IN ORGANIZATIONAL FOUNDATION · ISSUE 167

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートに白いワイドパンツの女性が、ひとりで下りてくる写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「配分でもめるのは、配る量が足りないからだ」。これは、測られています。2001年のメタ分析〔複数の研究の値を集めて、ひとつの推定に統合する手法〕が、25年ぶんの組織公正の研究から183本を集めました。

報告されているのは補正前の相関〔2つの数字がどれだけ一緒に動くかの値。0なら関連なし。誤差を補正していない、観測されたままの推定〕。組織へのコミットメントとの相関は、決め方の公正 .48、配られた量の公正 .42。差は .06。「量は関係ない」という話ではありません。

ところが、同じ表に順番が入れ替わる行があります。受け取った結果への満足では、配られた量の .52 が、決め方の .40 を上回ります。この号が書くのは配り方の手順ではなく、配られた側で何がどこまで測られてきたかまで。組織の変え方も、残るか離れるかの判断も渡しません。

資源配分の公正性(Allocation Fairness)は、この分野では組織公正と呼ばれ、4つに分けて測られてきました——結果そのもの(分配)、それがどう決まったか(手続き)、決めた相手の扱い(対人)、どれだけ説明されたか(情報)。

ただし、4つは互いに強く相関しています。2013年の論文は4次元の平均の相関を .49 と報告し、目安では「強い」。独立した4つの物差しではなく、片方だけを取り出す読み方には、その分の限界があります。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
答えたのは、配った側ではなく、配られた側。4つの物差しは互いに強く相関している。 Visual: ALIFE

答えたのは、実験室の研究と現場の研究、両方の参加者です。まず測られたのは、この3本。

01同じ表の中で、順番が入れ替わっている。運ぶ値はすべて補正前の相関です。決定を下した担当者への評価は .56 / .53(差は .03)。組織や制度そのものへの評価では .35 と .30 に下がります。同じ表の補正後の値では、コミットメントは .57 と .51。補正前と補正後は混ぜられません。さらに .48 は測り方を合算した広義の値で、決め方を直接たずねた内訳では .32 と、.42 を下回ります(押し上げているのは、両者をまとめた群の .55)。95%信頼区間も重なります。

0210年後の再集計では、仕事の成果との関連は小さい。2013年の再集計は規模が違います——413本の論文、493の独立標本。課題の成果との相関は、配られた量 .19、決め方 .19、扱われ方 .13、説明 .13。組織市民行動〔職務の外で自発的に行われる行動〕とは、扱われ方 .32、説明 .30、決め方 .23、量 .17。論文自身の目安(.10 が弱く、.30 が中くらい、.50 が強い)では、課題の成果はどれも「弱い」の範囲。そして2001年と2013年は独立した2つの検証ではありません。同じ筆頭著者による10年後の更新で、決め方の公正の値は2001年より有意に小さいと自ら書きます。

03結果が好ましくないときのほうが、反応の差が大きい。1996年のレビューは、45の独立標本から別の形を報告しました。結果の好ましさと、決め方の公正の交互作用〔結びつきの強さや向きが、別の条件で変わること〕です。結果が好ましいときには、決め方の公正による反応の差は小さく、好ましくないときに、その差が大きくなる(逆向きにも同じ形)。関連の統合であって、「説明を足せば受け止めが変わる」という因果の証明ではありません。

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台に、白い発酵乳の瓶・浅い切り漬けのグラス・琥珀色の発酵茶の細長い容器が三つ並んだ静物写真
183研究の補正前の相関・493標本の再集計・45標本の交互作用。まず測られたのは、この3本。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、そこから引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。

01引かれた原典に、その倍率が書かれていない。組織の公正の話には、必ずついて回る数字があります——「不公正の影響は、公正の2倍以上ある」。引かれる1979年のプロスペクト理論の論文の全文を確かめました。「2倍」という倍率も、組織の公正への言及も、一度も出てきません。あるのは金銭を伴う賭けの選好についての損失回避で、組織の公正感の話ではありません。この倍率を組織の文脈で報告した査読された一次情報には、たどった範囲で到達できません。存在しないとは断定せず、出どころも特定していません。

