IN EMPLOYMENT · ISSUE 095

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートに白いワイドパンツの女性がひとりで下りてくる写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「たくさん動いた人ほど、決まりやすい」。職探しの助言で、これほど広く配られてきた一文は多くありません。2021年のメタ分析は、378の独立した標本、のべ165,933人を集めて、この一文の材料を集計し直しました。

職探しの強度と結びついていたのは、面接の数(補正後の相関 .23)、就職できたかどうか(.19)、受け取った内定の数(.14)。相関は、0なら関連が無いことを、正の値は同じ向きに動く関連があることを表します。ここまでは、よく語られる話と揃います。

揃わないのはその先です。同じ要旨には、名指しの一句があります——全体としての職探しの強度は、雇用の質を予測しなかった。この号が扱うのは応募のコツではなく、動いた量がどこまで測られてきたかです。いま応募していない人も、読者から外れません。

応募・選考プロセスの実行力(Application Process)は、集めた情報を持って実際に応募し、選考の手続きを進めるところまでを指します。研究がここに当ててきた物差しは、主に職探しの強度——どれだけ多く、どれだけ頻繁に動いたかという量の指標です。結果の側は一つではありません。面接の数、就職の可否、内定の数、そして就いた仕事の質。混ざりやすいのは、ここです。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
混ざりやすいのは、動いた量と、就いた仕事の質。 Visual: ALIFE

「動けば動くほど良い仕事に近づく」と語られてきましたが、測られた範囲は、その一文より手前で止まっています。まず測られたのは、この3つです。

01面接・就職・内定とは、正の関連があった。378の独立した標本、のべ165,933人を集めた2021年の集計で、職探しの強度と結びついたのは、面接の数が .23、就職できたかどうかが .19、内定の数が .14(いずれも補正後の相関)。多数の研究を統合した値であり、集められた研究の結果が一様だったという意味ではありません。相関である以上、量が結果をもたらしたと示したものでもありません。動ける状態にある人ほど決まりやすい、という向きも切り分けられません。

02同じ要旨が、雇用の質は予測しなかったと書いている。面接の数とも、就職の可否とも、内定の数とも正の関連にあったその同じ集計で、就いた仕事の質だけは、量から予測されませんでした。たどれたのは要旨の範囲までで、質の指標の相関値も、件数も、人数もそこには載っていません。だから数値は書きません。質を高める方法が見つかったという意味でも、量と質が無関係だと確かめられたという意味でもありません。

0320年前の集計でたどれたのは、範囲までだった。2001年のメタ分析が、この領域の出発点として引かれます。ただし要旨の範囲で書けるのは、性格や動機などの先行変数と職探し行動との推定相関が、およそ −.15 から .46 に分布していたこと(楽観性を除きいずれも有意)と、職探し行動が就職と正に関連していたことの2点だけ。負の値は逆向きの関連です。個別値も件数も人数も要旨の外にあり、「20年でこう動いた」という比較は扱いません。

(仮ビジュアル)ベージュの壁の前で、黒い石の細い天板を、青いガラス・銀の金属・赤い漆という三つの異なる脚がそれぞれ支えている彫刻的なコンソールテーブル
面接・就職・内定との関連、予測されなかった質、たどれた範囲。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

ここから先で、話はよく別のものへ入れ替わります。手がかりは3つ。

01「質」を、気合いや丁寧さのことだと思っている。量ではなく質だという言い方は、2021年の集計より先に出ています。2013年の論文は、既存の理論と研究が職探しの一つの側面すなわち強度と労力=量に集中してきたと述べ、質の重要性を主張して理論を拡張すると宣言しました。ここでいう質は気合いではなく、状態を確かめながら手続きを組み立てる過程の質と、その結果の行動や産物の質です。ただし効果を測った研究ではありません。

