IN FORTUNE MAKING · ISSUE 145

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「運のいい人には、共通点がある」。この言い方は、うまくいった人を後から集めて、共通点を数える手つきでできています。共通点は、たいてい見つかります。同じことをやってうまくいかなかった人が、その集まりに入っていないからです。

この抜け落ちには、経営学の側で名前がついています。2003年の論文が論じたのは、観察できる組織は大量の脱落を経た生き残りで、本や雑誌が成功例に偏るぶん、標本から失敗が抜け落ちるという一点でした。

この号が扱うのは、運を良くする方法ではありません。渡せる手順がないからです。扱うのは、測られた範囲の数字のほうです。占いを使っている人を笑う号ではありません。

この号で行動量(Action Volume)と呼ぶのは、意志の強さではなく、自分から起こした試行の回数です。同じ人の中で比べた数字ではありません。

占いの当たり外れは判定しません。よく引かれるのは1985年の二重盲検の実験で、出生図から人物を言い当てられるかを試す設計を2種類組んだ研究です。この号が確認できたのは設計までで、結果の細部には到達していません。だから、その結果は扱いません。書けるのは、大きな市場のかたわらにこういう検証がある、というところまで。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
数字を作ったのは、米国成人9,593人と、課題に取り組んだ246人と、物理学者2,887人の論文記録。同じ測定ではない。 Visual: ALIFE

では、それぞれどこまで測られているのか。まず測られたのは、この3本です。

01市場は大きく、頼っていると答えた人は6%だった。2024年10月21〜27日に実施され2025年に公表された、米国の登録型パネルの成人9,593人への調査。占星術・ホロスコープ・タロット・占い師のいずれかを年1回以上使う人が30%、主に娯楽としてが20%、大きな決断でかなり頼るが1%・少し頼るが5%。4つとも、答えた米国成人に占める割合です。当たり外れの判定ではなく、自己申告の横断調査。日本の数字と比べることはできません。

02課題の中では、数の多い人ほど評点も高かった。2015年の研究は、米国の1大学で募った16〜31歳の246人に発想課題を課し、答えを3人の判定者が独立に評価しました。答えの総数が多い人ほど、6つの回答全体につけた創造性の評点(1〜5)も高い。相関は0.73。(相関は、二つの量が揃って動く度合いを−1から1で表した値。0.73は強いほう。)課題の中の話で、人生の成功でも収入でもありません。1997年の論文が整理した等確率則(提唱はそれ以前)は、総数が多い人ほど高評価のものの数も多いが、割合は生産量が増えてもほとんど変わらない、とします。

03いちばんの1本は、並びの何本目にでも来た。2016年の研究は、20年以上の経歴を持つ物理学者2,887人(約23万人から、10本以上の論文などの条件で絞った集合)を追いました。いちばん引用された論文は、並びの中では何本目にでも同じ確率で現れる(random impact rule)。ただし暦でみると別で、大半は経歴の最初の20年までに出ています——その時期に書く本数が多いからです。測っているのは引用数という一つの指標です。当てられないのが位置なら、選べるのは本数のほう——というのが、この号の読み筋です。

(仮ビジュアル)暗い石の台に並ぶ朝食。器に盛られた洋梨とさくらんぼとオーツ麦、半分に切った洋梨、水の入ったグラス、たたまれた麻の布
9,593人の分布・246人の相関0.73・物理学者2,887人の位置。まず測られたのは、この3本。 Visual: ALIFE

数字は動きません。動くのは、そこから結論が引かれていく途中です。手がかりは3つ。

01共通点が見つかった、を、やれば上がる、に読み替えている。冒頭の2003年の論文に戻ります。母集団では成果と無関係な、あるいは危険な行動——資源を一点に集中させること——が、生き残りだけの標本では、成果と正の関係に見えます。ばらつきの大きい行動ほど、当たった側だけが残るからです(理論的な議論で、実験ではありません)——というのが、この号の読み筋。出てくるのは「上に外れた人はそれをやっていた」までで、「やれば確率が上がる」ではありません。

