IN GOVERNANCE · ISSUE 556
● 12 SEC子会社で問題が起きると、親会社がもっと締めていれば、と言われがちです。この号はグループ会社の統治を6点で確かめます。新興国の企業グループと業績を調べた実証3本(うち1本は研究を統計的に束ねたメタ分析)、グループの研究の総説1本、米国系の多国籍企業の海外子会社の調査1本、本社と子会社の関係の論文を振り返ったレビュー1本です。
先に向きを言うと、28か国の141研究を束ねた分析では、グループに属する会社は平均して業績が低く、金融や労働の市場の制度が未発達な国では、その不利が小さかったと報告されています。研究の舞台は28か国の企業グループと、インドや新興14市場の大きな企業グループです。この号は、子会社をどう管理すべきかを勧めず、数字を日本の小さなグループに当てはめることもしません。
研究のいう企業グループは、法的には独立した会社どうしが、公式・非公式のさまざまな形で結ばれた集まりです。新興国に広く見られます。2001年の研究は、グループを市場の働きの弱さや取引の費用の高さへの応答と捉え、所属は収益性を押し上げることも押し下げることもありうる、という仮説から出発しました。
2007年の総説は、グループを分類する枠組みを示し、生まれた事情と歴史の証拠に目を向けて研究を整理しました。答えは、グループは時に模範(paragons)、時に寄生者(parasites)にもなりうる、という両面です。

親会社が締めれば統べられるか、という問いに、6点は直接には答えていません。調べられたのは、グループに属することと業績の関係、そして本社が海外の子会社をどう統制しているかです。まず、業績の側から見ます。
0128か国の141研究を束ねると、所属する会社は平均して業績が低かった。2011年のメタ分析は “affiliation diminishes firm performance in general”(所属は全体として企業の業績を下げる)と書き、そのうえで、金融や労働の市場の制度が未発達な国では、所属する会社が相対的にましだったと報告しました。不利が小さくなるという話で、有利に転じるとは書いていません。業績の低さは、会社とグループの段の特定の戦略的な行動にたどれるとも述べています。
02インドの多角化グループでは、多角化の度合いに沿って業績がU字を描いた。2000年のインドの研究は、多角化した企業グループの子会社を独立した会社と比べ、会計と株式市場の業績の指標が、グループの多角化が進むとまず下がり、ある水準を超えると上がることを示しました。最も多角化したグループの子会社は、独立した会社を上回っていました。
0314の新興市場のうち12で、グループによる業績の違いが見られた。2001年の研究は、地元の資料を中心に集めたデータで14の新興市場を調べ、12の市場で業績の大まかな形にグループによる違いを見いだし、いくつかの市場では所属する会社の平均の収益性が高かったと示しました。著者は、ある文脈で得た結論が別の文脈に当てはまるとは限らない、と書いています。

業績の研究とは別に、本社が子会社をどう統制するかを調べた研究があります。問いは、子会社を本社の代理人とみて監視と報酬で動かすのか、互いに依存しあう網の一部とみるのか、です。国の実務指針も、6点の外の公的文書として並べます。
01米国系の多国籍企業の海外子会社では、相互依存の見方の方が統制をよく説明した。2000年の調査は、米国に本拠を置く多国籍企業の一次・二次データで、監視と報酬を予測する代理人の理論と、子会社間の相互依存を社会的な統制に結びつける見方を比べました。代理人の理論は有用な土台だが説明には限りがあり、 “the model based on intra-firm interdependence had much greater predictive ability”(企業内の相互依存に基づくモデルの予測力がはるかに高かった)と報告しています。
022016年のレビューは、国際経営の1誌に載った本社と子会社の論文81本を振り返った。このレビューは、1960年代の終わりから現在までにその1誌に載った81本から、研究の流れと主な接近法を整理しました。対象は1誌で、分野全体の総括ではありません。支配から相互の影響へ移ったという筋書きは、読めた要旨の中にはありません。
03国の実務指針は、分権と集権のバランスと、任せた先の見届けと人事・報酬を並べて書いた。6点の外の公的文書として、経済産業省は2019年6月28日にグループ統治の実務指針を策定しました。本体は「分権化と集権化の最適なバランス」の検討を求め、分権を進めるなら事後の業績モニタリングと、子会社の長の人事・報酬を通じた本社のコントロールも重要とし、自律と分権を掲げて放任に陥る例への指摘も記しています。取組を一律に要請するものではない、とも書いています。

業績の研究3本の舞台は、インド、14の新興市場、28か国の企業グループで、どれも所属と業績の結びつきを見た観察の研究です。グループに入ったから業績が変わった、とまでは言えません。統制の調査は米国系の多国籍企業です。日本の小さなグループ(支店や兄弟会社を持つ家業など)で、統制のしかたと成果の関係を調べたものは、読めた範囲にありません。
全文まで読めたのは6点のうち0点で、6点はすべて公式の要旨までです。読めていないものについては書きません。6点の外の指針だけは本体まで読みました。この号は、子会社の管理のしかたを勧めず、指針の解釈や個別の判断もしません。
28か国の141研究を束ねると、
グループに属する会社は、平均で業績が低かった。
不利が小さかったのは、
市場の制度が未発達な国。
舞台は、28か国と新興国の大企業だった。
シラバス側は、グループの効果を文脈しだいとまとめ、同じ形が追い風にも向かい風にもなると書きますが、28か国を束ねた分析の全体の向きは不利の側で、文脈が変えたのは不利の大きさでした。両方向の話は、インドのU字と14市場の違いに限られます。また指針を、締めつけでなく自律を織り込んだ設計を促す、と要約しますが、本体は分権と集権のバランスと、分権した場合の本社の見届けと人事・報酬による統制を並べて書いています。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付と、自分が関わる「もう一つの会社」や拠点を一つ書く(任せている店、別の事業、業務委託先など)。そことの距離(場所、事業の違い、情報の届きにくさ)も一行で書く。
- 02LOG
そこに、いま何を任せ、何を報告してもらい、どこで手を貸しているかを、分かる範囲で書き出す。
- 03SORT
書いたそれぞれを「任せている」「報告の筋がある」「手を貸している」「線引きが曖昧」のどれかに分ける。締めるか緩めるかは決めない。
この号が運べたのは三段です。28か国を束ねた分析では、グループに属する会社は平均して業績が低く、制度が未発達な国ではその不利が小さかったこと。インドでは多角化の度合いでU字、14市場のうち12でグループによる違いがあり、米国系の多国籍企業の子会社は相互依存の見方でよく説明できたこと。そして、6点の外の国の指針は、分権と集権のバランスと、任せた先の業績の見届けと人事・報酬による統制を並べていること。
次の号は、危機対応の指揮系統を作るにはどうすればよいのか、を見ていきます。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「グループ会社を統治するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