02結果を、自分が何通送ったかだけで説明している。2001年から2002年、米国のボストンとシカゴで、新聞の求人広告1,300件超へ約5,000通の架空の履歴書が送られました。中身は同じで、無作為に割り当てたのは名前だけ——その地域で白人に多い名前と、アフリカ系に多い名前。コールバックの割合は9.65%と6.45%、差は3.20パーセントポイント〔割合どうしの引き算の単位〕。要旨はこれを、白人に多い名前は50%多く受けると書きます。差は名前の操作だけに帰せられる、と論文は書いています。

03「昔の話」だと思っている。同じ設計の実験を集めた2017年のメタ分析は——1989年以降、白人は平均してアフリカ系より36%多く〔100件に対しおよそ136件〕、ラテン系より24%多くコールバックを受けている。過去25年間、アフリカ系への採用差別の水準に変化は見られない。ラテン系にはわずかな減少の証拠。いずれも米国の実地実験の集計です。同じ設計の実験は、2005年から2016年の約90件を24か国で網羅した一覧でも、アジアは7件、日本が含まれません。だから「起きていない」ではなく「まだ確かめられていない」と書きます。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
質を気合いと読む・件数だけで説明する・昔の話だと読む。ずれは、読み方のほうに出る。 Visual: ALIFE

六つを並べ直すと、矛盾はしていません。動いた量は、面接の数とも、就職の可否とも、内定の数とも正の関連にありました。同じ集計で、就いた仕事の質は量から予測されませんでした。質という言葉の中身は2013年に提案された段階です。結果の一部は、あなたが何通送ったかとは無関係のところで決まっている——意見ではなく、測られた差です。制度の話は、この号の持ち場ではありません。

断りも置きます。全文まで読めたのは6点のうち2点で、残りは要旨の範囲まで。そこに無い数値は書きません。引いた実地実験は米国のもので、一覧も欧米に偏ります。日本の労働市場で同じことが起きているかは、確かめられていません。職探しの集計も短い期間の研究が中心で、もともと応募に時間を割ける人ほど、量を積めるという逆向きを排除できません。応募していられるかは、蓄えや家族の事情や期限が先に決めています。

量と結びついていたのは、面接・就職・内定まで。
就いた仕事の質は、予測されませんでした。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。時間と件数を並べて記録すれば良い仕事に近づく、と確かめた研究を、この号では扱っていません。ここからは、ALIFEが提案する実践の入口です。件数を増やす必要はありません。二つの数字が並べば足ります。

TRY IT TODAY

  1. 01SPLIT

    紙かメモアプリを開き、直近1週間を1日ずつ7行に分ける。

  2. 02TIME

    各行の左に、その日に応募や準備にかけた時間を分で書く。書類・募集要項・下調べの時間を含めてよい。0分の日は0と書く。

  3. 03COUNT

    右に、その日に状態が一つ動いた件数を書く。送った・返事が来た・日程が決まった、を1件と数える。7行書き終えたら、時間が長いのに0件だった日に印を1つ付ける。

7分。採点はありません。件数が増えている必要はなく、**時間が長いのに件数が0だった日のほうが、この記録の中身です。**いま応募していない場合は、直近1週間で続けている活動を1つ選び、同じ形で記録すれば成立します。**自分の記録だけで完結します。応募先へ連絡する必要はありません。**書いたものは手元に置き、読み終えたら処分してかまいません。つらさが続く・強まる場合は、この課題より先に、医療・支援の専門家へ相談してください。

応募・選考プロセスの実行力は、応募の件数につけられた名前ではありません。確かめられたのは四つ。378の独立した標本・のべ165,933人の集計で、職探しの強度が面接の数(.23)・就職の可否(.19)・内定の数(.14、補正後の相関)と正の関連にあったこと。同じ要旨が、雇用の質は予測しなかったと書いていること。質という概念は2013年に提案された段階で、効果はまだ測られていないこと。中身の同じ書類でも、名前の割り当てだけで割合が9.65%と6.45%に分かれたこと。

良い仕事に就けるとも、件数を増やせば届くとも、ここまでの研究は約束していません。——今日残るのは成果ではありません。7つの行と、かけた分数と、動いた件数。数字が二列、並ぶだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS応募・選考プロセスの実行力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。