IN FINANCIAL FORTUNE · ISSUE 130

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「収入源を増やしなさい」には、たいてい7という数字が付いてきます。億万長者は平均して7つの収入源を持つ——米国の内国歳入庁の調べによると。そこで、添えられているほうの調べを探しました。所得統計(Statistics of Income)の高所得の個人申告書についての統計表は、1993年分から2022年分まで並んでいます。

そこにあるのは、所得20万ドル以上の申告書の件数、税額の有無別の内訳、所得の概念を変えた集計、所得の種類ごとの計上した申告書の割合と金額。「1人あたりの所得の種類が平均していくつか」という項目は、この号が確認した範囲では見当たりませんでした。扱うのは増やし方ではなく、名指しされた出どころがどこまでたどれるかです。副収入を作れとも、作るなとも言いません。

収入源多様化力(Income Diversification)は、副収入の作り方の名前ではなく、入ってくるお金がいくつの理由で止まりうるかという点検です。測られてきたのは二系統——月ごとの収入がどこで動いたかを口座から追った分析と、何割の人がどれだけの時間関わっているかを訊いた調査。同じ人たちを同じ訊き方で測った数字ではありません。増やすことと、ならすことも別です。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
答えたのは、米国の銀行口座と、米国の成人への質問。同じ測定ではない。 Visual: ALIFE

数字を作ったのは、米国の銀行口座の入出金と、米国の成人への調査です。まず測られたのは、この3本。

01揺れの86%は、同じ仕事の中で起きていた。2016年に公表された分析が、米国の口座データ(100万人規模)を2012年10月から2015年9月まで追いました。月ごとの収入の変動のうち、86%は同じ仕事の中での支払いの揺れから来ていて、転職によるものは14%。変動の大きさではなく、どこで発生したかの内訳です。別の集計では、労働型プラットフォームから収入を得た人の、その収入は稼働した月の総収入の33%。確認できたのは要旨に相当する範囲までです。

02多くは、前からの職を続けていた。2018年に学術誌へ出た研究が、米国の配車プラットフォームの運転パートナーを、調査データと事業者の管理データで分析。抄録にあるのは三点——大半は参加前からフルタイムまたはパートタイムの職を持ち、多くは参加後もその職を続けていた。時間あたりの収入は労働時間数であまり変わらない。変動をならしたい動機が参加理由に挙がる。確認できたのは抄録の範囲まで。「参加すると収入が増える」の観察でも、その逆でもありません。

0320%が関わり、その21%が本業と答えた。米連邦準備制度理事会の調査(米国・2024年)では、成人の20%が、直近1か月にギグ的な活動をしていました。その先が二層です——本業だと答えたのは21%、96%は週35時間未満、70%は週5時間未満。21%・96%・70%の分母〔割合を出すときに「全体」として置いた集団〕は、成人全体ではなく「ギグ的な活動をした人」。2023年の同じ調査では、28%が月ごとに少なくとも時々収入が変動すると答え、10%が直近12か月に支払いに苦労したと答えました。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
86%の内訳・続いた前職・週5時間未満が7割。まず測られたのは、この3本。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、そこから引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。

01名指しされた統計に、その項目がない。冒頭の7に戻ります。種類ごとに何件が計上したかと、いくらかは集計されていますが、「1人あたり平均いくつ」という出来上がった値の項目は、確認した範囲では公表されていません。その数字がどこで生まれどう広まったかを、この号は追跡していません。人物・書籍・媒体を名指しもしません。仮に「平均7つ」が正しくても、種類の数と資産の多さが一緒に現れやすい関連であって、順番の話ではない——というのが、この号の読み筋です。

0233%と1.0%と4.2%は、分母も期間も違う。33%は、労働型プラットフォームから収入を得た人の、稼働した月の総収入に占める割合。1.0%は2015年9月時点でプラットフォーム(労働型と資本型の合算)から収入を得ていた成人の割合、4.2%は同時点までの3年通算で一度でも参加した成人の割合です。「副収入は総収入の3分の1」という要約は「稼働した月」を落としています。説明されているのは急な成長で、1.0%は3年で10倍、4.2%は47倍の末端の値。ある月と通算の開きは出入りのある形とも両立する——この号の読み筋です。

