IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 213
● 12 SEC「待ち時間を減らせば、仕事は速くなる。」この言い方には、査読誌の上に集計があります。2003年に International Journal of Operations & Production Management 23巻6号へ出た論文が、公表された適用の結果を文献から集めたものです。
先に、流通する二つの数字。「リードタイムが平均50%短縮」の出どころに挙がる1990年の一般書は査読を通っておらず、読めたのは書誌まで。「納期の遵守率が60%から95%へ」は、当たった範囲では出どころにたどり着けませんでした。「存在しない」とも書きません。
並べるのは査読誌6本、査読を通っていない会議の発表版1本、一般書1冊。全文まで読めたのは1本、査読誌ではないほうでした。
2003年の論文の要旨は、80件を超える成功した適用事例のメタ分析の結果をここに示す、と書きます。直後に——「広範な探索にもかかわらず、この研究は失敗の報告を見つけなかった」。0件と書かれているのは失敗ではなく、報告のほうです。
副題は「成功した適用事例の分析と議論」。同じ要旨は、報告の大半は製造業の組織からだが他の種類の組織へ一般化できるかもしれない、とも書きます。偏りも、推量にとどまることも、著者の言葉です。
自らをメタ分析と呼びますが、統合された単一の効果量はなく、実質は事例の集計。ランダム効果か固定効果かの別も当てはまりません。読めたのは抄録まで、80件の内訳は未読です。

「80件を超える」の「件」は、何を数えた件なのか。別の版を開くと、分母が四つに割れます。
01掲載版は「80件超」、発表版は「77の企業」。同じ版に「78適用」と「100件超」も。1998年、ニュージーランドの学会の第33回年次大会(8月30日から9月1日)の発表論文集79番。査読誌ではなく、全文を読めた唯一の1本です。77は企業、78は適用、100超は事例の数、80超は掲載版の丸め。著者の順序も版で逆で、独立した二つの集計ではなく同じ研究の別の版です。
02発表版には6つの改善率。観測は変数ごとに12から32で、77社でも78適用でもない。リードタイム平均短縮69%(32観測・すべてが短縮)/サイクルタイム66%(14)/納期の成績の平均改善60%(12・100%超の改善もあり)/在庫50%(28)/収益・スループット68%(18・600%の外れ値を除く)/複合的な財務変数82%(25)。足しても、どの数にも揃いません。著者自身、78適用は多くの変数に十分だが「例外は収益性の変化で、標本が小さいのは商業上の機微による」と断り、報告の作法も不統一だと書きます。
03「60%から95%へ」の出どころは、当たった範囲では見つからなかった。発表版の「納期の成績: 平均改善60%」は平均の改善率で、遵守率の変化ではありません。全文に「95%」は一度も出てきません(「95」の7か所はすべて「1995」という年)。起点の候補であって、同定ではありません。同じ60%が別のものも指します——結論の節では、在庫は平均50%削減、生産の時間(リードタイム・サイクルタイム・納期の成績をまとめたもの)は60%超、財務の指標は80%超の改善。片方は納期だけの平均、もう片方は三つの合成。

一つめ——「リーン」が何を指すかも、査読の側で定まっていませんでした。2007年の Journal of Operations Management 25巻4号の論文は、意味の混乱を扱い、48項目・10成分へ整理し直します。同じ2人の2003年の論文(同誌21巻2号・別論文)は、22の実践が4つの束として働き、業種と文脈の効果を除いたあと操業成績のばらつきの約23%を説明した、と報告。約23%は改善率ではなく、ばらつきのうち説明できた割合です。水準は工場、標本はある製造業向け雑誌の事業所調査(社数も国名も要旨になし)。
二つめ——見る時点で、答えが変わりうる。2016年の Production and Operations Management 25巻6号の論文は、ある1社の世界規模の導入を社内の量的データから理論化し、操業成績はまず緩やかに、次に急速に伸び、最後に平らになるS字を報告しました。裏づけは5大陸45工場への訪問と210件の聞き取り。1社の内部データからの理論の組み立てで、多数の企業を比べた検定ではありません。「効かない」と「大きく効いた」は同じ導入の別の時点かもしれない——というのが、この号の読み筋です。
01「失敗の報告が0件だから、方法は確かだ」——0だったのは、報告の数のほう。うまくいかなかった適用が論文にならないとき、その0は、方法の性能ではなく公表という関門の性能を映します——というのが、この号の読み筋です(原典が検証しているわけではありません)。発表版によれば、300本を超える論文と書籍のうち否定的な言及はごく少数で、実際の適用に関するものは一つもなかった。そして事例の大多数は、部分的な適用しか報告していません。
02「入れればリードタイムは半分になる」——査読誌6本の抄録に、その語は無い。抄録まで読めた査読誌6本に、リードタイムに当たる語は1本もありません。数字が並ぶのは査読を通っていない発表版のほうで、「標本の四分の三を超える事例が、50%を超えるリードタイムの短縮を経験した」とあります。流通する「平均50%」にいちばん近い数字が、査読の外側にありました。ただし及んだのは抄録の範囲です。
03「反転は実証済み」「式が示すとおり必ず短くなる」——前者は11の命題、後者は定理。2009年の Journal of Operations Management 27巻1号の論文は、効果は要因(新しさ・複雑さ・不安定さ・緩衝)に調整され、反転する点にまで至りうると書きます。作業を取り除くことは費用の低下を保証しない、とも。ただしある軍用機の生産の仕組みを扱った単一の事例研究で、成果物は11の命題、仮説検定ではありません。待ち行列の式についても、2011年の Operations Research 59巻3号の50周年の総説で提唱者本人が「基本的には、これは待ち行列理論の定理である」と書いています。定理は証明されるもので、効果が検証されるものではありません。

全文まで読めたのは、8点のうち1点。1998年の発表版だけ、それが査読誌ではないほうでした。6本は抄録まで、1990年の一般書は書誌まで。読めていないものについては書きません。読めた7本の範囲に、無作為な割り付けも対照群もありません。残る一般書には及ばないので、「どれも実験ではない」とは書きません。
報告された適用の大多数は北米で、欧州もいくつか、英国とオセアニアからはごくわずか。測られた単位も企業・適用・事例・工場で、人ひとりの手際ではありません。続いている組織のデータだけが残る、という逆向きも排除できません。
広範な探索にもかかわらず、この研究は失敗の報告を見つけなかった。
題名の副題は、成功した適用事例の分析と議論。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは公表された適用の件数と、組織の側の操業変数の平均で、あなたの30分ではありません。
TRY IT TODAY
- 01SPLIT
紙かメモアプリに今日の日付を書き、その下に**30分ごとの区切りを12行**つくる。枠だけです。一人で回している場合も同じ。
- 02MARK
各行に、その30分のあいだ主に手が動いていたか、主に何かを待っていたかを、どちらか一方だけ書く。迷ったら長いほう。中身も名前も書きません。
- 03LOOK
1日の終わりに見返し、「待っていた」行がどこに集まっているかを眺める。判定は出しません。
三十年で、言葉は細かくなりました。数字は、揃うのではなく分母ごとに割れました。
確かめられたのは四つ。要旨の0件は、失敗ではなく報告の数だったこと。件数が77・78・100超・80超に割れ、著者順も版で逆だったこと。改善率の観測数は変数ごとに12から32で、どちらの分母にも揃わないこと。「60%から95%へ」の出どころには、当たった範囲でたどり着けなかったこと。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUSフロー効率・リードタイム管理を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量
- 差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

