IN FRIENDSHIP · ISSUE 101

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「さっきの会話、うまくなかったかもしれない」。この振り返りを、両側から測った研究があります。2018年の論文の第1研究は、米国の大学で募った36人を2人組にし、実験室で5分だけ会話させました。終わると別室で、自分は相手をどれくらい好きになったか、相手は自分をどう見ていると思うかを聞きます。7点満点の平均は5.82と5.17。低いのは推測でした。

論文はここに一つの理屈を置きます。組の全員が平均として「自分のほうが相手を多く好きだった」ことは、論理的に成り立ちません。同じ会話を両側が答えている以上、この差はどこかの読み違いだ、と。この号が扱うのは、その0.65が誰の何の測定から出た数字かです。実験室の5分、寮の9月から5月、公園の52組——測られたものは別です。

親和シグナル知覚力(Liking Signals)は、相手の好意を読み取る力として置かれています。測ってきたのは、同じ人が同じ会話について続けて答える二つの数字の差——2018年の論文が言うライキング・ギャップです。どちらも本人が7点満点でつけた自己報告で、外から測った値ではありません。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
答えるのは二つ。自分がどう思ったかと、相手がどう思ったと思うか。 Visual: ALIFE

まず測られたのは、この3つです。

015分でも、差は出た。米国の大学で募った36人(72.2%が女性・平均23.25歳)を2人組にし、実験室で5分会話させる。親しい友人同士の1組は分析から除外。7点満点で、実際の好意は5.82、推測は5.17。差は b=−0.65、t(34)=−5.83、p<.001——b は差の大きさで、0なら差なし、マイナスは推測が低いこと。話題の指定を外した第2研究(84人・平均19.25歳)でも b=−0.57、t(84)=−8.32。5.82も5.17も、7点満点では高いほうの値です。

02合図のほうは、映像に映っていた。第1研究の会話は録画されていました。2本は記録できず、友人同士の1組も除いてコード化は15本。仮説を知らない2人の助手が独立に「相手をどれくらい好きに見えるか」を採点(一致度0.71)。外から採点された好意は実際の好意を予測し(b=0.71、t(30)=3.20、p<.001)、本人の推測は予測しませんでした(b=0.38、95%信頼区間 −0.17〜0.91、p=.51。0をまたぎ、明確な関係とは言えません)。第2研究は、会話後の考えの否定的な度合いを経由する分を取り出しました(間接効果 b=−0.14)——分解であって、否定的な考えが推測を下げたと確かめたものではありません。

03長さが変わっても、9月から2月までは、向きは同じ。第3研究は、別の大学の102人(平均23.62歳)に1分以上45分以内で自由に話してもらいました(実際は2分から45分・平均22.97分)。向きは同じで、好意 b=−0.38、t(102)=−3.72、楽しさ b=−0.52、t(102)=−5.42。長さとの掛け合わせは有意でなく(好意 p=.37、楽しさ p=.33)、3群に分けても明確な差は中間の60人だけ(平均差0.37、p<.01)。短い18人(0.39、p=.12)と長い24人(0.42、p=.056)は信頼区間が0をまたぎ、明確な差とは言えません。第5研究は同じ寮の1年生102人(平均18.29歳)を9月・10月・12月・2月・5月で追跡し、全体で b=−0.36、t(1131)=−6.16。9月から2月の4時点は有意(すべて p<.01)、有意でなくなったのは5月だけ(p=.87)。正確さに賞金を出しても推測は変わらず(b=−0.07、p=.81)、この寮の割り当ては無作為ではありません。

(仮ビジュアル)暗い石の台の上に、洋梨とさくらんぼとオーツ麦を盛った器、半分に切った洋梨、水の入ったグラス、麻の布が並んでいる朝食の静物
5分の差・映像に残っていた合図・5時点の追跡。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

動くのは数字ではなく、引かれていく途中です。手がかりは3つ。

01差の存在を、嫌われた証拠にしている。差は0.65。ただし実際の好意は5.82、低いほうの5.17も7点満点の真ん中の4より上です。測られたのは好意の不足ではなく、二つの数字のずれです。幅も一様ではありません。恥ずかしがりの程度で差が変わり(交互作用 b=0.03、t(30)=3.29、p=.003)、3等分すると強い10人は1.14(p<.001)、平均的な10人は0.55(p=.01)、弱い10人は0.25(95%信頼区間 −0.15〜0.65、p=.21)で明確ではありません。拒絶感受性・自尊心・自己愛は差を調整せず(p=.64、p=.42、p=.12)。寮で5月に有意でなくなったことも、差がゼロだと示されたことではありません。著者らは、互いをよく知ったことと、翌年の同居を決める時期だったことを挙げます——確かめられた原因ではなく、候補です。

