IN FRIENDSHIP · ISSUE 098

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「本音を話すほど、距離は縮まる」。「重い話をすると、引かれる」。反対を向いた助言がどちらも流通していますが、どちらも話す量と深さの問題です。ところが1994年のメタ分析は、この領域をまず三つの問いへ分けました。三つの統合値は、同じ大きさではありませんでした。

扱うのは、打ち明け方のコツではなく、何がどこまで測られたかのほうです。「聞かれても答えないほうが安全だ」という見積もりは、2016年の7つの実験で逆を向いていました。選ばれたのは、答えを避けた人ではなく、正直に答えた人。対象は米国で行われた実験の参加者であり、日本での追試を、この号ではたどれていません。

自己開示の調整力(Self-Disclosure Regulation)は、何を打ち明けるかより、どこまで・誰に・どの順で出すかを調整するところまでを指します。「自己開示は関係に効くのか」は、混ざりやすい三つに分かれます。打ち明けられた側の好意、打ち明ける側の選択(好きな相手にほど多く話すか)、打ち明けた側の好意。1994年のメタ分析が最初にしたのは、この三つを別々に統合することでした。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
混ざりやすいのは、話したから好かれるのか、好きだから話すのか。 Visual: ALIFE

では、どの問いが、どれだけ測られたのか。

01打ち明けられた側の好意は、50研究。ひとつめ「打ち明けられた側は、その相手を好きになるか」は、50の独立した研究を統合して d = 0.281。d は差をばらつきで割った値で、0なら差なし、目安では0.2前後が「小」。ただし0.281は相関研究6件・統制の効いた実験57件・統制の弱い実験31件が混ざった全体の値で、因果は語れません。原典が因果まで推論するのは、実験57件に限った d = 0.272 と「初対面の場面では」の内側だけです。

02好きな相手ほど打ち明ける側は、22研究。ふたつめ「人は、好きな相手にほど多く打ち明けるか」は、22研究を統合して d = 0.717。三つは同じ枠組みの中の別々の問いであって、どれが原因でどれが結果かを決めたものではありません。並べ方だけを言えば、いちばん大きい値がついたのは「話したから好かれる」の側ではなく「もともと好きな相手に、より多く話す」の側です。

03打ち明けた側の好意は、5研究。みっつめ「打ち明けた側は、その結果として相手を好きになるか」は、5研究を統合して d = 0.317。ただし50研究の0.281と5研究の0.317を、同じ確かさで横に並べることはできません。三つの統合値の差そのものを検定した結果も、本号では扱っていません。統合値は統合値であって、個々の研究の結果が一様だったという意味でもありません。

(仮ビジュアル)ベージュの壁の前で、黒い石の細い天板を、青いガラス・銀の金属・赤い漆という三つの異なる脚がそれぞれ支えている彫刻的なコンソールテーブル
50研究・22研究・5研究。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

ここから先で、話はよく別のものへ入れ替わります。手がかりは3つ。

01いちばん小さい線を、根拠にしている。「本音を話せば距離が縮まる」が賭けているのは、三つのうち d = 0.281 の線です。方向としては「ある」。ただし大きさは、22研究の0.717と並べれば小さい。統合値は研究の平均であって、あなたの次の会話で何が起きるかを教える数字ではありません。

02宛先の話を、確かめられた差にしている。同じメタ分析は、効き方を左右する条件も調べています。同じ内容でも、自分にだけ向けられた話と受け取られた場合は d = .453、誰にでもしている話は .228。差は予測された向きに出ましたが、群のあいだの差は偶然の範囲を超えませんでした(Qb = 2.25、p = .13)。Qb は群と群の差が偶然で説明できるかを見る検定です。宛先の比較は、原典自身が「少数の研究」と断る10効果量と12効果量。偶然の範囲を超えたのは、深さ(親密さ)の d = .324(72効果量)と、広さ(話した量)の d = .195(22効果量)の差のほう(Qb = 5.60、p < .05)で、向きは深さの側。書けるのは、深さと広さの差は検定を通り、宛先の差は通らなかったところまでです。

