IN RESEARCH & DEVELOPMENT · ISSUE 298
● 12 SEC「これがうちの強みだ」という一文には、たいてい学術の匂いがついています。この号が見るのは、その言い方の出どころに何が書いてあるか、のほうです。扱うのは8点の資料で、企業名も人名も書きません。
出どころはたどれます。1990年5–6月号の、ある経営の実務誌に載った記事です。査読誌ではありません。その媒体の発行元自身が、投稿者向けの案内にこう書いています——学術誌とは異なり、我々の過程には、論文を正式に受理する時点も、掲載を保証する時点も存在しない。
「だから間違っている」という話ではありません。手続きを通っていない、という事実だけです。記事のほうは二つの企業の対比から始まり、こう書きます——中核の能力とは、組織のなかの集団的な学習であり、とりわけ、多様な生産の技能を束ね、複数の技術の流れを統合する力である。
同じ考えは、学術の側で「資源を土台に企業の優位を説明する見方」として組み立て直され、実証研究にかけられました。その支持の度合いを数え上げた論文が、2007年に Strategic Management Journal 28(2) へ出ています。ただし、この号が読めたのは要旨までです。だから、支持の度合いを表す数字は書きません。
要旨はこう書いています——この見方は全体としては控えめな支持しか得ておらず、その支持は、用いられた独立変数と理論的な立場によってかなり大きく変わる。独立変数とは、原因の側に置いた項目のこと。何を強みの代わりに測ったかで、支持されるかどうかが動く、ということです。

ここまでなら、値切りの話に見えます。ところが、この見方が学術の内側でどう扱われたかを見ると、話は込み入ります。批判と応答と再応答が、一つの号に並んでいるからです。
012001年の *Academy of Management Review* 26巻1号の22-40ページに、批判が載った。この見方は理論としての構造をまだ備えていない、と。批判の側の要旨は、提唱者たちが製品市場の安定を仮定し、資源の価値を決めることを避けてきたと述べ、静的な扱いは因果をブラックボックスに押し込めている、と続きます。
02同じ号の41-56ページに、提唱者側の応答が載った。表題の末尾には肯定の一語が付いている。応答の要旨は、批判の一つひとつを検討したうえでこう書きます——〔批判側〕による、私の1991年の論文への直接の批判は、根拠がない。〔人名は伏せました。〕ただし同じ要旨は、それらの批判がこの種の研究に必要な条件を思い出させるものではある、とも続けています。
03同じ号の57ページからは、批判側の再応答が載った。資源の価値がこの見方の外側で決まる点では、両者は一致している。再応答の要旨はこうです——我々は〔提唱者側〕の反論に反論し、この見方が同語反復であることを改めて述べる。……資源の価値がこの見方の外側で決まるという我々の主張(そして〔提唱者側〕の同意)がもたらすものを検討する。〔同語反復=言い換えで中身の主張になっていない、という指摘。人名は伏せました。〕学術誌の応答は、たいてい何年も後の別の号に出ます。

2010年に Journal of Management 36(1) へ出た総説は、この見方への主な批判を8つに分類しました。要旨によれば、そのうち5つは、変数・境界・適用範囲が十分に定められているかぎり核心の主張が耐えうる。残る3つは容易には退けられないとされ、それらは、この見方の基本となる二つの概念——資源と価値——が定まらないことと、企業の競争上の優位についての狭い捉え方から生じている、と続きます。
残った3つのうち2つは、枠組みの土台にある語そのものです。何が資源で何に価値があるのかが定まらなければ、「これがうちの強みだ」という一文は、あとからどうとでも書けます。
01「見きわめれば強くなる。学術的にも確立している」——起点の記事は査読を通っておらず、学術版の要旨も控えめな支持と書いている。起点は1990年の実務誌の記事で、発行元自身が、学術誌とは手続きが違うと書いています。学術版について2007年の論文の要旨が書いたのは、支持は全体として控えめであることと、その支持が独立変数と理論的な立場でかなり変わること、の2点でした。「確立している」でも「間違っている」でもありません。
02「支持された割合は◯%と分かっている」——この号は要旨までしか読めていないので、その種の数字を書いていない。結果の細目には届いていません。だから割合の数字も、その分母が何を数えたものなのかも書きません。割合を見かけたら、分母が何の数え上げなのかを確かめてください。割合と、効果の大きさは、別のものです。
03「手慣れていることを守り続ければよい」——1992年の20件の事例研究は、逆向きの報告をしている。1992年に Strategic Management Journal 13(S1) へ出た論文は、5社で各4件、計20件の新製品・新工程の開発案件を事例研究し、伝統的な中核の能力には革新を妨げる裏面があり、それを中核の硬直と呼ぶ、と書きました。過去に会社の役に立ち、いまも一部の案件にはふさわしいかもしれない価値観・技能・管理の仕組み・技術の仕組みが、別の人々にはふさわしくない知識の組として経験される。別の能力が硬直なのではありません。

この号の射程を書きます。全文まで読めたのは8点のうち3点で、残る5点は要旨までです。だから、支持の割合も、8分類の中身も書いていません。20件の事例研究は質的な調査であって、無作為に割り付けた実験ではありません。要旨まで読めた5点にも、割り付けの記述はありません。「こうすれば強くなる」を実験で確かめた資料は、この号が読んだ範囲に1点もありません。
渡さないものも書きます。強みの伸ばし方も、どの技術に賭けるべきかも書きません。そして「強み」という語は、結果を見たあとで貼られます。うまくいった組織が持っていたものはあとから強みと呼ばれ、うまくいかなかった組織が持っていた同じ種類のものは、たいてい何とも呼ばれない。資源と価値が定まらないという2010年の指摘はここに立っている——というのが、この号の読み筋です。
中核の硬直は、中核の能力の裏面である。
——1992年、5社で各4件、計20件の事例研究。
だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。20件の事例研究が調べたのは、開発の案件のなかで能力がどう働き、どう妨げたかです。あなたが今日5つ書き出したとき何が起きるかを確かめた資料は、ありません。ここからは、ALIFEが提案する記録の入口です。
TRY IT TODAY
- 01LIST
紙かメモアプリに今日の日付を書き、自分(または自分の持ち場)が「これは手慣れている」と言えることを**5つ**書き出す。道具の扱い、調べ方、書式、段取り——手が覚えているもので足ります。他の人のことは書きません。
- 02DATE
それぞれの右に、**いつからか**をおおよその年で書く。正確でなくてよく、思い出せなければ「不明」で足ります。
- 03MARK
**5年前から中身が変わっていないもの**に印を付け、いちど上から見返す。印が多くても少なくても、それ自体は良くも悪くもありません。
この枠組みがいちばんよく効いたのは、たぶん組織の内側ではありませんでした。学術の側は20年かけて、支持は控えめだと書き、批判を8つに分け、3つは片づかないと整理し、能力と硬直が同じものだと示しました。外へ出たのは、そのどれでもなく、見きわめよ、という動詞だけです。見きわめた結果が5年前と一字も変わらないなら、それは見きわめたのではなく、そのままにしてあるだけかもしれません。
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