IN SALES · ISSUE 378

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

案件を段階で並べた一覧を最新に保ち、確度を見直せば、売上は読めて、伸びる——そう教わります。表がびっしり埋まっているほど、掴めている気がします。

この号が見るのは、その数字がどこから来たかです。先に断ると、決まる手順は書きません。一覧を管理すること自体の効き目を試した研究も、読めた範囲にはありませんでした。運べるのは、道具を入れた現場で何が起きたと報告されたか、そして一つの数字を握ると何が起きると論じられてきたか、だけです。

パイプラインとは、見込みの案件を『初回接触/提案/最終交渉』のような段階(ステージ)へ振り分けて並べた一覧のことです。各行には『確度70%』のような見込みが添えられ、それを足し上げて今月の読みにします。パイプライン管理は、この一覧を最新に保ち、案件を次の段へ動かし、確度を見直す作業を指します。営業支援の道具(SFA・CRM=案件や顧客の記録を貯めるソフト)は、その一覧を回す器です。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
埋まった一覧を眺めるほど、掴めている気がする。だが各行を置いたのは、自分である。 Visual: ALIFE

ここで見るのは器の善し悪しではなく、各行の数字がどこから来たかです。『提案』と『最終交渉』の境目に標準はなく、同じ案件が、慎重な人の表では『提案』に、強気な人の表では『最終交渉』に置かれます。段の名前が同じでも、数えているものが違う。『70%』の根拠も、実績か、印象か、願望か——置いた本人にしか分かりません。

ただし、読めた層はそろっていません。この号が引いた6点のうち、全文まで読めたのは2点。残りは要旨か題名までで、読めていないものについては、そこに書かれていること以上を書きません。

01半年後に、欠勤と離職が増えていた。2002年の調査。営業支援の自動化を入れた2社の販売員454人に尋ねると、研修の直後の評価は良く、半年後には“the technology had been widely rejected”(その技術は広く拒まれていた)、欠勤と自発的な離職が有意に増えていたと報告されました。組織への愛着や仕事の満足の評価も、両社で下がっています。道具を割り付けた実験ではありません。

02効いたのは、道具より使い方の側だった。2007年の現場調査。関係づくりの作業が、顧客との関係構築の成績のばらつきの57%を説明したと報告されました。道具で情報を分析する、あるいは伝えるという使い方は、その成績へ媒介を通した正の効果を示します。2008年の別の調査の要旨にあるのも、正の経路だけです。いずれも統計モデルで筋道を推定したもので、割り付けの実験ではありません。

03分析に使うほど、事務の側は下がっていた。同じ2007年の調査は、裏返しも報告しています。情報を分析する使い方は、顧客との関係構築にはプラスでも、事務の成績には負の影響を持つ——“creating an unexpected trade-off”(予期せぬ二律背反を生む)、と。この負の側を報告しているのは、2008年の調査ではなく、こちらの調査です。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル
まず報告されたのは、この3つ。半年後の離職・使い方の側・思わぬ裏返し。 Visual: ALIFE

自分の案件表がどちら側にいるか。手がかりは、埋まり具合よりも、各行の置き方のほうにあります。

01段の名前だけが、そろっている。『提案』の次を『最終交渉』と呼ぶか『詰め』と呼ぶかは、会社によっても人によっても違います。同じ案件が別の段に置かれるなら、段ごとの件数は比べられません。段の切り方と成果の関係を測った研究は、この号が読めた範囲にはありませんでした。

02確度の根拠を、言葉にできない。『70%』が、過去の同種案件の実績から出た数字なのか、相手の一言から受けた印象なのか、今月の目標からの逆算なのか。言葉にできない行は、申告のまま合計に混ざります。そしてその合計が、次の号で扱う予測の材料になります。

03分析に時間をかけるほど、手元が滞る。2007年の現場調査で、情報を分析する使い方は、事務の成績には負の影響と結びついていました。ただし測られたのは営業組織の販売員で、一人で案件を追う商いではありません。向きが同じでも、当てはめは外挿です。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
滞りは、表の埋まり具合ではなく、各行の置き方のほうに現れる。 Visual: ALIFE

古くから論じられてきたことがあります。1976年の論考(1979年に学術誌へ刊行)は、定量的な社会指標は意思決定に使われるほど汚染と歪曲の圧力にさらされる、と述べました。ただし著者自身が、そこで挙げた根拠を“predominantly anecdotal”(主として逸話的)と断っています。1991年の論文のほうは、測れる一次元だけに評価や報酬を紐づけると測れない次元の努力が犠牲になる、と示した契約理論のモデルで、営業の実データではありません。

標本も限られます。読めたのは、自動化を入れた2社の販売員454人と、業種の印字がない現場調査と、“Results in a pharmaceutical sales setting”(製薬営業の場での結果)と書かれた1点。現場と管理層で評価が違うと題した2005年の報告について、この号が読めたのは題名と書誌までで、誰を何人調べたかは分かっていません。一人で案件を追う商いや、紙の帳面で回す商いは、ここに入っていません。

合計が申告なのは、
各行が申告だからである。

では何ができるか。効く管理の形を教える材料は、この号にはありません。できるのは、自分の案件表の一行について、その確度をどこから置いたかを、後から見えるように書き残しておくことだけです。相手に確かめに行く必要はありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    自分の案件表(無ければ頭の中の見込み一覧)から一件選び、今日の日付と一緒に書く。

  2. 02SORT

    その案件のステージ名と、自分が付けている確度を書き写す。言葉のままでもよい。

  3. 03NOTE

    確度の根拠を、実績・印象・願望・なんとなくの四つから一語で選んで添える。

10分。相手に確かめに行ったり、案件を動かしたりする課題ではなく、手元の一行の棚卸しだけで完結します。これは研究が示した手順ではなく、数えるものを件数から「その数字の出どころ」へ変えてみるために、ALIFEが提案する記録の入口です。

道具が無駄だ、という話ではありません。読めた範囲で言えるのは三つです。自動化を入れた2社では、半年後に欠勤と自発的な離職が増えていたこと。効き目が見えたのは道具そのものではなく、使い方を通した経路だったこと。そして同じ調査が、分析に使うほど事務の側は下がるという裏返しも報告していたこと。指標が歪むという古い二つの議論は、逸話とモデルの上に立っています。残るのは、その数字を作ったのは誰か、という一点です。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「パイプラインを管理するには?」を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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