IN GOVERNANCE · ISSUE 554
● 12 SEC「規則は多いほど抜けがなく、安全になる」。この号はこの思い込みを6点で確かめます。理論の論文2本、概念と測り方を見直した総説1本、そして調査・調査実験・尺度づくりの実証3本です。舞台はどれも公共部門で、米国の州の管理者、市の職員、政府の職員が調べられています。
先に向きを言うと、6点が問うたのは規則が書かれて整っているかではなく、手間に見合う働きがあるかという見え方です。規則を減らした組織で何が起きたかを測ったものは、6点の中にありません。この号は、規則の減らし方も残し方も勧めません。役所の研究を、日本の小さな店や事務所に当てはめることもしません。
レッドテープは、英語で役所の煩雑な手続きを指す言い回しです。1993年の理論論文は、この語が重く見られながら理論が乏しいと述べ、その起源を理論化しました。レッドテープは “red tape is best viewed as pathological”(病理と見るのがよい)とし、規則が書かれて整っている度合い(形式化)は組織の中立の性質としています。
同じ論文は、初めから働かない規則と、はじめは役に立っていたのに赤に変わった規則を分けました。2002年の総説は、この概念が今も “the concept of red tape continues to be confounded with formalization”(形式化と混同され続けている)と指摘し、いくつかの測り方が別の概念として測れているかを、因子分析などで確かめました。

2002年の総説は、測り方どうしが収束と弁別の妥当性を示したと報告しつつ、尺度づくりにはまだ多くの仕事が残ると書いています。「規則が多い」と「規則が働かない」を分ける、その区別の上に、次の実証3本が乗ります。負担と働きの欠如を2本の軸で測る尺度を作ったのは、2016年の研究です。
01州の保健福祉機関の管理者では、人事のレッドテープの知覚が心離れと結びついていた。2005年の研究は、米国の州の管理者の調査(回収率約53%)で、人事の規則を無意味で重いと感じるほど、組織への愛着・職務への関与・満足が低いことを、すべてのモデルで報告しました。一方、形式化は “a mitigating, not exacerbating, influence”(悪化でなく和らげる側)でした。調査の結びつきで、因果は測っていません。
0281人の調査実験では、規則の負担と結果の損得が、同じくらい知覚を動かした。2014年の研究は、手続きの負担と、その結果が自分に好ましいかを変えて見せ、レッドテープと感じる度合いが “affected in equal measure by rule burden and outcome”(負担と結果に同程度に左右される)と示しました。結果の側だけが効いたのではありません。参加者の属性は要旨に書かれていません。
03政府職員1,203人のデータで、負担と働きの欠如の二次元の尺度が確かめられた。2016年の研究は、政府職員への聞き取りから作った質問を1,203人のデータで確かめ、遵守の負担と機能の欠如の2本の軸で、組織全体ではなく自分の仕事で感じるレッドテープを測る尺度が、信頼でき妥当だと報告しました。要旨に標本の国は書かれていません。

2009年の理論論文は、赤の反対側、効く規則をグリーンテープと名づけて概念化しました。規則が効く確率は “(1) written requirements, (2) with valid means-ends relationships, which (3) employ optimal control, (4) are consistently applied, and that have (5) purposes understood by stakeholders” がそろうことにかかる、と論じています。市の職員の調査が、理論の構築と検証のデータです。
01書かれていて、手段が目的に見合っている。一つめは規則が文書になっていること、二つめは、求める手段と目指す目的の関係が妥当であることです。「目的とつながっている」よりも、手段がその目的に本当に届くかに焦点があります。
02統制が過不足なく、一貫して適用される。三つめは、縛り方が緩すぎず厳しすぎないこと、四つめは、人や場面によってぶれずに当てはめられることです。理論は五つがそろっていることを条件にしており、一つだけで効くとは書いていません。
03目的が、関係者に理解されている。五つめは、文面が読みやすいことではなく、規則の目的を関わる人が理解していることです。論文は、効く規則の設計と運用に、技術的な熟達と関係者の協力の両方を強調しています。

6点の舞台は公共部門です。2005年は米国の州の管理者、2009年は市の職員、2016年は政府職員で、2014年の81人の属性と各研究の国は、要旨の範囲では多くが分かりません。2005年は調査の結びつき、2014年は短い実験です。規則を減らした組織で心離れが減ったかや、日本の小さな組織を調べたものは、読めた範囲にありません。
全文まで読めたのは6点のうち0点で、6点とも公式の要旨まで読みました。読めていないものについては書きません。この号は、どの規則を減らすべきかを書きません。
公共部門の研究が問うたのは、
規則の数ではなく、
手間に見合う働きがあるかという見え方。
州の管理者の調査では、
書かれた規則は心離れを和らげる側にあった。
シラバス側は、2002年の総説が「負担があるかと機能しているかを分けて捉える必要を示した」と書きますが、原典の論点は形式化との混同と測り方の妥当性で、負担と機能を2本の軸に分けたのは2016年の研究です。また、2014年の研究を結果の側だけで書きますが、原典は負担と結果が同程度に効くと報告しています。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付と、自分が関わる規則や手順を一つ(経費の手順、発注の取り決めなど)を一行で書く。
- 02LOG
その規則について、手段が目的に見合っているか、人や場面でぶれずに当てはめられているか、目的を関わる人が知っているかを、分かる範囲で書く。
- 03SORT
三つそれぞれを「そう思う」「そう思わない」「分からない」に分ける。残すか、直すか、やめるかは決めない。
この号が運べたのは三つです。理論はレッドテープを病理、形式化を中立と分け、総説はその混同を指摘したこと。州の管理者の調査では無意味に感じる手間が心離れと結びつき、書かれた規則は和らげる側にあり、81人の実験では負担と結果の損得が同程度に効いたこと。そして効く規則には、五つの条件がそろうことが要ると理論が論じたことです。どれも役所の研究です。
次の号は、現場が自ら律するにはどうすればよいのか、を見ていきます。
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