IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 306
● 12 SEC一度にいくつ仕入れるかは、式で出せる。在庫の話には、たいていこの一本が出ます。EOQ——経済的発注量。教科書では √(2DS/H) と書かれ、Dは需要、Sは一回あたりの設定費(量によらない発注・段取りの費用)、Hは在庫維持費です。
原典は、1913年に Factory という実務誌へ出た2ページの記事で、査読誌ではありません。読んだのは、1990年に Operations Research が原文のまま復刻した版です——在庫への負担を10%とすれば利息と減価の両方をまかなうのに妥当だろう、とここでは仮定する。実際には、その倍が妥当な場合も多いだろう。
但し書きは、それだけではありません。冒頭近くには、ただの数式に全面的に頼るべきだと主張しているとは受け取られたくない、一件ごとに訓練された判断を要し、それに代わるものはない、とも。厳密さを最初に断ったのは、式を作った本人でした。
EOQが答えるのは一つの問いだけです。繰り返し使う品物を一度にどれだけまとめれば、費用の合計がいちばん小さくなるか。原典は、寝ている資本の利息が量の上限を、段取りの費用が下限を決める、と書きます。その谷が最適量だ、というのがEOQです。
単位を先に書きます。1件は、一つの品目の一回の発注量。会社の1社でも、在庫の総額でもありません。実測ではなく数式のモデルで、読んだ3本に標本も対照群も無作為な割り付けもありません。「この式を使えば在庫が減る」とも「切らさなくなる」とも書きません。
原典の式は、教科書の形とも違います。版面にあるのは √(240MS/C)。Mは月の使用量、Sは設定費、Cは単価。240は、10%の逆数の10と、平均在庫が発注量の半分であることの2と、12か月の12を掛けた数——仮に置いた10%が定数に畳み込まれているというのが、この号の読み筋です。

では、その版面には何が印字されていたのか。まず開いたのは、この3本でした。
011913年の2ページの原典は、10%も単価一定も著者が仮に置いたと書いている。読んだのは1990年の復刻版の全文で、1913年の初出には当たっていません。版面には、10%は「ここでは仮定する」、単価の10セントは一定と仮定するから含めない、引き取りは規則的でないのがたいていだが補正であてがえる、とあります。例も版面に——月1,000個・設定費2ドル・単価10セントで、経済的な量は2,190個、費用は1個あたり約0.188セント。観察値ではありません。
021990年の史料論文は、原典が広く配られながら1988年まで見過ごされた経緯を追う。復刻された原典のすぐ前に置かれた、査読誌の史料論文です。冒頭の逐語——元の論文は広く行きわたっていたにもかかわらず、1988年に再発見されるまで、どうやら長年にわたって気づかれずにいた。当時の実務誌の読者は1万人。史料の論文であって、実測ではありません。
032014年の概観は219本を集めたが、図の15行の先頭は拡張ではなく基本モデル。査読誌の概観で、読んだのは著者稿の全文。刊行版の頁とは照合していません。219本は、1913年から2012年の査読誌から選ばれた論文の本数で、式の種類の数でも拡張の数でもありません。歴史の図の「文献の焦点」欄はちょうど15行、先頭は「EOQ基本モデル 1913」——拡張は14です。分類の枠組みは別の図で、確定的・確率的・ファジィの3系統。

版面は動きません。動くのは、要約されて手渡されていく途中のほうです。落ちやすいのは3か所。
01「在庫維持費は10%」を相場と読むと、著者が仮に置いた数字だと落ちる。原典の一文は、そこで切れていません。「ここでは仮定する」も「倍が妥当な場合も多い」も、同じ段落にあります。この数字は式の外側にあるのでもなく、版面の式の240に畳み込まれています。20%と置けば240は120になり、最適量は約0.7倍——原典の計算ではなく、式から辿った読み筋です。谷の底の平らさも同じ場所で落ちます。先の例では、量が1,000から5,000まで動いても追加は約0.05セント。ただし原典は同じ段落で、与えられた値についてはそうだが、普遍的に真ではないと断ります。
02「219本を15の拡張に整理」と読むと、15行の先頭が原典そのものだと落ちる。図の「文献の焦点」欄は、たしかにちょうど15行。ただし1行目は「EOQ基本モデル 1913」で、拡張ではなく原典そのもの。数えるなら、拡張は14。図の説明は、側面と仮定に照らした歴史的な変遷であって、219本を15に仕分けた表ではありません。紛らわしい「15」が、もう一つあります。1990年の史料論文が引くのは、1928年に12人の書き手による15のEOQの式が数えられた記録。
03「出どころはもう分かっている」と読むと、取り違えが今も残ることが落ちる。出どころは1931年に一度は特定されています。それでも1934年の手引書は、段取りと在庫投資の利息を合わせた1単位あたりの費用が最小になる一般式を、1922年に別の書き手が最初に示した、と記します。その手引書は1940年までに10刷。ヨーロッパでは「キャンプの式」、別の系統では「ウィルソンの式」。2014年には同じ査読誌の155巻が百年の特集号を組み、12〜15頁と1〜7頁に、よく似た題の稿が二つ。この2本に当たれたのは書誌までで、中身には触れていません。

材料の射程を書きます。全文まで読めたのは、9点のうち3点。読めていないものについては書きません。実測の標本は、どこにもありません。原典の数字は式に値を入れて計算した費用で、しかも特定の部品の特定の条件のもの。あなたの品目の最適量ではありません。
量を外したときの損は左右で違い、小さすぎる側のほうがずっと大きい、とも。月1,230個の連結部品の例では、正しい量6,850個のところを2,200個で通すと元の原価の約2%、10,000個なら約0.25%の余計な費用。一定需要の前提を最初に外した1958年の論文にも、教科書2点にも、書誌までしか当たっていません。いくつ持て、とも、EOQを使え・使うな、とも書きません。
ここに示した方法は厳密に正確ではない、と
二ページの記事の最後に印字されている。
だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。原典が書いたのは、入口に何をいくらと仮に置いたか、まで。計算しません。仕入先も同僚も評価しません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
紙かメモアプリを開く。繰り返し仕入れている、あるいは補充している品目を一つだけ書き出す。仕入先の名前は書きません。
- 02WRITE
それを一度にどれだけ持つかを、どう決めているか一行で書く。「箱で買う」「無くなりかけたら足す」「決まっていない」——どれでも。
- 03LIST
最後に、その決め方が置いている前提を並べる。使う量は一定か。値引きを当てにしているか。日数を見込んでいるか。分からなければ「分からない」と。
平方根の記号がつくと、答えは客観に見えます。皮肉なのは、その式をいちばん慎重に扱っていたのが、式を作った本人だったことのほうです。確かめられたのは四つ。原型は1913年の実務誌の2ページの記事で査読誌ではないこと。10%は「ここでは仮定する」と書かれ、式の定数240に畳み込まれていたこと。
谷の底は平らだが、原典が同じ段落で、与えられた値については真だが普遍的に真ではないと断っていたこと。2014年の概観の219本の、図の15行の先頭は基本モデルそのものだったこと。版面は残ります。残らないのは、その数字だけを但し書きを置いて持ち歩けるという部分です。今日残せるのは、品目が一つ、決め方の一行、前提の並び。記録が三つ、残るだけです。
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