IN WAYS OF THINKING · ISSUE 187
● 12 SEC10分間、身のまわりの物の変わった使い道を、思いつくだけ挙げてください。133人の若い成人がこの課題に取り組んだ2012年の研究では、回答に時刻が記録され、3人の評定者が創造性の点を付けました。
出たのは2本の曲線。創造性は時間とともに鋭く上がって終わりぎわで少し平らになり、件数は最初の1分がいちばん高くその後急に落ちた。多く出るのは先で、良いと採点されるのは後です。
扱うのは発散思考——ひとつの問いに、できるだけ多くの答えを並べる道具です。ただし良い案の出し方ではなく、その操作が何と結びついていたと記録されているか、のほう。「量をこなせば質が上がる」も、この号は渡しません。
6本のうち3本が中心に据えるのは、同じ1つのテスト。ただし2本の抄録が食い違います——2011年の分析は「1966年に開発された」と書き、2010年の追跡は「1950年代後半に実施された」と書く。どちらも抄録の逐語で、本文には未到達。この号はどちらとも決めません。
よく「件数を測っているだけだ」と要約されますが、2010年の追跡はこのテストの指標を4つ挙げます——流暢性・独創性・柔軟性・精緻性。件数(流暢性)は4つのうちの1つです。
6本のどの1本にも、無作為な割り付けの記載がありません。メタ分析、標準化データの再分析、50年の追跡、横断の相関研究、10分課題、数理モデル——原因を切り分ける設計ではない。だから書くのは、結びついていた・報告された、までです。

では、それぞれどこまで測られているのか。測ったのは、この3本です。
01得点が創造的達成を当てた大きさは、.216 だった。2008年のメタ分析が、発散思考テストの得点と創造的達成の関係を27研究・47,197人、知能テストとの関係を17研究・5,544人で集計。出た値は .216 と .167 で、前者が有意に高い。ただし原典自身が、この2つを「わずかだが統計的に有意」と形容します。Fisher の Z 変換をかけた相関係数です。
0250年後まで追うと、関係する先が入れ替わった。50年前のテストの得点と、50年後に集められた達成。得点は個人的な達成とはほどほどに相関し、公的な達成とは相関しなかった。抄録は直後に「しかし」で折り返します。知能と創造性の交互作用のほうは公的な達成と有意に関係し、個人的な達成とは関係しなかった。公的な達成では男性が女性より有意に高く、個人的な達成に性差はなし。相関の値も追跡人数も、抄録にありません。
03同じ課題の中では、書いた数と評定が 0.73 で結びついていた。2015年の研究が測ったのは、米国の大学の246人(127名が男性・119名が女性)・16歳から31歳(平均21.8歳・SD 3.5)。1つの図形につき45秒で書けるだけ書き、6つの図形ぶん繰り返す。属性を知らない3人が1〜5で採点。書いた数と点の相関は 0.73(p < 0.001)。246人全員の値で、補正なし。同じ表では書いた数の側に有意の印が付かず(年齢 .09・知能指数 .01・開放性 .15・質問紙 .17)、付いたのは点の側だけ(.07・.05・.18・.26)。

数字そのものは動きません。動くのは、引用されていく途中のほうです。混ざりやすいのは3か所。
01「.216」と「0.73」を並べて、1つの話にする。2つを並べると「テストは当たらない。でも量と質は強く結びつく」という1文ができます。その1文は、2つの別々の測定を1つの主語に束ねています。.216 は「テストの得点」と「創造的達成」の関係で、27研究の集計、当たったのは11〜15年先。0.73 は「45秒×6図形で書いた説明の数」と「その束に付いた1〜5の点」の関係で、246人を1回測った値。著者自身が、「われわれの発散思考の測度は、創造性の文献で一般に使われているものではない」と書きます。
02「割合は一定」を、「量をこなせば質が上がる」と読む。1997年のモデルの論文が置く原理が、等確率則。要るのは2つの個人差と2つの情報処理のパラメータ、そして原理はただ1つだけ。全文は未到達で、読めたのは2015年の研究が引用符つきで引く一文です。「一定期間内に生み出された作品の総数と、当たり(創造的な成功)の数との関係は、正で、直線的で、確率的で、安定している」。出るのは「当たりの数は総数に比例する」まで。出ないのは「たくさん出せば当たりの割合が上がる」です。その研究自身も、この関係は普遍的ではないと逆接を置く。そして等確率則を提案した本人が、それを検証したその論文の査読者2人のうち1人。
03平均点が下がったことを、「創造性が失われつつある」と読む。2011年の分析は、このテストの標準化データを並べます。1966年に開発され、1974・1984・1990・1998・2008年の5回、標準化がやり直された。6つの標準化標本の合計は272,599人——幼稚園から高校3年生と成人で、1回あたりの人数ではありません。6年生から先は横ばいか低下、1990年以降は知能指数が上がっているのに創造的思考の得点が有意に低下、いちばん大きい低下は幼稚園児から小学3年生。下位指標の動きは抄録に無いので書きません。平均点は動きました。それが何を当てるかは、27研究・47,197人で .216 と測られたまま動いていません。著者は、その .216 のメタ分析の著者と同じ人です。

答えたのは、10分の課題の133人、米国の大学の246人(127名が男性・119名が女性、16歳から31歳)、27研究の47,197人と17研究の5,544人、6回の標準化の272,599人、そして50年前にテストを受けた人たち(人数は抄録にありません)。残る1本はモデルの論文です。全文まで読めたのは6点のうち1点。内訳があるのは246人の行だけ。ほかは「書いていない」ではなく「確かめていない」です。
この号に、因果の記録は1件もありません。流動性知能が高いほど時間による差は小さくなったという記述も、調整変数の話で、人の分類には使いません。246人の表と本文も食い違います——表では書いた数の側に有意の印が無いのに、本文は有意な関係を書く。どちらの課題も大学と実験室のもので、締切のある本物の判断に当てはまるとは限りません。訓練の効果を測った研究は1本も無いので、伸びるとも伸びないとも書きません。
良い案は、あとから出た。
件数は、最初の1分に来ていた。
だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは、133人と246人が書いた回答の数と、それに付いた点だけ。あなたが10分書いたとき何が起きるかを確かめた研究は、扱っていません。採点も判定もしません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
紙かメモアプリを開く。自分の手元で完結する問いを1つだけ書く。「今月の週末の使い道」など、その程度で。医療や投資の判断は選ばないでください。
- 02WRITE
**10分だけ時間を計る。**そのあいだ、思いつく選択肢を良し悪しを判断せずに書けるだけ書く。筋が悪いと思っても消さずに残す。手が止まっても、10分が終わるまで閉じません。
- 03COUNT
10分が過ぎたら、書けた数を整数で1つ記録する。分かるようなら、最初の1分で何件書けていたかも書き添える。記録するのは数だけです。
発散思考は、たくさん出せば良くなるという気分の名前ではありません。確かめられたのは4つ。133人の10分課題で、件数は最初の1分がいちばん高く、評定はあとから上がったこと。27研究・47,197人で .216、17研究・5,544人で .167 と集計され、原典自身が「わずかだが統計的に有意」と呼んだこと。50年追跡で、得点は個人的な達成とはほどほど、公的な達成とは無関係、しかし交互作用は逆だったこと。246人の課題では、書いた数と評定の相関が 0.73 だったこと。良い案の出し方は、どこにも書かれていません。——今日残せるのは、問いが1つ、10分、そして数字が1つか2つ。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS発散思考を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
- p値
- 差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

