します。切り離しが「正当性の見せかけ」を作り、不正の制度化を可能にし、外部からの正当性の喪失を招いた、と。ただし要旨自身が理論構築の分析と名乗り、データは1社の事例研究。規模も年数も要旨にありません。

02「研修をやったのだから、減っているはず」——評価は一度も無かった。2018年の論文は職場のハラスメントの研修を扱い、題名が自ら学際的なレビューと名乗ります(要旨に「メタ分析」の語はなし)。冒頭はこう——包括的で学際的な試みは、これまで一度も行われてこなかった。よく引かれる結論の一文は到達した要旨にも本文にも無く、結論として使わず、「原典に無い」とも書きません。

03「危ないのは、入れていないところだ」——指されたのは実施と執行。2003年の論考は、交渉によるガバナンスの模型は法規範の発展に洞察を与えるが、提唱者たちは、再交渉すなわち実施と執行の段階での機会主義的な行動の危険を、事業組織と法務遵守の専門職の側について過小に見積もっている、と論じます。指している場所は、前の節までの実証と同じ。学生が編集にあたる慣行の法学紀要の、法の理論です。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
切り離しには三つめの場合がある・よく引かれる結論の一文は要旨に無かった・危険が指されたのは実施と執行の段階。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは、論文8本のうち0本。7本は要旨まで、残る1本は書誌まで、同じ3人の3本目です。全文で読めたのは、投稿規程の保存版5つのほう。要旨まで読めた7本の走査では、「対照群」「無作為」「実験」が7本すべてで0件。射程は要旨までなので、「8本のどれも実験ではない」とは書きません。

国名が要旨にあったのは8本のうち2本——オーストラリアの大企業999社と、米国の大企業6社の従業員だけ。日本の組織を対象にした研究は1本もありません。水準も企業・1社の事例・従業員個人とばらばらで、答えられた組織だけが記録に入ります。

採用の度合いは高いが、どの程度実行されているかには、大きなばらつきがある。
大多数が取り組んできたのは、低費用の、おそらくは象徴的な側面である。

この3手も、研究が命じた順番ではありません。決まりを1つ選んで出どころを辿ったとき何が起きるかを確かめた研究は、この号にはありません。辿った先は評価しません。良し悪しも書きません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    今日の日付の下に、持ち場で「決まりだから」という理由でやっていることを1つ、1行で。この書式で出す、この順番で回す——その程度で十分です。

  2. 02TRACE

    その決まりが書かれている場所を辿る。手順書にあれば1段、それが別の規程を参照していれば2段、さらに外の基準へ続けば3段。記憶しか根拠がなければ0段。人には尋ねません。

  3. 03COUNT

    さかのぼれた段数を、1つの数として書く。**0段でも完了です。**辿った先は評価せず、守るべきかどうかも書きません。日付・決まりの1行・辿った場所・段数の4点が残れば終わりです。

10分。採点はありません。誰かの仕事ぶりを評価する課題ではなく、誰にも見せず、提出もしません。**社内の規程の見直しや、通報・相談の代わりには使えません。ハラスメントや、違法かもしれない行為は、この課題の対象ではありません。**苦しくなったら中止して、信頼できる相談先や専門家へ。

年代順に置けば、1999年に三本、2003年・2009年・2010年・2018年に一本ずつ。19年で積み上がったのは、制度の一覧の長さではありませんでした。

この号で確かめられたのは四つ。採用の高さと実行のばらつきが、同じ要旨に並ぶこと。1,000は名簿の側の数で、同じ3人の3本は独立した三つの証拠にならないこと。999社は「転換されうる」の形、2010年は単一の事例研究、2003年は法の理論であること。1999年当時、その投稿規程に査読への言及が無かったこと。残るのは判定ではなく、記録が1件です。

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HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。