IN ROMANCE · ISSUE 117
● 12 SEC「相性を計算します」という売り文句は、計算の中身を見せません。ただし、実際に試した研究はあります。2017年の研究は、交際相手のいない米国の学部生に、過去の研究が配偶者選択に関わるとしてきた100項目を超える測度へ答えてもらい、1回4分ずつ、その場の異性の参加者全員と会わせました。標本は2005年の163名と2007年の187名(平均19.6歳)。
説明できたのは、本人由来の分が4〜18%、相手由来の分が7〜27%(抄録の表記)。予測できなかったのは、二人組に固有の分のほうです。この号が扱うのは、その切り分け。「相性は予測できない」という話ではありません。
適合性評価力(Compatibility Assessment)が見分けるのは、「合うかどうか」の中身です。ある人がある人をどれだけ望むかという値は、統計の上で三つに割れます。
一つめ、その人がだいたい誰に対しても人を望みやすいか(本人由来)。二つめ、その人がだいたい誰からも望まれやすいか(相手由来)。三つめが、この二人の組み合わせだから起きる分(二人組由来)です。「誰とでもすぐ仲良くなる」は一つめ、「よく好かれる」は二つめ。俗に相性と呼ばれているのは三つめだ——というのが、この号の読み筋です。

では、その三つはどこまで当てられたのか。まず測られたのは、この3つです。
01当たったのは、三つのうち二つだった。説明できた分散——ばらつきのうち言い当てられた割合——は、本人由来の分が4〜18%、相手由来の分が7〜27%。7〜27%は抄録の表記で、同じ論文の本文の表では約18〜27%(この号は抄録を採りました)。二人組に固有の分だけは、事前のどの特性と選好の組み合わせからも予測できません。説明できた分散は男性の女性への欲求で −4.55%〜−0.18%、女性の男性への欲求で −2.68%〜1.30%、当てずっぽうより悪い側でした。
02別の標本に当てると、二人組の分は0.1%未満。2005年の標本で作ったモデルで2007年の標本の二人組由来の欲求を予測すると、当てられたのは最良でも分散の0.1%未満。同じデータで後から説明するのと、見ていないデータで先に当てるのは別です。論文自身も、出会う前の予測は難しいと結びます。ただし外れたのは二人組に固有の分についてで、その分が存在しないと示されたのではありません。会った直後の感想を予測子にすれば、二人組の分は男性で21〜29%・女性で16〜24%説明できています。
0343のデータセットでも、変化は当たらなかった。2020年の研究は、29の研究室の43の二者縦断データセットを統合。よく当たったのは、その関係について本人が答えたこと——コミットメントの感じ方、感謝、性的な満足、葛藤。関係の質の分散のうち初回時点で最大45%・終了時点で最大18%(個人差の変数は21%と12%)。自分の回答は相手の回答の2〜4倍を説明し、相手の回答は上乗せなし。ところが「変化」だけは、どんな組み合わせからもほとんど当たりません。最大45%は関連の量で、残りの配分表ではありません。

数字そのものは動きません。動くのは、引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。
01「二人組の分」を、相性ぜんぶに広げている。この結果は、「相性は予測できない」の一文にまとめられがちです。まとめた瞬間に、当たっていた分が消えます。外れたのは二人組に固有の分と、関係の質の「変化」の二つ。本人由来(4〜18%)と相手由来(7〜27%)は、事前の自己申告から説明できています。売り文句が計算しているのは、たいてい前の二つだ——というのが、この号の読み筋です。
02「似ていると思う」を、実際に似ていることにしている。2013年の研究は、実際に似ているかと、似ていると思っているかを同時に測りました。似ていると感じた度合いは β = .75(t(1985) = 54.21)で魅力を予測。β は0なら結びつきなし、大きいほど強く一緒に動くことを指します。14の特性にわたる実際の類似性の統合値は β = −.006(z = −0.98, p = .325)で、ゼロと区別がつかず、明確な結びつきとは言えません。2025年のスコーピングレビューも、339本で結果はおおむね割れ、知覚された類似性のほうが効果が強く、類似性が普遍的により良い帰結と結びついてはいない、と報告します。証拠の主要な供給源は、実験室の240件を統合したメタ分析だ——というのが、この号の読み筋です。
03「アルゴリズム」を、確かめ済みにしている。2012年の検討は、オンラインの出会いを、会える範囲・やりとりの手段・組み合わせの計算に分けます。三つめの結論は一行——数学的なアルゴリズムが働く、つまり他の組み合わせ方より優れた恋愛上の帰結をもたらすという売る側の主張を支持する、説得力のある証拠は無い。間違っていると証明された話ではなく、検証できる形で外に出ていない、という話です。名前を伏せられた、自分で相手を探す型のサービスの利用者は、週平均5.2時間を閲覧に、6.7時間をやりとりに使い、対面は1.8時間。その利用者の報告で、出会い方一般の平均ではありません。

どれも、あなたと目の前の相手がこれからどうなるかを教えてはくれません。計算された集団の話だからです。答えたのは米国の学部生と、オンラインで募集に応じた人が中心。異性の相手とだけ会う設計のスピードデートが軸で、測り方も自己申告です。日本で同じ手続きをやり直した記録は、この号がたどった範囲に1件もありません。全文まで読めたのは7点のうち3点。読めていないものについては書きません。
会う前に測れるのは自己申告だけで、会った直後からは二人のあいだで生まれる量が測れます。測れる量は時期が進むほど「二人のあいだのもの」に近づき、助言が欲しいのはいちばん測れない会う前のほうだ——というのが、この号の読み筋です。恋愛と結婚の研究は、別れた人が追跡から抜ける分、続いた関係のデータが残りやすい構造の上にあります。
外れたのは、三つのうち二人組の分だけ。
別の標本に当てると、最良でも0.1%未満。
だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。条件を5つ書いて印を分けたとき何が起きるかを確かめた研究は、この号では扱っていません。ALIFEが提案する実践の入口です。
TRY IT TODAY
- 01LIST
紙かメモアプリに、「相性が良い」と言うとき実際に使っている条件を5つ書き出す。評価ではなく、条件の言葉で。
- 02MARK
5つそれぞれの左に印を1つ。一人でいても言えること(性格・価値観・好みなど)には丸、相手がいて初めて言えること(間が持つ・沈黙が気にならない)には四角。
- 03COUNT
丸の数と四角の数を数えて、書き添える。それで終わり。どちらが多くても、正解でも不正解でもない。
確かめられたのは四つ。事前の自己申告から本人由来4〜18%・相手由来7〜27%まで説明できたこと。二人組に固有の分だけは予測できず、別の標本では最良でも0.1%未満だったこと。43のデータセットで、いまの関係についての回答が最もよく当たり、質の変化はほとんど当たらなかったこと。アルゴリズムが働くという主張を支持する証拠が、公開された形では見つかっていないこと。当たったのは、いまどう感じているかのほうでした。今日残せるのは予測ではなく、条件が5つと、丸の数と四角の数です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS適合性評価力を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
- p値
- 差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

