IN ROMANCE · ISSUE 126

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗い上着姿で街の明かりのほうを見ている女性。暗いガラスにその横顔が薄く映り込んでいる● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

マンネリ対策の助言は、たいてい同じところへ着地します。一緒に新しいことをしましょう。出どころのひとつは2000年の米国の研究。7分間の新奇で覚醒的な共同課題をした夫婦は、平凡な課題の群や課題のない群より関係の質の上昇が大きかった。ただし抄録が書くのは直前から直後までの変化で、その先を測った記載はありません。

この号が扱うのは、注ぐべき量ではなく、流通する数字が何を測った数字なのかです。もうひとつの出どころは1993年の実験。米国の既婚53組を無作為に3群へ割り付け、週1.5時間・10週間続けさせたところ、活動をした2群と何もしない群の対比は有意にならず、効果量も小さい——明確な差があったとは言えません。有意だったのは、活動どうしの対比のほうでした。

関係投資行動は、注ぎ方の技術の名前ではありません。中心にあるのは投資モデル。関係へのコミットメント——続けたいという構え——を、満足度、他の選択肢の質、注ぎ込んだものの量の3つで説明します。統合されてきた値は、ほとんどが相関。同じ人が同じ質問紙に答えた二つの値がどれだけ一緒に動いたか、です。どちらが先かは、そのデータの中にありません。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
同じ人が答えた二つの値。順序は、そこには入っていない。 Visual: ALIFE

では、どこまで測られているのか。答えたのは、5か国の標本と米国の既婚のカップルが中心です。

01コミットメントと最も強く結びついたのは、満足のほうだった。2003年のメタ分析が統合したのは52研究・60の独立標本・11,582人。女性54%・男性46%、米国・英国・オランダ・イスラエル・台湾の5か国です。コミットメントとの平均加重相関は、満足度 r = .68(95%信頼区間 .67〜.69)、他の選択肢の質 −.48(−.49〜−.46)、投資量 .46(.45〜.48)。r は二つの値が同じ人を同じように並べるかの値で、負は逆向き。いちばん大きいのは投資量ではなく満足度でした。3つの規模は48研究ずつで、9,330人・9,054人・9,147人。3つでコミットメントの分散の61%(59〜63%、k = 32・N = 4,360)にあたる関連(k は統合に入った研究の数。関連の量であって配分表ではありません)。同じ論文は継続・解消との r = .47(.43〜.50、k = 12・N = 1,720)も報告します——測っている相手が違う値です。

0216年ぶん研究が増えても、統合されたのは相関だった。2019年の更新版は、1980年から2016年初頭までの202の独立標本、50,427人を統合。満足度 r = .65、投資量 r = .53、他の選択肢の質 −.43と、水準はほとんど動きません。要点は、標本が3倍を超えても統合されているのは相関のままだということ。注ぎ込んだからコミットしたのか、その逆か、どちらでも同じ相関になります。統合値は、個々の研究が一様だった意味でもありません。

0310週間の割り付けでも、何もしない群との差は明確でなかった。1993年の実験は、米国の既婚53組を無作為に3群へ割り付け、週1.5時間・10週間、自分たちで「わくわくする」「快い」と決めた活動、特別な活動をしない、のいずれかを行わせ、前後で婚姻満足度を測りました(抄録の範囲まで)。2群と何もしない群の対比は有意にならず、効果量も小さい——明確な差があったとは言えません。有意だったのはわくわくと快いの対比で、効果量は中程度。するなら新しさのあるほうという、活動どうしの比較です。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
満足・他の選択肢の質・投資量、そして10週間の割り付け。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、そこから引かれていく途中です。手がかりは3つ。

01相関が、βという別の名前で運ばれる。投資とコミットメントの結びつきは、しばしば「β = .45」で紹介されます。2003年のメタ分析の値は平均加重相関 r = .46 のほう。3予測子を同時に投入した回帰での投資量の重みはβ = .240(対人関係の標本のみ・k = 18・N = 2,331)。β は他の予測子の影響を差し引いた回帰の重みです。指標の名前も実際の値も、原典と一致しません。書き換わると、純粋な効き目のように読めます。