0320%と5.2%を、足し合わせない。米国労働統計局の労働力調査の年平均〔1年を通した平均としてまとめた値〕では、2024年に複数の仕事を持っていた人は843万1千人。就業者の5.2%です。一方、同じ2024年の別の調査では成人の20%が直近1か月にギグ的な活動。訊く相手も、期間の取り方も、「仕事」として数える範囲も違い、足し合わせることも、どちらが正しいと決めることもできません。引いた数字はいずれも米国のもの。制度も訊き方も違う日本へ、そのまま置き換えることもできません。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
名指しされた統計・分母と期間・別々の調査。読み違うのは、この三か所。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは6点のうち4点。残る2点は要旨と抄録の範囲までで、そこに無いことは書きません。86%も20%も5.2%も、集団の平均や割合であって、個人の見通しではありません。口座データの分析は、銀行口座に取引が集まる人に偏ります。調査は自己申告〔本人の回答として数えられたもの〕で、本人が「ギグ的な活動」と認識したものだけが数に入ります。数字は2012年から2024年までの、米国という市場の記録です。

ここまでの数字から、「副業をせよ」も「リスク分散のために源を増やせ」も出てきません。測られているのは、どれくらいの人が関わっているかと、その収入がどういう性質だったかまで。「本数は、名義の数ではなく、同時に止まりうる理由の数で数える」という数え方も、研究の結論ではなくALIFEが提案する見方です。お金の判断は、必要なら専門家(ファイナンシャル・プランナーや金融機関の相談窓口)と。返済や生活費で困っているときは、自治体・法テラス・金融庁の相談窓口が先です。

月ごとの揺れの86%は、同じ仕事の中で起きていた。
転職によるものは、14%だった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。源を書き出して3つの欄を埋めたとき何が起きるかを確かめた研究は、ありません。源を増やす課題ではありません。いま入っているものを、数え直すだけです。

TRY IT TODAY

  1. 01LIST

    紙かメモアプリに、いま入金がある源を縦に書き出す。給与、請負、家族からの移転、年金や給付——名前は何でもかまわない。**金額は書かなくていい。**

  2. 02MARK

    各行の右に欄を3つ作り、**はい/いいえ**だけで埋める。①同じ勤め先から来ているか ②同じ業界・同じ取引先の景気で動くか ③同じ体力・同じ時間帯を使うか。人を評価する言葉は書かない。

  3. 03COUNT

    3つとも**いいえ**になる組み合わせが1つでもあるかを確認し、あるかないかだけを最後の行に書く。今日の日付を添えて閉じる。

10分。採点はありません。**副業を始める課題でも、収入源を増やす課題でもありません。**新しい仕事を始めたり、口座を開いたり、金融商品を売買・解約したり、借入をしたりする必要はありません。「いまの源は少なすぎる」と結論づけることもできません——引いた数字は、何本が適切かを測っていないからです。いま入金が1つもない人は、直近1年で最後に入金があった源を1つ書けば成立します。返済や生活費で困っているときは、この課題より先に公的な相談窓口へ。**苦しくなったら、そこで中止してください。**

確かめられたのは四つ。名指しされた所得統計に1993年分から2022年分の表が並ぶ一方、「1人あたり平均いくつ」の項目は見当たらないこと。月ごとの変動の86%が同じ仕事の中で起き、転職は14%だったこと。抄録の運転者は大半が参加前からの職を続けていたこと。2024年に成人の20%が関わり、そのうち21%が本業と答え、複数の仕事を持つ人は843万1千人=就業者の5.2%だったこと。「平均7つ」の正誤は、ここには書かれていません。——今日残せるのは判定ではありません。源の名前が縦に並び、3つとも いいえ があるかないかが1行。記録が1件、残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS収入源多様化力を、もっと深く学ぶ。→

Next in financial fortune

VIEW ALL
ISSUE 129平均580万ドル。4分の3近くは、ゼロ。ISSUE 131世界の富の64%は、人の中にあった。
ALIFE · ISSUE 130

本コンテンツは学習目的であり、投資助言や個別の金融商品の推奨ではありません。