IN BUSINESS PROCESS · ISSUE 211

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「仕事の流れを一本の連なりとして描き、どこで価値が付いているかを見つける。」この考え方は1985年の一般書で提示されました。その本は査読を通っていません。この号が見るのは枠組みの正しさではなく、それを指標にした組織で何が測られたか、のほうです。

「業務プロセスの指標を持つ企業の財務は、持たない企業の1.5倍」——この倍率を報告した研究を、この号は1本も持っていません。ただし、一般の検索の側からは独立に確かめられていないので「存在しない」とも書きません。書けるのは、読めた7つのどれも、この倍率を報告していない、というところまで。

1998年の論考は、価値の作られ方には連なり・工房・網の三つの配置があると論じました。抄録の要点——1967年の技術の類型を土台に、この三つが、幅広い産業と企業にわたって企業水準の価値創造の論理を理解するために必要な、三つの異なる配置の模型である。

長く連なる技術は投入物を製品へ変え、集約的な技術は個々の顧客の問題を解き、仲介の技術は顧客どうしの交換を可能にする。「連なり」は全体ではなく、そのうちの一つの型です。一件ずつ解く仕事も、あいだに立ってつなぐ仕事も、一本では描けません。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
連なり・工房・網。1998年の論考は、企業水準の三つの配置のうち、連なりは一つの型だと論じている。 Visual: ALIFE

では、指標として組み立てると業績はどうなるのか。次の5本は、国も業種も水準も違います。

01金融サービス業では、上がったのは満足度のほうだった。2003年の研究は、満足度と経済的業績を分けて測りました——手続きは測定システムへの満足度の高さと関連するが、経済的業績とはほとんど関連を示さない。似た戦略の企業より指標を広く使う企業は満足度も株式市場での収益率も高い一方、予測より測定が多い・少ないと業績に悪く働くという整合仮説には、支持がほとんど得られなかった。設計は質問票調査で、社数も国も抄録にありません。

02豪州の製造業66社と、同じ銀行の支店の準実験では、関連が出た。2000年の研究は豪州の製造業66社の質問票調査。利用が多いほど業績が良いという関連は、規模にも製品の寿命の段階にも市場の地位にも有意に依存しない。新製品の比率が高い企業ほど新製品の指標を使う傾向が強く、市場の地位は利用の多さと有意に関連するとは見出されなかった。2004年のもう一本は同じ銀行組織の支店どうしを比べた準実験〔無作為な割り付けのない比較〕。導入した支店のほうが主要な財務の指標で優れていました。66は社の数、こちらは支店。

03オランダでは使い方で向きが変わり、2009年は76の事業単位で正。2004年のオランダの研究が測ったのは「どう使うか」——戦略を補完する使い方は業績に正の影響を与え、戦略と結びつかない使い方はそれを下げうる。企業間取引を行う100社の枠、2000年春の郵送調査、80社が同意し41社が回答、回答率41%は100を分母にした値(80なら51%)。模型は総合業績のばらつきの38%を説明(調整済みR²=0.38、F=4.3、自由度7、p<0.01)、基準の模型と比べR²は19%増(ΔR²=0.19、ΔF=2.8、p<0.05)〔説明できる割合が19ポイント分増えた、の意〕。水準は企業。2009年の研究は76の事業単位で正の影響を報告し、源泉は(1)戦略の業務用語への翻訳(2)戦略を立てることの継続的な過程化(3)諸過程・部門の連携の三つ。76は事業単位の数、社の数ではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
金融サービス業では経済的業績とほとんど関連せず、豪州の製造業66社と同一銀行の準実験では関連が報告され、オランダでは使い方で向きが変わった。 Visual: ALIFE

手が入るのは、工程と工程のあいだです。2016年のメタ分析は、医療現場で引き渡しの手順を標準化した36本の研究を統合しました。当初4,556本が特定され、4,520本が除かれて36本——引き算は合います。設計はすべて現場での前後比較。統合されたのは事前34,527件と事後30,072件のデータ点(研究の本数ではありません)。

