IN DATA · ISSUE 530
● 12 SEC「散らばった数字を一箇所に集めれば、使えるようになる」。そう考えがちです。この号は、データを集めることと、それが会社の業績の価値につながることの間を、論文6点で確かめます。1点は企業の研究を束ねたメタ分析、4点は企業への質問紙の調査、1点は価値の枠組みを提案した概念論文です。
先に向きを言うと、企業レベルの研究125本を束ねた分析では、人材・経営の力・組織文化の要因のほうが、技術面より業績価値との結びつきが大きく出ました。中国の担当者の調査では、データを扱う力がやり方の組み替えを通しても業績と結びつき、米国の調査では戦略との噛み合わせがその結びつきの強さを変えていました。この号は、この結果を日本の小さな店に当てはめることも、データの置き場所や道具を勧めることもしません。
データ統合は、売上表・顧客名簿・在庫の記録のように別々の場所にある数字を、まとめて見られるようにすることです。ためておく倉庫はデータウェアハウスと呼ばれます。この号の研究の多くは、ビッグデータ分析(大量のデータを集めて分析する取り組み)という言葉で、集めた数字が会社の成績とどう結びつくかを調べています。

2018年の概念論文は、ビッグデータ分析の価値を部品に分け、情報技術の価値の枠組みを広げて整理することを提案しました。実証ではなく、研究の地図です。2022年のメタ分析はその先で、題名そのものが問いの形をとります。“What translates big data into business value?”(ビッグデータを業績の価値に変えるものは何か)。
01企業の研究125本を束ねると、人と組織の要因の結びつきが大きかった。2022年のメタ分析(多くの研究の結果を統計的に束ねる方法)は、26か国・10年分の企業レベルの研究125本をまとめ、人材・経営の力・組織文化といった社会的な要因のほうが業績価値との結びつきが大きく、技術面の役割は小さかったと報告しました。読めたのは抄録までで、標本の総数と効果の大きさは確かめていません。
02中国の調査では、データを扱う力が、やり方の組み替えを通しても業績と結びついた。2017年の調査は、ビッグデータ分析の経験がある中国の IT 管理者とビジネスアナリスト297人にオンラインで尋ねました。データを扱う力は業績と直接に結びつくとともに、業務のやり方を組み替える力(動的能力)を通した間接の結びつきも見られた、と報告しています。
03米国の調査では、分析の力と戦略の噛み合わせが、結びつきの強さを変えていた。2016年の調査は、専門家への2回の意見聴取(デルファイ法)で分析の力の中身を整理し、米国のビジネスアナリスト152人にオンラインで尋ねました。分析の力と事業の戦略の噛み合わせが、分析の力と業績の結びつきの強さを変えていた(調整していた)と報告しています。2017年の調査とは著者が重なる、別の標本の研究です。

以下の三つは、集めたデータが価値につながる手前で、研究が見た条件です。いずれも製造業や中・大企業の担当者の回答で、小さな店で同じになるかは確かめていません。
01デンマークの製造業787社の調査は、組織の問題を主に見るよう勧めた。2013年の研究は、マスターデータ(顧客や商品など社内の多くの仕事が共通に使う基本の情報)の品質を妨げる障壁を文献から12に分け、787社への質問紙で重要さを比べました。抄録は “giving primary focus to organizational issues rather than perceiving poor data quality as an IT problem”(品質の悪さを IT の問題と見るより、組織の問題を主に見る)を勧めています。
02フランスの調査では、業界の売上が伸びる環境ほど結びつきが強かった。2019年の調査は、フランスの中・大企業200社(主に最高情報責任者が回答)のうち、ビッグデータ分析を使う38%の会社で、分析の価値と財務・市場・顧客満足の業績の結びつきを見ました。“this relationship is stronger in munificent environments”(この関係は恵まれた環境で強い)と書き、市場の変動の激しさでは変わりませんでした。
03会社の大小で壁の重さが違うかも調べられたが、その中身は抄録に無い。同じ2013年の研究は、障壁の重要さが小・中・大の会社でどう違うかも調べた、と抄録に書きます。どの障壁が小さな会社で重かったかは、この号が読めた範囲には無く、書きません。対象が製造業とマスターデータに限られることも、研究自身の断りです。

三つの調査はいずれも一時点の質問紙です。2017年の調査は限界として、横断のデータであることに加え “we adopted perceptual performance measures”(業績は回答者の知覚による尺度を使った)と自ら書きます。フランスの調査は逆向きの因果に統計的な手当てをしたと書きますが、実験ではありません。この号は「結びついていた」と書き、「効いた」とは書きません。
回答したのは中国・米国・フランス・デンマークの IT 管理者・アナリスト・情報責任者などで、日本の小さな店で店主が自分の数字をまとめる場面を調べたものは、読めた範囲にありません。全文まで読めたのは6点のうち3点で、読めていないものについては書きません。
企業の研究125本では、
技術面より人と組織の要因が、
業績価値と大きく結びついていた。
シラバス側はこの単位を「箱に入れること自体は価値でない。距離を埋めるのは能力・戦略・組織で、統合を阻むのも組織」と置きます。6点が支えるのは、束ねた研究で人と組織の要因が、二つの調査でやり方の組み替えが結びつきを取り持ち、戦略との噛み合わせが結びつきの強さを変え、製造業の調査が障壁を組織の問題として見るよう勧めたところまでです。「距離を埋める」は編集側の読み筋です。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付と、いちばん大事にしたい自分の数字を一つ書く。決まっていなければ、毎週見ている数字を一つ。
- 02LOG
その数字を出すためにつなぐデータを二つか三つ、「〔この数字〕を見るには〔このデータ〕と〔このデータ〕」の形で書く。各データに、いまある場所(どの表・どのソフト・誰の手元)を添える。
- 03SORT
各データに、正しさに責任を持つ人と、「技術の問題が大きそう」「人の協力の問題が大きそう」「まだ分からない」の印をつけ、それぞれの数を数える。道具の良し悪しは書かない。
この号が運べたのは三段です。企業の研究125本を束ねた分析では、人材・経営の力・組織文化の要因が技術面より業績価値と大きく結びついていたこと。中国の調査では、データを扱う力がやり方の組み替えを通しても業績と結びつき、米国の調査では戦略との噛み合わせがその結びつきの強さを変えていたこと。製造業787社の調査が、障壁を組織の問題として見るよう勧めたこと。
いずれも海外の企業の研究と調査で、集めれば価値が出るとも出ないとも、確かめたものではありません。次の号は、集めた数字がそもそも信じられる質なのかを見にいきます。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「データを一箇所に集めるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

