IN FRIENDSHIP · ISSUE 099

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗い上着姿で外の街明かりを見ている女性。ガラスにその横顔が薄く映り込んでいる● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「悩みを聞いてもらうと、少し楽になる」。この確信の隣に、別の物差しを置いた研究があります。2002年、それまで名前のなかった話し方に名前がつきました。共反芻(co-rumination)——同じ問題を繰り返し話し、掘り返し、原因を推し量り合う会話の型です。

小学3年・5年、中学1年・3年に相当する608人にこの尺度を当てたところ、二つの向きが同時に出ました——共反芻が多い人ほど友人関係の質が高く、同時に抑うつ・不安の指標も高かった。

この号は気分の鎮め方のコツを書きません。悩みを語り合う会話の型が、何と、どれだけの大きさで結びついてきたかを扱います。ここでの指標は会話のやり方を測るためのもので、読む人の状態を判定するものではありません。

感情調整・安定性(Emotion Regulation)は、気分を鎮める腕前というより、感情の扱い方が関係の側で何と結びつくかまでを含みます。2021年の総説は、この型をトレードオフとして整理しました——問題について過度に反復して話すことは、社会的な共有を通じて質の高い関係と関連する一方、内向きの症状(抑うつや不安など、内側へ向かう不調の指標)とも関連する。

いずれも観察された関連であり、どちらが先かは、この整理からは決まりません。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
同じ会話の型が、二つの指標と同じ向きに並んだ。 Visual: ALIFE

では、その結びつきはどちらへ、どれだけの大きさなのか。まず測られたのは、この3つです。

01608人では、両方と正に並んだ。2002年の調査は共反芻の尺度を新たに作り、小学3年・5年、中学1年・3年に相当する608人に当てました。報告は二方向——共反芻が多い人ほど友人関係の親密さが高く、同時に抑うつ・不安の指標も高かった。女子は男子より共反芻が多く、それが女子の友情の強さと内向きの症状の高さの両方を説明したとも。一時点の調査で観察された関連です。

02女子83人では、友情の側の相関が大きい。2009年の研究は、青年期の女子83人(平均13.45歳)を追いました。共反芻と抑うつ症状の相関は r = .25——r は0なら関連なし、1に近いほど強い正の関連を表します。同じ83人で、友人との安心できる関係とは r = .40、意思疎通とは r = .38。大きかったのは、友情の側でした。ただし、共反芻からその後の抑うつ症状を予測する関連は有意にならず(偏相関 pr = .08)、明確な関連とは言えませんでした。

03同室25組では、似かたが上がった。2003年の研究2は、大学の同性の同室者37組のうち、入学2週間後と約9か月後の2時点を完了した25組で、感情の似かたの相関が r = .02 から r = .55 へ上がったと報告します(z = 2.88、p < .01。z は大きいほど偶然では説明しにくい)。研究1では、交際中の60組のうち6か月をおいた両時点を完了した38組で r = .30 から r = .56 へ(z = 3.06、p < .01)。両研究とも力や地位が低い側が相手に合わせて大きく変化し、研究1では似かたが大きい組ほど関係が解消しにくい関連も。観察された変化です。

(仮ビジュアル)ベージュの壁の前で、黒い石の細い天板を、青いガラス・銀の金属・赤い漆という三つの異なる脚がそれぞれ支えている彫刻的なコンソールテーブル
608人の横断・女子83人の相関・同室25組の9か月。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、ここから先の読み方のほうです。手がかりは3つ。

01「話せば軽くなる」を、結論にしている。2005年の実験は、つらかった出来事を感情を込めて語る条件とそうでない条件を比べ、日をおいてから回復を測りました。条件による回復の差は報告されず、一方で語った人は「有益だった」と高く評価していた。差がなかったと証明されたのではなく、差が示されなかった、という形です。本文に到達できておらず、人数・条件の内訳・検定の値・評価の点数は扱いません。