結果は四つの成果すべてで正の方向——引き渡される情報 g = .71(95%信頼区間 .63〜.79)、患者側 .53(.41〜.65)、医療者側 .51(.41〜.60)、組織の成果 .29(.23〜.35)。g〔二つの時点の差を、ばらつきで割った値。一般的な目安では0.2が小、0.5が中、0.8が大〕。いちばん小さいのが、組織の成果でした。同じ要旨に、有意な出版バイアスと不均一性があり、手順は引き渡しの時間と抜け落ちの誤りの割合を増やしうるとも書かれています。12項目以上の手順は11項目以下より渡された情報の割合が有意に高い、との所見は「引き渡される情報」だけの話。

01「流れを描けば、速くなる」——上がったのは、まず測定の仕組みへの満足度だった。図が描けたことと、流れが速くなったことは、別々に測らないと区別がつきません。しかも図が描けたほうは、描いた本人がその場で確認できてしまう。それは業績の代わりにはならない——というのが、この号の読み筋です。

02「効くか効かないかは、もう決着している」——決着していない。三つは互いへの応答ではなく、3年から4年の間をおいて別々に出たものです。それでも答えは逆を向く。組織をまたいで測るほど関連は消え、同じ組織のなかで条件を揃えるほど出る。どちらが原因かを割り付けで確かめた研究は、読んだ範囲に1本もありません。

03「引き渡しを標準化すれば、副作用なく良くなる」——副作用は同じ要旨にある。正の方向であることも、最小が組織の成果であることも、出版バイアスと不均一性も、時間と抜け落ちの誤りが増えうることも、同じ要旨にあります。標本は医療現場の36本で、他業種への一般化を著者は保証していません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
上がったのは満足度のほう・決着していない・副作用は同じ要旨に書いてある。取り違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

本文まで読めたのは、8つのうち1本——2004年のオランダの研究だけです。6本は抄録まで、残る1冊の一般書は書誌までです。読めた7本に「対照群」も「無作為」も0件。残る1冊には射程が及ばないので、「8本のどれも実験ではない」とは書きません。

測られたのは金融サービス業、豪州の66社、一つの銀行組織の支店、オランダの41社、76の事業単位、医療現場の36研究。どれも記録が残り、調査に答える余裕があった組織で、小さい商い・家業・非営利・行政は入っていません。そこで働く人ひとりの手際でもなければ、買う・売るの判断材料でもありません。

四つの成果すべてが正の方向で、いちばん小さかったのは組織の成果でした。
同じ要旨に、時間が伸びうることと、抜け落ちの誤りが増えうることも書かれています。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。受け渡しの回数を数えたとき何が起きるかを測った研究は、ありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    いま関わっている仕事をひとつだけ選ぶ。一人で回している場合は、いま使っているものが手元に届くまでに置き換えて。

  2. 02COUNT

    **始まったところから手元に来るまでに、何回受け渡されているか**を数える。書くのは回数だけ。相手の名前は書きません。

  3. 03NOTE

    仕事1件と、回数と、分からなくなった場合の「ここから先は分からない」の1行。**多い少ないも、減らすべきかも書きません。**

3分。採点も、増減の判断もしません。誰にも見せず、提出もしません。**資金の出し入れや、株式の売り買いの判断にも使えません。**仕事のことで眠れない、気持ちの沈みが続く——そのときは、この課題より先に、信頼できる相談先や専門家へ。

年代順に見れば、1985年の一般書、1998年の整理、2000年から2009年の実証4本、2016年のメタ分析。三十年で枠組みは細かくなり、証拠は揃うのではなく分かれました。

確かめられたのは三つ。連なりは三つの配置のうちの一つだったこと。測定の手続きと業績の関係は、国・業種・水準・使い方で割れたこと。医療現場の36研究では四つとも正で、最小が組織の成果、副作用も同じ要旨にあったこと。今日残せるのは判定ではありません。仕事が1件と、受け渡しの回数と、分からなくなった位置の印。記録が1件、残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUSバリューチェーン設計力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量 d・g
2つのグループの平均の差を、ばらつきの大きさで割った値。一般的な目安では 0.2=小、0.5=中、0.8=大。g は d を小規模研究向けに補正したものです。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。
出版バイアス
「効果が出た」研究ほど論文として世に出やすい偏り。これがあると、統合した平均値が実際より大きく見えます。

Next in business process

VIEW ALL
ISSUE 210測られたのは、あいまいな側だった。ISSUE 212あの標語は、否定の途中にあった。
ALIFE · ISSUE 211

本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。