02直後に測られた値が、その後の話として運ばれる。冒頭の7分に戻ります。2000年の研究で測られたのは、課題の直後の関係の質。その先を測った記載は、抄録にはありません。1993年の10週間も、何もしない群との差は有意になりませんでした。二つを足して「新しいことをすれば関係が良くなる」と読むと、どちらからも離れます。測定の窓が違う二つを、一つの助言に畳まないでください。

03別々の相関が、一つの話として運ばれる。2003年のメタ分析には .4台の値が二つ。投資量とコミットメントの r = .46 と、コミットメントと継続・解消の r = .47(k = 12・N = 1,720)。近くても、測っている相手が違います。前者は注いだ量と続けたい構えの一致、後者は続けたい構えと実際に続いたかの一致。「注いだ量が続くかどうかを .47 で予測した」とは読めません。対象も落ちます——52研究の対象には仕事・趣味・大学・履修中の授業・スポーツも含まれます。恋愛の数字は、授業への打ち込みも入った平均です。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
相関がβに変わる・直後の値がその後になる・別々の相関が一つになる。 Visual: ALIFE

答えたのは別々の集団で、恋愛関係だけの標本でもありません。目の前の相手とのあいだで起きていることは判定してくれません。全文まで読めたのは6点のうち2点。ほかの4点は抄録の範囲まで。日本の恋愛や結婚で同じ設計をやり直した記録は、たどった範囲ではごく少なく、測られた期間も7分から10週間まで。

2020年の論文は米国の487組から、家事の分担は関係満足度の重要な予測子で、男性側のコミュニケーションの質が分担と女性側の満足度の関連を媒介し、女性側のそれは男性側には交絡だったと報告します(媒介=あいだのCを通って現れる関連。量が関係ないという意味ではありません)。日本の第7回全国家庭動向調査(2022年7月実施)は、有効回収票数8,910票・有効回収率54.1%、うち有配偶女性が5,518票。妻の分担する割合はいずれの調査年でも80%超、2008年調査から2022年調査の変化は4.9ポイント(妻が60歳未満の世帯)。国も対象も訊き方も違い、比べることも足すこともできません。並べたのは、注いだ量の話の土台が最初から偏っているからです。

活動をした2群と、何もしない群の差は、明確とは言えなかった。
差がついたのは、わくわくと快いの比較のほうだった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。研究が測ったのは質問紙の値どうしの相関と、活動を割り付けたときの満足度の動きで、数え直したときのことは扱っていません。ここからはALIFEが提案する入口です。注ぐ量を増やす課題ではありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙かメモアプリを開き、直近1か月をさかのぼる。数える対象は**自分の手元にある記録だけ**——予定、支出、送った連絡の件数、撮った写真の枚数など、自分ひとりで確認できるもの。

  2. 02COUNT

    種類ごとの件数を書き、最後に合計を書く。多い少ないの評価は書かない。相手が何をしたかも書かない。

  3. 03COMPARE

    数え始める前に思っていた件数を、下に書き添える。実際の件数と並べ、今日の日付を書いて閉じる。それで終わり。

10分。**採点はありません。**増やす課題でも、減らす課題でもありません。**相手に尋ねる・相手の記録を見る・相手を試す課題でもありません。**交際相手がいない読者、いま恋愛をしない読者は、続けている活動や継続的に関わる人で同じ形にできます。書いたものは誰にも見せなくてかまいません。**相手からの被害や恐怖がある関係は、この課題の対象外です。**安全と距離を優先してください。**苦しくなったら、そこで中止を。**つらさが続く・強まる場合は、医療・支援の専門家へ相談してください。

確かめられたのは四つ。統合されたのはどれも相関で、いちばん大きかったのは投資量ではなく満足度だったこと。継続・解消との .47 は、それとは測っている相手が違う別の値だったこと。標本が3倍を超えた更新版でも、統合されたのは相関のままだったこと。10週間の実験で何もしない群との差は明確とは言えず、7分の課題は抄録の書く範囲では直後までだったこと。注げと書かれた行は、どこにもありません。残せるのは、件数と、合計と、数える前に思っていた件数のずれだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS関係投資行動を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
相関係数 r
2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。