IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 221

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートに白いワイドパンツの女性が、ひとりで下りている写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

改善の本にも研修の資料にも、たいてい「成功要因」の一覧が載っています。あれは何を根拠に作られているのか。2016年の査読論文(単著)がそこを見せます——調査は、2つの多国籍企業に属する83工場の実務家432人に、管理する側が何をすべきかについての意見を訊いた。訊いたのは、意見です。

流通する一句も片づけます——「この文化を持つ工場の生産性は2倍以上になる」。出どころは1990年の一般向けの著書で、査読誌ではなく、本文に到達していないので書名も数値も書きません。中核の1995年の査読論文も、要旨に現れる数は1989・90・62の3つだけで、「2倍」「倍」「百分率」にあたる語は0件でした。

研究はあります。ただし、測っているものが一つずつ違う。並べるのは査読誌の論文6本と、査読誌ではない1993年の記事1本です。

その1995年の要旨はこう始まります——1989年から90年にかけての自動車組立工場62か所の調査から得た国際データを使って、著者は二つの仮説を検証する。人事の実務は個々にではなく一貫した「束」として効き、その束が柔軟生産の「組織の論理」で製造の方針と統合されたとき、生産性と品質へもっとも寄与する——従属変数は二つです。

結果は、チームを土台にした作業・「高いコミットメント」型の人事・低い在庫と手直しの柔軟生産の工場が、量産型を一貫して上回った。二つ組み・三つ組みの相互作用のほうが、さらに良い予測変数です。

取れるのはここまで。水準は工場で、人ひとりの手際ではありません。題名は「世界の自動車産業における」、要旨は「国際データ」と書き、個別の国名の印字はありません。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
1995年の要旨に現れる数は、1989・90・62の3つだけ。倍率の数値は書かれていない。 Visual: ALIFE

では「続く条件」はどこまで分かっているのか。並べた3本は別々の標本を別々の水準で測ったもので、統合はされていません。

012009年に5社を調べた論文が出したのは、基盤という切り口と命題だった。基盤の意思決定の領域を特定して枠組みを提示し、5社を検討して得たのは根拠にもとづく命題。命題は、これから確かめるべき言明です。

022007年に53巻3号へ出た論文は、手順に駆動される仕組みと心理に駆動される仕組みを分けて測った。場は品質改善の事業。手順の仕組みは学ぶ行動に、心理の仕組みは知識の創造に直接効き、二つは「補い合うが、独立している」。どちらが優れているとも書かれず、何社・何件かは印字がありません。

03同じ年の53巻6号へ出た別の論文は、新生児集中治療室23か所で学ぶ活動を二つに分けた。著者も重ならない別の仕事です。何が最良かを特定する活動と、現場で動くようにする活動に分かれ、四つの仮説のうち三つが支持——一つは支持されていません。結びついたのは動かす側だけで、心理的安全はその活動を介して効きます。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
5社から立てた命題・品質改善の事業で分けた二つの仕組み・新生児集中治療室23か所で比べた学び方。どれも別のものを測っている。 Visual: ALIFE

冒頭の一覧に戻ります。2016年の単著は、回答を一般的な成功要因にまとめ、企業・工場の規模・実装の段階・国の文化の四つの条件をまたいで検定しました。結果は予想の逆です——概ね、分析は共通の成功要因の一覧を支持する。ただし、いくつかの小さな例外を伴って。

ここが大事なところ。この研究は、成功要因と成果の因果を測っていません。測っているのは、432人が何を効きそうだと思っているか。一覧の少なくとも一部は、成果の記録ではなく意見の集計です。

もう1本、2001年の査読論文は、高い関与がどう組織の能力として築かれるかを事例研究で探り、参照模型を提示しました。模型の提示であって、効果の測定ではありません。導入部にある「失敗率は高い」も測られた値ではないので、持ち出しません。