02友情の濃さを、状態の証明にしている。同じ型が友人関係の質とも抑うつ・不安の指標とも結びつく以上、友情が濃いことは状態が良いことの証明にはならない——というのが、この号の読み筋です。2007年の6か月の縦断研究も、女子では共反芻がその後の抑うつ・不安の指標と友人関係の質の両方の上昇を、男子では友人関係の質の上昇だけを予測したと報告。著者らは、支えに満ちた友情に見えるために内向きの困難が見えにくくなる女子がいると述べます。本文未到達のため、効果の大きさは扱いません。

03逆に、抑えれば安全だと思っている。2009年の研究は、大学1年生278人を入学前から秋学期の終わりまで追跡し、感情の抑制——感じたことを外に出さないやり方——の強さを測りました。抑制が強い人ほど、友人からの社会的な支えが少なく、他者との近さも満足度も低かった。関連であって、抑制がそれらを下げたと示したものではありません。出しても回復の差は示されず、出さなければ支えと近さが低い側に並ぶ。快適さの技術としてより、関係の技術として測られてきました。

(仮ビジュアル)縦三分割の帯状の写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に脱ぎ置かれた上着と鍵
「話せば軽くなる」を結論にする・濃さを状態の証明にする・抑えれば安全だと思う。 Visual: ALIFE

六つを並べ直すと、形が見えます。女子83人で大きかったのは友情の側(r = .40 と .38)で、抑うつ症状との相関は .25。その追跡で、その後の抑うつ症状を予測する関連は有意になりませんでした(pr = .08)。

限界も置いておきます。数値を引いた研究の参加者は米国の児童・青年・大学生に偏り、感情の側の測定はほぼ自己報告です。一時点の調査からは、もともと親しい人ほど語り合うという逆向きも排除できません。共反芻を6か月追った縦断研究と、語ることの効き目を測った実験は、本文に到達できておらず、方向だけを扱いました。どれも、あなたの今日の一回の会話が何を動かすかは教えてくれません。相関は、相関が計算された集団の話だからです。

608人の調査で同じ向きに並んだのは、
友人関係の質と、抑うつ・不安の指標だった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。話した回数を数えれば気分が軽くなる、と確かめた研究を、この号では扱っていません。測られたのは、会話の型が並んだ二つの指標と、同じ標本のなかでの相関の大小と、隣にいる相手との似かたが動いた幅まで。やめる必要はありません。数字が三つ並べば足ります。

TRY IT TODAY

  1. 01COUNT

    今日、誰かと悩みについて話したら(なければ最後に話したとき)、その話題がその相手に対して何周目かを書く。初めてなら1、何度もなら概算でよい。

  2. 02RATE

    話す直前の気分と、話し終えた直後の気分を、それぞれ0から10で書く。

  3. 03MARK

    その差が「軽くなった感じ」に近いのか、「実際に事態が動いた」に近いのか、一言だけ添える。

8分。採点はありません。話すのをやめる課題でもありません——**悩みを話さないほうがよい、とこの号の研究は示していません。**他人の状態は書かず、自分の数字だけを残します。誰にも見せず、提出もしません。つらくなったら中止を。つらさが続く・強まる場合や、気分が強く落ち込んでいる・自分を傷つけたい気持ちがある場合は、この課題より先に、医療・支援の専門家へ相談してください。

感情調整・安定性は、気分を鎮める腕前につけられた名前ではありません。確かめられたのは三つ。608人では、語り合う型が友人関係の質とも抑うつ・不安の指標とも同じ向きに並んだこと。女子83人では友情の側(.40と.38)が抑うつ症状(.25)より大きく、その後を予測する関連は有意にならなかったこと。同室者25組では、感情の似かたが約9か月で .02 から .55 へ動いたこと。

楽になるとも、濃くなるとも、ここまでの研究は約束していません。今日残るのは相関ではなく、話題が何周目かと、話す前と直後の気分。数字が三つ、増えるだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS感情調整・安定性を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

相関係数 r
2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
観察研究・前向き研究
介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

Next in friendship

VIEW ALL
ISSUE 098選ばれたのは、正直に答えた側だった。ISSUE 100多く返ってきたのは、28人中11人だった。
ALIFE · ISSUE 099

本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。