IN EMPLOYMENT · ISSUE 094
● 12 SEC「人づてで決まった仕事はいい」。これほど広く配られてきた一文は、そう多くありません。2015年の研究は、米国の3業種9社——コールセンター、運送、技術職——の人事データで、紹介経由で入った人とそうでない人を、同じ会社の同じ職で比べました。
掲載版の要旨はこうです。紹介された応募者は採用されやすく、提示を受け入れやすい。技能の特徴は似ているのに、です。そして——紹介経由の人は、ほとんどの指標ではそうでない人と似た生産性を示した。
差が出たと書かれているのは、運送での事故の少なさ、技術職での特許の多さ、辞めにくさ、わずかに高い賃金です。「いい」の中身は、成績全体の底上げではありません。この号が扱うのは、人脈の増やし方ではなく、人づての就職が、どこまで測られてきたかのほうです。
情報収集・ネットワーク活用力(Networking)は、仕事の情報が届く経路を持ち、そこから使えるものを取り出すところまでを指します。この号が扱うのは「人づてで決まった」という報告の、効いている中身は何かの一点だけ。つながりの強さや、人と人のあいだの空白といった枠組みは扱いません。何人と会ったかではなく、そこで何が渡ったかの話です。

測られた範囲は、その一文よりずっと狭く、少し奇妙です。まず測られたのは、この3つ。
01大半の指標では、似た生産性だった。米国の3業種9社(コールセンター・運送・技術職)の人事データ。掲載版の要旨が書いているのは、ほとんどの指標では似た生産性、差が出たのはさきの四つ、まで。10〜30%辞めにくい・防げたはずの事故が12%少ない・特許を出す確率が約20%高いという割合は、同じ研究の作業論文版(2013年)の数値で、掲載版の要旨には割合の形では出てきません。観察であって、紹介が成績を作ったと示したものではありません。
02採用する側の目利きを、設計から抜いた。2016年の研究は、採用側が甘く見ているせいかもしれないという疑いを、実験で止めました。オンラインの労働市場での三つのフィールド実験で、時給3ドル以下で応募した人を、紹介の有無にかかわらず全員採用したのです。継続の仕事に再応募したのは、紹介経由の82%に対し、紹介の無い人はそれより20パーセントポイント低い(100人あたり20人ぶんの差)。履歴書から取れる属性を足しても係数はほとんど動かず、紹介が持つ情報の大半は履歴書からは見えなかったと書きます。
03効いた経路と、効かなかった経路。同じ研究は経路ごとに分けています。紹介した本人と組ませたとき、チームの設問に同じ答えを出す割合は、他人の紹介者と組ませたときより29パーセントポイント高い。一方、紹介者に見られていると伝える監視の経路では、成績にも離職にも差は検出されませんでした(明確な差とは言えなかった、の意味です)。「顔向けできないからまじめに働く」は、人づての採用でよく持ち出される説明です。実験はその条件を作って測り、差を見つけていません。

ここから先、話はよく別のものへ入れ替わります。手がかりは3つ。
01会った回数を、進み具合として数えている。2000年の研究は、米国の失業中の人が人づてで情報や助言を得ようとする行動の量を測りました。外向性と誠実性はその量と結びつき、行動への構えは性格を超えて量を予測します。ところがその量は、他の職探しの方法を考慮に入れると、失業給付を使い切ったかどうかにも、再就職の速さにも、就いた仕事の満足にも、上乗せの予測をしませんでした(明確な差とは言えなかった、の意味です)。無意味だった、という意味ではありません。残りの方法が説明していない部分を、新たに説明しなかったということです。
02星の数を、職場の像だと思っている。公開された職場の評価の集まり方を、2021年の研究が測りました。既存研究の指摘——極端な意見の人ほど穏当な意見の人より共有する動機が強く、雇い主に腹を立てている人は、同じように観察される特徴を持つ無関心な人より書き込んで感情を吐き出しやすい。自発的に書かれた評価は、報酬を伴う評価にくらべ、最低評価になる確率が1.4パーセントポイント高く、最高評価になる確率が4.3パーセントポイント高い(割合は同じ研究の作業論文版の値)。読めるのは書く動機を持った人の像であって、職場の像ではありません。
03一つの職場の結果を、一般命題にしている。「紹介を使うと、いまいる人と似た人ばかりが集まる」。証拠の向きは揃っていません。2005年の研究はある電話応対の職場を応募の前から追い、応募する前の選択、似た者どうしがつながる性質、選考する側の選択の三つすべてが、この職の性別の偏りに寄与していたと報告します。採用後の集団のデータから採用前の過程を推し量ると誤った結論になりうる、とも。ところが、人種については、同じ研究者を含むチームの2006年の研究が、この設定では、こうした要因が少数派を雇用から切り離しているという証拠は乏しいと結論しました。どちらも、一つの職場の話です。

並べ直すと、順番が見えます。成績が良いという観察から、指標を分けるとほとんどの指標では似た生産性へ、選抜を実験で止めても残ったのは再応募の差と噛み合い方だけ、へと縮んできました。この号がたどれた範囲に、逆向き——数え直したら効果がもっと広かった——という報告はありません。
ここまでの証拠は、米国の特定の業種の人事データ、オンラインの単純作業の労働市場、米国の失業者の調査から採られています。日本の労働市場を対象にした同じ設計の査読研究は、ごく少ないままです。効果は短い期間で測られたものが多く、もともと選択肢の多い人ほど、その方法を試せるという逆向きも、この範囲では排除できません。
差が出たのは、辞めにくさと、
めったに起きない出来事のほうでした。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。経路ごとに件数を数えれば良い仕事に届く、と確かめた研究はありません。ここからはALIFEが提案する実践の入口です。増やす必要はありません。
TRY IT TODAY
- 01SPLIT
紙かメモアプリに、経路を5つ書く。「公開の募集」「公開の評価や口コミ」「知っている人から直接」「その人の知り合いから」「こちらから問い合わせた」でよい。
- 02COUNT
直近3か月で仕事の情報が届いた出来事を思い出し、経路ごとに件数を数字で書く。求人でも、職場の様子でも、業界の動きでもよい。0件も0と書く。
- 03MARK
いちばん件数の多かった経路に、印を1つ付ける。どの経路を増やすかは、今日は決めない。
情報収集・ネットワーク活用力は、上手な人脈の作り方の名前ではありません。確かめられたのは四つ。紹介経由の人は、ほとんどの指標では似た生産性。全員採用で目利きを抜いても、継続の仕事への再応募は紹介経由の82%・紹介の無い人はそれより20パーセントポイント低い。紹介者本人と組ませたときの一致は29パーセントポイント高く、監視の経路には差が検出されない。人づての行動の量は、他の方法を考慮に入れると上乗せの予測をしない。良い仕事に届くとも届かないとも、ここまでの研究は約束していません。——今日残るのは、経路が5つと、それぞれの件数と、印が1つです。
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