01「一覧に載っているのだから、成果を出した組織を調べたのだろう」——測られたのは、意見だった。訊かれたのは「管理する側が何をすべきか」についての意見。答えたのは83工場の実務家432人。成果を測った変数は、この道筋の上にありません。「わずかな程度で影響する」という留保も原典のまま。一覧を見たら、何を成功と呼び、誰が答えたのかを先に探す。

02「他所でうまくいった手順を持ってくれば、自分の現場でも回る」——結びついたのは、動かす側だけ。事例集を集めることと、それが自分の持ち場で回ることのあいだに、測られた隔たりがあります。ただし標本は23か所、設計は観察で、無作為な割り付けの記述は7つのどれにもありません。「調べるのは無駄だ」とは書けません。結びついていなかった、までです。

03「続かないのは、人の意識が低いから」——どの研究も、やる気の量を測っていない。測られたのは、束の組み合わせ、基盤の領域、学ぶ活動の型、答えた人の意見、模型。やる気の量を測った変数は、7つのどこにもありません。続いたものが手順になり、事例として外へ出て、一覧に載る。調査票が届くのも、いまも回っている場所です。続いた改善からしか、改善の話は書かれない(原典が検証した順番ではありません)。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
この一覧の出どころは意見・調べる側は結びついていなかった・やる気の量はどこでも測られていない。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは、7つのうち1つ。残る6つは要旨まで。その1つは1993年の実務誌の記事です。約8,000語の本文に並ぶのは、一つの組立工場の前後の数字——参加は1986年の26%から1991年の92%へ、1991年には10,000件を超える提案の80%超が実施、欠勤は20%から25%だったものが3%から4%へ。

著者自身が地の文に「しかし、私が信じるところでは、この新しい信条が間違っているとしたら?」と書いています。読み物として優れていることと、効果が確かめられていることは別です。

査読誌6本の要旨に国名の印字はなく、あるのは査読誌ではない1本だけです。日本の印字もその1本だけ。だから「どの国に寄っている」とも「上場企業に寄っている」とも書きません。続いている場所のデータだけが残る逆向きも、排除できません。

調査は、2つの多国籍企業に属する83工場の実務家432人に、管理する側が何をすべきかについての意見を訊いた。
概ね、分析は共通の成功要因の一覧を支持する。ただし、いくつかの小さな例外を伴って。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。手元の作業の手数を数えたとき何が起きるかを測った研究は、この号にはありません。良し悪しは判定しません。

TRY IT TODAY

  1. 01DEFINE

    今日くり返す作業を1つ選ぶ。紙かメモに日付と作業の名前、続けて**数え方の定義**を1行で書く。途中で数え方を変えないこと。

  2. 02COUNT

    変える前の手数を数えて書く。次に**どこか1か所だけを小さく変える**。同じ数え方で、後の手数も書く。速くしようとせず、原因も書きません。

  3. 03GAP

    2つの数の差を1つの数として書く。差がゼロでもかまいません。割合は出さず、続けるかどうかも決めません。**5点が残れば終わり**です。

10分。採点はなく、人の仕事ぶりを評価する課題でもありません。誰にも見せず、提出もしません。**業務の見直しや、改善提案の根拠には使えません。**仕事のことが頭から離れず眠れない、気持ちの沈みが続く——そのときは、この課題より先に、信頼できる相談先や専門家へ。

年代順では、1993年の記事が並べた工場の前後の数字、1995年の62か所の束、2001年の参照模型、2007年の二つの仕組みと同じ年の病棟23か所の学ぶ活動、2009年の5社の命題、2016年の432人の意見調査。23年で細かくなったのは、測り方のほうでした。

確かめられたのは、2016年が測ったのは意見であって因果ではないこと、1995年の要旨に倍率の数値が無いこと、2009年の命題も2001年の模型も効果の測定ではないこと、全文まで読めたのは7つのうち1つ——査読誌ではないほうだったことです。今日残せるのは、選んだ作業、数え方、前の手数、変えた1か所、後の手数。記録が1件、残るだけです。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。