02説明の効果を、正しさの証明に置き換える。説明についても集計があります。2003年の54標本のメタ分析は、説明を与えること自体が公正の知覚と反応に強い効果を持ち、弁解の形のときや望まない結果のあとに、より有益だったと報告します。この号が確認できたのは、抄録の範囲まで。場面も文言も順序も、抄録に無いので書きません。そして第3著者は、2001年と2013年の集計の筆頭著者と同じ人物。主要な3本のうち3本に同じ名前が出ます。別々の研究室が独立に確かめた3つ、ではありません。

03割合の指しているものが、入れ替わる。三つめは時間です。1999年のフィールド研究は、米国の大企業の製品開発の現場に9か月入り、ソフトウェアの集団17人(うちエンジニア12人)を追いました。割り込みを制限する「静かな時間」が3局面で置かれ、よく引かれるのが 59% → 41% → 65% です。これは時間の比率ではありません。「自分の生産性は平均以上だった」と答えた人の割合です。(実際の時間の比率は、単独作業がおよそ60%、対話が30%超。)「部門の歴史で2回目の期日どおりの製品投入」と評価したのは事業部の副社長で、6か月後の再訪では持続的な効果は最小限で、管理職が進捗を確認する頻度だけが2年後も下がったままでした。一般化のための標本ではありません。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
引かれた原典・説明の形・割合の中身。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

並べても、どれも、あなたの職場で来月何が配られるかを教えてはくれません。平均も統合値も、計算された組織の集まりの話だからです。集計された研究の国も組織規模も、原典に記述がありません。

原典自身も、多くの変数が自己申告で、同じ回答者から取った関連は水増しされている可能性がある、と断ります。配分がうまくいかず解散した組織は、そもそも調査に答えません——というのが、この号の読み筋です。観察と横断調査の統合であって、決め方を説明すれば評価が上がるという因果の証明ではありません。日本で採られた数字と足し合わせることもできません。

.48 と .42 は、どちらも正の値だった。
入れ替わったのは、何を測ったかのほうだった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。自分の1か月を数えたとき何が起きるかを確かめた研究は、この号では扱っていません。ここからはALIFEが提案する実践の入口。数字を4つ、置くだけです。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙かメモアプリを開く。直近1か月で、時間を使った取り組みを**上位3つだけ**書き出す。他人の時間は数えない。

  2. 02COUNT

    その3つに何%ずつだったかを、記憶とカレンダーから5%刻みで置く。合計は100%にならなくてよい。**100から合計を引いた残りの%も、1つ書く。**

  3. 03MARK

    4つ並んだら、その配分をどう決めたか思い出せるかを、はいかいいえで1つだけ記録して閉じる。判定も評価も書かない。

10分。採点はありません。**いまの職場を評価する課題でも、残るか離れるかを判定する課題でもありません。**上司や同僚に見せる課題でも、制度を提案する課題でもありません。**つらさが続く・強まる場合は、この課題より先に、産業医や社内外の相談窓口、必要に応じて医療の専門家へ。**

資源配分の公正性は、配る側の技術の名前ではありません。確かめられたのは3つ。183研究の集計で、組織へのコミットメントも担当者への評価も決め方の公正のほうが上だった一方、結果への満足では順番が入れ替わっていたこと。10年後の再集計——同じ筆頭著者による更新であって独立した検証ではありません——で、課題の成果との関連がどれも「弱い」の範囲だったこと。結果が好ましくないときのほうが、反応の差が大きいこと。

そして「不公正は公正の2倍以上」が、引かれた原典の全文には一度も出てこなかったこと。どう配るべきかは、どこにも書かれていません。書かれているのは、何を測るかで順番が入れ替わっていたことと、差がはっきり出ていたのが、悪い知らせを受け取った側だったことまで。今日残せるのは判定ではありません。3つの%と残りの%、思い出せたかが1つ、残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS資源配分の公正性を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。