02よく引かれる「約2倍」の一次情報に、たどり着けなかった。幸運な人は、不運な人の約2倍の新しい出来事を経験する——運の話でいちばん流通している数字で、出どころは2003年の一般向けの本。査読論文を、データベースと学術検索で探しました。見つかったのは書籍と、その要約記事まで。存在しないとは断定しませんが、たどり着けませんでした。新聞広告で「自分は幸運だ」「自分は不運だ」と名乗り出た人を比べたものと説明されており、自己申告で群を分けた時点で、差が出来事の量なのか、幸運と数える癖なのかは分けられません。追試も、探した範囲では見つかりませんでした。

03運が悪いのは行動が足りないから、へ回収している。2014年の研究は、米国の4,000万人を超える親子の行政記録で、下位5分の1の所得の家庭の子が上位5分の1へ達する割合を地域ごとに測りました。サンノゼ圏で12.9%、シャーロット圏で4.4%(市ではなく通勤圏)。育った地域で3倍近く違う。ただしこれは割合の差の観察で、都市が移動のしやすさを作り出した証明ではありません。この差は、試行の回数の設計では消えません。病気、災害、生まれ育った場所、景気。「努力が足りないから運が悪い」とは、この号のどこにも書きません。

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートに白いワイドパンツの女性が、ひとりで下りてくる写真
生き残りだけの標本・たどり着けなかった一次情報・行動不足への回収。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

どれも、あなたの今週の見通しではありません。答えたのは米国と西欧の人たちが大半で、対象は科学者・大学生・専門職に偏り、測り方も自己申告と横断調査、論文の引用が中心。日本の読者にそのまま当てはまる保証はありません。

「回数を増やせば当たる」という約束も、ここからは出てきません。等確率則が言うのは、増えるのは当たりの数で、割合ではないということです。占いや風水や引き寄せも、良いとも悪いとも判定しません。運を良くする手順は、この号にも、この先の号にもありません。

増えたのは、当たりの数。
割合のほうは、ほとんど変わらなかった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。先週の試行を数えたときに何が起きるかを確かめた研究は、この号では扱っていません。ここからはALIFEが提案する実践の入口。増やす課題ではなく、数えるだけです。

TRY IT TODAY

  1. 01DEFINE

    何を1件と数えるかを、先に決める。試行とは、**断られる可能性のあった働きかけ**——応募した、提案した、誘った、値段を聞いた。成果は問わない。断られた件も1件です。

  2. 02COUNT

    カレンダーと送信済みのメッセージを、**直近7日分だけ**見返して数える。10分で切り上げる。思い出せないものは数えない。少ないと思っても、そこで増やしにいかない。

  3. 03RECORD

    記録するのは、**件数の数字1つだけ**。0以上の整数を1つ書いて閉じる。ゼロならゼロと書く。分かっている状態と、分からない状態は違います。

10分。採点はありません。**増やす課題でも、目標の件数を決める課題でもなく、占いや診断サービスを使う必要もありません。**件数から自分の運や能力を判定することはできません。誰にも見せず、苦しくなったら中止を。気力が出ない・眠れない・気分の落ち込みが続くとき、つらさが続く・強まる場合は、この課題より先に、医療・支援の専門家へ相談してください。

運を能力と呼ぶのは便利な習慣です。自分の分は努力不足で、他人の分は才能で説明できて、どちらにも記録が要りません。確かめられたのは4つ。米国成人9,593人の調査に出た、占いの使われ方の分布。246人の課題での相関0.73。物理学者2,887人の、並びの何本目にでも来るいちばんの1本。4,000万人超の行政記録の12.9%と4.4%。

運が良くなる方法は、どこにも書かれていません。共通点を数えていた部屋に、消えた人がいなかった——そこまでです。今日残せるのは判定ではありません。直近7日の件数が、数字ひとつ。ゼロでも、記録が1件、残るだけです。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。