IN RECRUITING · ISSUE 229
● 12 SEC応募が増える。増えた分の「質」も上がる。採用の話では、この二つが続けて置かれます。この号が見るのは正否ではなく、その「質」がどう数字になったのか、です。よく引かれる2004年の研究で、質は平均成績、職務経験の年数、そして——“Perceived applicant pool quality was measured with a three-item scale”(知覚された応募者プールの質は、3項目の尺度で測られた)。3つの質問への答え、つまり採用担当者の印象です。
記録から取れたのは前の二つ。ただし大学のデータベースから取れたのは99社のうち65社ぶんでした——“for 65 of the 99 companies”。表の注も、その二つを含む相関だけは65、ほかは99。99社ぶんそろっていたのは、3つの質問への答えのほうです。
採用認知・パイプライン創出力(talent pipeline)とは、人が集まる状態をあらかじめ作っておく力。この号が扱うのは、その手の「効いた」が何で測られているか、の一点。どの媒体を使うべきかは扱いません。
数えている1件は、1社の応募者プールか、学生1人と企業1社の組み合わせ。数える場所も、応募から面接の手前までに寄っています。
全文まで読めた2本は横断的な調査で、採用の手を無作為に割り付けた記述はありません。「無作為」が出るのは2箇所——2004年は質問紙に並べる企業の順番、2007年はどの5社に答えるかの割り当て(評定者は1社あたり15〜25名)。抄録の4本のうち1本は自ら「実験」と書きますが、割り付けの手続きは抄録の範囲にありません。書けるのは「関連していた」と「何で数えたか」までです。

では、その数はどう作られていたのか。まず開いたのは、この3本でした。
012004年の標本は、大学に採用へ来た99社。回収率43%。到達したのはリポジトリの著者版の本文全文。分母は登録232社(検算 99÷232=42.67%、原典の表記は43%)。参加と不参加で、従業員数(t=1.619)・年間売上(t=1.109)・業種(χ²=1.16)に明確な差は無かった、とも。測ったのは量3指標(応募者数・面接の選抜比率・充足した職の割合)と質3指標(平均成績・職務経験の年数・知覚された質)の別々の6つ。設計は横断。
022007年の帰結は「応募の意図と決定」で、入社でも定着でもない。読んだのは受理原稿の本文全文で、刊行版ではありません。企業は登録253社のうち123社(49%)、学生は登録1,642名のうち456名(28%)、謝礼は20ドル。1人が5社に答え、観測は2,280(456×5)。意図は5点尺度の2問、決定は面接日程の終了後のメールへの0か1。答えたのは456名のうち263名(58%)、観測は1,315。設計は被験者内。
032006年は、採用過程を3種の段に分けた。到達したのは抄録まで。客観的な選抜・主観的な選抜・自己選抜の3つ。紹介された人の見込みは紹介者の成績とともに高まるという理論に、支える実証が無い——抄録はそこから始まります。人が判断する段の「定まらない」は、著者の予測のほう——“theorize that … but remains undetermined at a stage of subjective selection”。同じ抄録は、この事例ではその段でも紹介者の成績とともに見込みが上がった、と続けます。係数も推定量も確かめていません。