03恐れの向きを、逆に持っている。2016年の7つの実験は、隠す側を測っています。参加者は、質問に正直に答えた人と「回答しない」を選んだ人を見比べます。出会いの場面を模した実験1では、参加者の78.9%が、答えを避けた人ではなく正直に答えた人を選びました。内容が薬物の使用・悪い成績・性感染症といった好ましくない行動でも、64%が正直な側。採用の場面を模した実験3Bでは89%(95%信頼区間 83〜93%)。求職者の立場の参加者の70.5%は薬物の使用について答えないほうを選び、雇用者の立場の評価者は答えた人を高く評価しました(10点満点で5.3 対 4.4)。下がっていたのは、好ましさではなく信頼性の評価でした。これは、何でも話すべきだという結果ではありません。測られたのは、聞かれたことに扉を閉めたときの評価です。

(仮ビジュアル)縦三分割の帯状の写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に脱ぎ置かれた上着と鍵
小さい線に賭ける・宛先を確かめられた差にする・恐れの向きを逆に持つ。 Visual: ALIFE

量ではなく形を測った研究もあります。2013年の実験は、初対面の組を、質問と回答を毎回入れ替えて往復する条件と、片方がまとめて話し二回目で役割を入れ替える条件に分けました(二回終われば量は揃う設計)。向きは、往復した側が、一回目の対話のあとで上回ったというもの。ただし差の大きさを示す効果量には原典で到達できていません。1997年の手続きは、45分かけて決められた質問に交互に答える条件と、同じ45分を小話に使う条件を比べ、前者で親密さが上がったと報告されている設計まで。得点も、追跡調査の割合も、原典で確かめられていません。どちらも初対面の対話で、続いている友人関係で同じ形になるかは別です。

2020年の総説は、二人の会話と三人以上の会話は、程度の差ではなく種類の差だと論じています。人数が増えると発話時間が減り、順番の調整が複雑になり、反応が薄まる。その結果、開示の量と深さが下がる、と。ただし著者たち自身が、この方向を支持する研究は検定力が十分でなく、追試が必要だと明記しています。2018年の7つの研究は、同じ弱さの表明でも、他者が行った場合は肯定的に、自分が行った場合は否定的に評価されたと報告(美しい混乱効果)。自分の弱さは具体的に、他者の弱さは抽象的に解釈されることが説明として支持された、と抄録は述べます。たどれたのは、この抄録の範囲までです。

7つの実験で下がったのは、
打ち明けた側の評価ではなかった。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。一段深い一文を出して返しを記録すれば友人ができる、と確かめた研究は、この号では扱っていません。測られたのは、三つの統合値と、どちらの群間差が検定を通ったかと、扉を閉めた側の評価まで。ここからはALIFEが提案する実践の入口です。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    今日の会話を1つ選ぶ。できれば、二人で話せる相手にする。

  2. 02SAY

    いつもより一段だけ深い一文を、自分から出す。内容は何でもよい——迷っていること、意外に思われそうな好み。

  3. 03NOTE

    相手が返した内容の深さを、「同じ・浅い・深い・返らなかった」の4つから選んで一行で書く。

10分。**採点はありません。**同じ深さで返ってくる必要はなく、返しの段を書き留めることが記録の中身です。**これは相手を試す手続きではありません。**答えたくないことは答えなくてよく、話題そのものを持ち出さない自由も残っています。他人の秘密や、相手を特定できる内容は書きません。書いたものは人目に触れない場所に置くか、読んだら処分してかまいません。つらくなったら中止し、つらさが続く・強まる場合は、この課題より先に医療・支援の専門家へ相談してください。

自己開示の調整力は、何でも打ち明けられる強さの名前ではありません。確かめられたのは、三つの統合値が0.281・0.717・0.317と揃わず、研究の数も50・22・5と違っていたこと、宛先の違い(.453と.228)は向きこそ予測どおりでも群間の差としては偶然の範囲を超えず、超えたのは深さ(.324)と広さ(.195)の差のほうだったこと、そして7つの実験で選ばれたのは、答えを避けた人ではなく、正直に答えた人だったこと。近づけるとも、嫌われずに済むとも、ここまでの研究は約束していません。——今日残るのは統合値ではありません。自分から出した一文と、返ってきた段。一行が、増えるだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS自己開示の調整力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
効果量 d・g
2つのグループの平均の差を、ばらつきの大きさで割った値。一般的な目安では 0.2=小、0.5=中、0.8=大。g は d を小規模研究向けに補正したものです。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。