IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 214
● 12 SEC「速く決める組織は、伸びる。」査読を通った裏づけは、あります。2003年に Strategic Management Journal 24巻11号へ出た4年間の研究が、構造方程式モデリング〔変数どうしの関係をまとめて推定するやり方〕で、速い戦略的意思決定はその後の成長と利益を予測すると確認した、と。この号は、その向きを値切りません。
読むのは、同じ抄録の一つ前の文です——「事業環境、組織構造、戦略的意思決定の速さ、そして企業の業績(成長と収益性)の測度は、1996年から2000年にかけて318人の最高経営責任者から集められた。」4つとも、同じ318人からです。318は人の数、1996年から2000年は測度を集めた期間です。
並べるのは、査読誌の実証6本と、査読を通っていない資料の集成1点。本文まで読めたのは、7つのうち1点。読めていないものについては書きません。
いちばん古いのは1989年、Academy of Management Journal 32巻3号。変化の速い小型計算機の産業の8社を見た帰納的な事例研究〔少数の事例から命題を組み立てるやり方〕。8は社の数です。
——「速い意思決定者は、遅い意思決定者よりも多くの情報を使う。少なく、ではなく。」より多くの代替案を作り、二段構えの助言の過程を使う、とも。「速い」は「見ないで決める」ではありませんでした。この型にもとづく速い決定は優れた業績につながる、とも同じ抄録にあります。
1994年、同じ雑誌の37巻4号。151社で、最高経営責任者の認知能力・直観の使用・危険への許容・行動への傾きが速い決定と正に関連し、決定の歩みは集権的な組織では速く、公式化された組織では遅いように見えた、と。検討の網羅性は二面を持ち、認知の側は正、組織の側は負にも。調査データで、無作為な割り付けはありません。

その速さは、何と結びつけて測られたのか。次の4本は、測っている先が違います。業績、判断の質、存続か廃業か。
012003年が結びつけた先は、企業の業績(成長と収益性)。4つの測度は、同じ318人から集められている。速さが環境や構造と業績の関係を媒介する、という形が数字と合った、までです。「予測する」は統計上の予測で、速く決めたから伸びた、ではありません。4年は、研究そのものの長さ。
022021年が結びつけた先は、判断の質。英国117社で、潤沢さが速さと質の関係を調整すると結論している。European Management Review 18巻2号。複数回答者の調査と二次的なデータベースで、117は社の数、国は英国。潤沢さが中心の生成メカニズムで、動的な文脈における速さの、理論化されてきた正の効果を著しく書き換える、と。調整する〔三つ目の条件で、二つの関係の向きや強さが変わること〕。
031991年は、速さが業績と結びついたのは変化の速い環境においてのみだったと書く。2005年は、速い側が廃業しやすかったと報告した。2005年は Strategic Management Journal 26巻4号。標本はインターネット関連の新興企業98社とその創業者・経営者。そして——「速く意思決定する企業のほうが廃業しやすかったことを示す探索的な分析は、この領域における通説が文脈に限定されていることを示しているのかもしれない。」著者自身が、探索的な分析と明記しています。だから「速く決めると潰れる」とは書けません。

速さの話には、4語の頭文字でできた枠組みが付いてきます。この記事は、その呼び名を印字しません。確かめたのは、一次情報が何か、です。
査読論文では、ありませんでした。軍系の出版部が刊行した、編者によるブリーフィング資料の集成です。編者は序文で、教義や定説の集成ではなく、聴衆との未完の会話だったと書きます——「ここに再録した1987年8月のブリーフィングは、私が見た19の異なる版のうちの1つにすぎない。」
巻末の文献欄にも別に、未刊行だが広く配布されたブリーフィング、1976年から1996年までの集成、と印字があります。元の形は193枚のスライド、よく引かれる4枚は1995年6月28日のもの。導入の有無を比べた査読論文にも、「意思決定の速い組織は収益成長率が1.6倍」という2019年のコンサル会社の数字の出どころにも、たどり着けませんでした。7つの出典のどれも、この倍率を報告していません。それでも「存在しない」とは書きません。
01「速く決めれば伸びる、と証明されている」——速さも業績も、同じ318人の枠内で集めた調査だった。環境も構造も速さも業績も、同じ318人から集められています。同じところから集まっているなら、それは二つの測定ではなく、一つの回収です——というのが、この号の読み筋です。
02「見解が割れている」——割れてはいない。測っている先が違う。業績、判断の質、存続か廃業か。2003年の従属変数は業績、2021年は判断の質、2005年は存続か廃業か。同じ問いへの相反する答えではなく、別々の問いへの答えです。1991年(Academy of Management Journal 34巻2号)は三つ目の軸を足します——「決定の速さが高い業績と結びついたのは、変化の速い環境においてのみだった。」
03「あの4語の枠組みは検証されている」——一次情報は査読を通っていない資料で、編者は「未完の会話」と呼ぶ。19の版という記述は、序文と巻末の二か所に、別々に印字されています。間違っているという話ではなく、査読を通っていない資料が、査読を通った研究と横並びに語られている——確認したのは、そこです。

本文まで読めた1点は、査読を通っていない資料の集成。全文1点と抄録6本で、足すと7です。読めた範囲に、無作為な割り付けも対照群の記述もありません。ただし抄録に無いことは、その研究に無かったことの証明ではないので、「7つのどれも実験ではない」とは書きません。
対象は、318人の最高経営責任者、英国の117社、インターネット関連の新興企業98社、小型計算機の産業の8社、151社。小さい商い、家業、非営利、行政は入っていません。答える人がいなくなった組織は、最初から標本にいません。買う・売るの判断材料では、ありません。
事業環境も、組織構造も、決定の速さも、企業の業績も、同じ318人から集められました。
抄録が書いているのは、そこまで。すべてが自己申告だったとは、書かれていません。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは組織の決定の速さで、あなたの今日の遅れではありません。速い遅いは判定しません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
手元のメモに今日の日付を書き、今日「決まるまでに時間がかかった」ことを**ひとつだけ**、5語ほどで書く。組織にいなければ、自分の作業で止まっていたことに。
- 02SORT
それが「情報が足りなくて決まらなかった」のか「決める人が決まっていなかった」のかを、**どちらか一方だけ**選ぶ。どちらとも言えるなら、長く待っていたほうを。
- 03NOTE
残すのは、日付と、遅れた事柄ひとつと、どちらかの分類の**3点だけ**。速い遅いも、改善すべきかも書きません。5分です。
三十年で、否定されたのではありません。移ったのです。1989年の8社では速い側のほうが情報も代替案も多く、1994年の151社では組織の形で速さが変わり、2003年の318人では速さが成長と利益を予測し、2021年の英国117社では測る先が判断の質へ移りました。
2003年と1994年は、同じ2人の著者による連作で、順序が入れ替わっています。独立した2つの証拠ではありません。ただし標本は別(318人と151社)。皮肉なのは、いちばん厳密に測ってきたのが、速さそのものではなく、速さについての回答だったこと——というのが、この号の読み筋です。今日残せるのは、記録が1件だけです。
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