IN STUDIES · ISSUE 061
● 12 SEC学びが続くかどうかを、ひとつの言葉で言い当てる試みは何度もありました。ここ十数年でいちばん流通したのが、長期の目標への情熱と粘り強さ——やり抜く力です。測る道具は8つの質問。2022年のメタ分析は137件の研究・156の独立した標本・のべ28万5,331人を集め、この点数と学業成績の相関を r = .19 と報告しました。
この号が扱うのは、続ける力の伸ばし方ではありません。新しい名前が、すでにあった変数に何を足したのかのほうです。見るのは一点——同じ場所に、もっと古い名前が立っていなかったか。古いほうを精度の高い物差しで先に測ったとき、新しいほうの取り分がどうなったか。学校に通っていない人も、この号の読者から外れません。
8項目の短縮版は、2009年に Journal of Personality Assessment へ出ました。項目は二つに分かれています。興味の一貫性(4項目)——長年ひとつのことに関心を保てるか。努力の粘り強さ(4項目)——うまくいかない時期でも手を動かし続けられるか。開発した側の確認的因子分析では、この二つがともに上位の一因子に載る構造が支持されたと報告されています。いずれも自分について答える質問紙で、行動の直接観察ではありません。

その8項目が、何と、どれだけ結びついてきたのか。まず測られたのは、この3本です。
01四つの標本に、別々の結果が並んだ。2009年の尺度開発論文の予測の証拠は、標本ごとに別です。成人1,554人では到達した教育年数と転職の少なさ、10代279人では評定平均と逆向きのテレビ視聴時間、士官学校の候補生1,248人では在籍の継続、綴り字の全国大会の出場者190人では勝ち上がった段階。同じ論文のなかの別標本で、ひとつの集団で四つの成果が確かめられたわけではありません。米国の4標本、やり抜く力の側は自己報告の8項目です。
02137件を統合した相関は、.19だった。2022年のメタ分析は137件の研究・156の独立した標本・のべ28万5,331人。学業成績との相関は全体で r = .19、努力の粘り強さが .21、興味の一貫性が .08。個人主義的な文化と集団主義的な文化のあいだで、この関連の差は有意ではなく、明確な差とは言えませんでした。統合値は統合値、r は相関係数であって効果量ではありません。
03包括的な尺度で先に測ると、大学の成績では残らなかった。2021年の研究は、ノルウェーの大学生1,394人で誠実性の測り方を2通り試しました。短い尺度なら双方に小さな上乗せが残ります。包括的な尺度で測ると、大学の成績への上乗せは残らず、高校の成績への上乗せは約4%。誠実性の下位側面は16〜54%とはるかに大きい(割合は関連の量で、残りの内訳は語れません)。残らなかったことは、関連が無いと確かめられたことと同じではありません。1本の研究での比較です。

ここから先で、話はよく別のものへ入れ替わります。手がかりは3つ。
01一文に並んだ四つを、一つの研究として読んでいる。設計資料には、こういう一文が載ります——「やり抜く力が、士官学校の離脱率・綴り字大会の成績・評定平均・教師の定着率を予測」。前の三つは2009年の尺度開発論文のなかの別々の標本。四つめの教師の定着だけが2014年の別の研究で、標本は154人と307人。そこで測られたのは質問紙ではなく、結果を知らされていない評価者が履歴書から7点の基準表で採点した値です。測り方も、集団も、年も別です。
02相関係数を、動かせる幅として読んでいる。.19 は相関係数であって、効果量ではありません。一緒に動く度合いと、動かしたときの動き幅は別ものです。標本を増やして安定したのは推定の精度であって、関連の強さではありません。二つの側面に分けると興味の一貫性の側は .08。にもかかわらず、名前には情熱のほうが残っています。
03点数を、続かなかったことの説明に使っている。8項目が測るのは過去数年の行動の要約であって、これから何ができるかの上限ではありません。点数を押し上げること自体を目標にする根拠も、いまのところ薄い。2017年の研究は、高校生と大学生で後の評定を予測したのは努力の粘り強さだけ、興味の一貫性は予測せず、自己調整や関与の変数のほうが強かったと報告しています(この結論は全文まで確認できていないため、報告の帰属です)。

並べた先に、決着していない論争が残っています。2018年に Educational Researcher へ出た論考は、粘り強さと長期の目標への情熱を単一の構成概念にまとめて受け入れる理由は見当たらないと書きました。教育の場で特に良い予測子だという主張にも、介入によって動かしやすいという主張にも、支持は見つからないとしています。
いっぽう2009年の尺度開発論文は、二つの下位尺度がともに上位の一因子に載る構造が支持されたと報告していました。2014年の教師の定着の研究も、推進の側にあります。同じ8項目で、開発した側と検討した側の結論が逆を向いたまま。どちらが正しいかを、この号では裁定しません。材料が足りないからです。証拠の大半は欧米の大学生と、学校に通う児童・生徒から採られていて、働きながら学ぶ大人を対象にした研究は、ごく少ない範囲です。
問われてきたのは、8つの質問の点数。
争われているのは、それを一つにまとめてよいか。
この論争は、やり抜く力を否定してはいません。批判の側が弱いとしているのは、それが新しい変数だという前提のほうです。測り方を変えただけで上乗せの大きさが変わった——というのが、この号の読み筋です(ノルウェーの大学生1,394人、1本の研究での比較)。
だとすれば手当ての向きも変わります。粘りの量を増やす方向ではなく、粘りが必要になる回数を減らす方向。成績とより強く結びついていたのが努力のほうだった、という結果は、そう読み替えられます。点数ではなく、止まった場面のほうを見に行く——次の3手は、ALIFEが提案する実践の入口です。
TRY IT TODAY
- 01LIST
半年以上続いている学びと、3か月以内にやめた学びを1つずつ、名前だけ書く。
- 02STOP
やめたほうに「何が起きて手が止まったか」を1行。書くのは出来事で、性格ではない。
- 03KEEP
続いているほうに「何があるから止まらずに済んでいるか」を1行だけ書く。
順番は、ほぼ一定でした。まず名前がついた。次に8項目の短い尺度ができ、大量に測られた。次に教育の場の標語になった。それから既存の性格の測定を統制する研究が出て、上乗せの説明力が縮んだ。最後に、二つを一つにまとめてよいのかという問いが返ってきた。逆向きにはほとんど動きません——名前が外れることは、まず起きない。
いちばん粘り強く続いたのは、当の概念ではなく、その名前のほうだった——というのが、この号の読み筋です。新しい名前を見たら最初に確かめるのは、効果の大きさではなく、その名前が指す場所にすでに別の名前が立っていないか。立っていたら、両方を同時に測った研究を探す。今日書けるのは、続いている学びが1つと、やめた学びが1つ、手が止まった場面の1行だけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUSやり抜く力を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量
- 差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
- 相関係数 r
- 2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