02会話の終わり方を、自分の出来の話にしている。読み違えは好意の量だけではありません。2021年の2つの研究は、会話の終わり時を測りました。オンラインの806人(平均36.78歳)は直前の対面の会話を思い出して答え、実験室の252人(平均23.10歳)は初対面の相手と1分以上45分以内で話しました。同時に終わりたかった時点で終わったのは1.59%、一方の希望どおりは29.37%、46.83%では両者とも、実際より早く終わってほしいと思っていました。望ましかった長さとの食い違いは、実験室で46.03%、思い出した会話で56.01%。相手が望んだ長さの推定のずれ幅は平均9.38分・会話の63.84%。別の解析では、実際の食い違いは想定より2倍以上大きかった(t(375)=−7.73、p<0.001)。ただし「相手が終わりたかった時点」も、本人の推定と自己報告から作られた値です。

03相手の反応のかわりに、自分の予想を使っている。出す側にも同じずれが乗ります。2021年の褒め言葉の研究は、米国の都市部の公園で2人組へ声をかけました。参加者は210人(平均36.84歳・62%が女性)、知り合って平均10.78年(2週間から76年)。褒め言葉条件と統制条件へ無作為に割り当て、3つの褒め言葉を書かなかった1組を除く各条件52組が分析対象。予想した相手の気分は0〜10で7.79、受け取った側の回答は8.81(F(1,51)=20.19、p<.001)。気まずさは予想3.46に対し実際2.06(p=.004)。やりとりのない統制条件では明確ではありません(気分 7.50対7.81、p=.30/気まずさ 2.33対2.04、p=.44)——褒め言葉の場面で出た差だ、という区別です。同じ向きのずれは、2021年の5つの研究と2018年の感謝の手紙の3つの実験でも報告されています。どれも自己報告であり、伝えれば関係が良くなると確かめた研究ではありません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
差を嫌われた証拠にする・終わり方を自分の出来にする・予想を相手の反応のかわりに使う。 Visual: ALIFE

低く報告されたのは推測の側、向きが揺れたのは長さと時点で分けたときだけ。ただしどれも、あなたが昨日した会話で相手が何点をつけたかは教えてくれません。平均が計算された集団の話だからです。

測られたのは、米国の実験室の初対面の人たち、同じ寮の1年生、公園の2人組、そして英国の「見知らぬ人との話し方」講座——参加118人のうち使えた100人(平均30.58歳)では、会話の前から「相手は自分より面白い」という予測が出て(3.59対3.22)、5分後には差が広がりました(4.30対3.61、b=0.32、p=.01)。ただし自分から申し込んだ人たちで、公園の組はもともと一緒に出かける関係です。好意も楽しさも気まずさも終わりたかった時点も、ほとんどが本人のつけた点数です(例外は映像を採点した2人の助手)。日本の教室や職場でやり直した記録も、職場のチームを測った記録も、たどった範囲にはありません。

5.82と5.17は、実験室の5分について、
同じ人が続けて書いた二つの数字だった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。書き足して採点し直すと何が変わるかを確かめた研究は、扱っていません。測られているのは二つの数字の差だけ——そこから起こした、ALIFEの入口です。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    この1週間の会話をひとつ選ぶ。相手の名前は要らない。「火曜の昼」など、自分に分かる印で足りる。

  2. 02SCORE

    相手が自分をどれくらい好いたと思うかを1から10で書く。考え込まず、最初に浮かんだ数字にする。

  3. 03OBSERVE

    外から見えた相手の行動を3つ書き足し、もう一度点をつける。二つの点の差は、そのまま残す。

5分。**採点はありません。**当たっている必要はなく、**二つの点の差が、この記録の中身です。**差がゼロでも下がっても、そのまま書きます。相手に確かめに行く課題でも、他人を採点する記録でもありません。書けた分で終えてよく、書いたものは手元に置きます。思い返して苦しくなったら中止を。つらさが続く・強まる場合は、この課題より先に、医療・支援の専門家へ相談してください。

親和シグナル知覚力は、気持ちを言い当てる才能の名前ではありません。確かめられたのは三つ。実験室でも寮でも公園でも、自分がつけた点より、相手からの点の推測が低かったこと。外から採点された合図は実際の好意を予測し、推測は予測しなかったこと。長さや時点で分けると、差が明確でなくなる群があったこと。思ったより好かれている、と約束した研究はありません。今日残るのは、会話が1件と、最初の点と、事実が3つ、つけ直した点だけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS親和シグナル知覚力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。