版面は動きません。動くのは、要約されて手渡されていく途中。入れ替わりやすいのは3か所。
01「応募が増えれば、その分の質も上がる」。量と質は、ひとつながりの目盛りではありません。別々の6つの指標です。質の記録側の2つは99社のうち65社ぶん、量の3つめは6か月後の自己申告で、しかも——“Note that this measure tapped all the college graduates a company had hired and was not specific to the university described above.”(その会社が採用した大卒者の全体を拾っており、上の大学に限らない)。「広報の量」は販売費及び一般管理費という代理指標。「評判」は3誌の一覧に載ったかの0と1の合計で、最大6、実際は0から4、平均0.59、標準偏差1.15。評判は6つの帰結のうち2つとしか明確な関係を示さず、原典自身が「驚いた」と書き、広報の量との相関(r=.50)による多重共線性かもしれない、と続けます——推測であり、結果ではありません。
02「採用広報で応募が何倍、パイプラインで期間が何割短縮」。探しました。行き当たったのは事業者の解説ページばかり。数値そのものが50%・60%・65%とばらつき、元の調査にさかのぼれません。「そんな調査は存在しない」とは書きません。この号が当たった範囲で行き着けなかった、というだけです。だから記事にはどちらの数値も書きません。分母も標本も付かず、測る場所も上の3本より下流です——読んだ6本の帰結変数に、採用期間は入っていません。
03「入口に効く手は、入社や定着まで通る」。帰結変数を3本ぶん並べます。2007年は応募の意図と決定まで。同じ募集メッセージを対面・映像・音声・文字で届けた2004年のもう1本(学部生989名の実験)は、動いた先を“important pre-hire outcomes”(重要な入社前の帰結)と書きます。2006年は段ごとの通り方まで(「定まらない」と書かれたのは予測の側です)。三つとも、入社の手前で止まっています。段が下るほど、配属も、同僚も、景気も、本人の事情も積み上がります。下流の数字を上流の手の効き目として引くとき、そのあいだに挟まるものは数字に入っていません。

射程です。材料は、米国の大きな北東部の大学のキャンパス採用(99社と、123社および学生456名)、バーチャルなコールセンターの営業職のオンライン採用、5つの組織の技術職採用の例示、学部生989名の実験。どれも特定の国・場・時期で、学生の標本が多くを占めます。日本の採用の段を分解した査読研究は、材料に入っていません。2002年の論文は測り方の枠組みの提案で効果検証ではなく、1999年の研究は、米国の民間労働力の半分を雇う小企業を研究が避けてきた、規模が違えば別の労働市場だ、と書きます。
引いたのは6本。全文まで読めたのは2本で、うち1本(2007年)は受理原稿、刊行版には到達していません。残る4本は抄録まで。独立した6本でもありません——2004年と2007年は同じ著者が関わり、どちらも2002〜2003年度の大きな北東部の大学のキャンパス採用で、登録企業は232社と253社。ただし同じ大学だと明記した文は、読んだ本文にありません。6本のうち4本は同じ雑誌です。
記録から取れた「質」は、99社のうち65社ぶん。
99社ぶんそろっていたのは、3つの質問への答えだった。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。手元の数を段ごとに並べたとき何が起きるかを確かめた研究は、ありません。ここからは、研究結果そのものではなく、ALIFEが提案する実践の入口です。人を評価しません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
紙かメモアプリを開き、**募集を1件だけ**選ぶ。公開の募集要項でも可。日付と、その募集の名前を書く。
- 02COUNT
**4つの数を縦に並べる。**応募、書類が通った数、面接まで進んだ数、内定に至った数。分からない段は空欄にして、「空欄にした」と書き残す。
- 03DIVIDE
隣どうしの比を3つ書く(書類÷応募、面接÷書類、内定÷面接)。出せなかった組み合わせに印を付け、その段について「なぜ数が残っていないのか」を1行だけ書く。
数えられて見えるものは、たいてい何かに置き換えられています。この号で確かめられたのは、こうです。2004年の標本は登録232社のうち99社(回収率43%)。質の3つめは3項目の尺度で測った採用担当者の印象で、記録から取れた2つは99社のうち65社ぶんだったこと。
量の3つめは6か月後の自己申告で、その大学に限られてもいなかったこと。2007年の帰結は応募の意図と決定で、メールに答えたのは456名のうち263名だったこと。そして2つの数字の元の調査には行き着けなかったこと。皮肉なのは、この段でいちばん正確に数えられているのが、たぶん応募の件数だという点です——というのが、この号の読み筋です。今日残せるのは、募集が1件と、4つの数と、3つの比、そして比が出せなかった段の1行。記録が、それだけ残ります。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS採用認知・パイプライン創出力を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 相関係数 r
- 2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
- 標準偏差
- ばらつきの大きさを表す値。大きいほど、人によって結果がばらばらだったことを意味します。
