IN WAYS OF THINKING · ISSUE 177
● 12 SEC組織の側を見てきた区切りがつきました。ここからは考え方そのもの——思考法です。1本目は演繹。1982年の研究は、米国フロリダ大学の学部生144人に、同じ論理構造の課題を中身だけ変えて出しました(3課題を順に解き、提示順は6通りの順列。割り付けは申し込んだ順)。
記号の版「片面に A があるなら裏は 3」を先頭に出したとき、規則が破られていないか確かめるカードを選べたのは48人中2人(4%)。飲酒年齢の規則「ビールを飲んでいるなら19歳を超えていなければならない」では48人中36人(75%)。先頭どうしの比較で、48人ずつ別の人たち。論理の形は同じで、動いたのは中身だけでした。
この号が扱うのは、演繹が何をどこまで測られているかです。判断が良くなる手順は渡しません。
演繹〔情報を足さずに前提から結論へ降りる推論〕には、前提が正しければ結論も正しいという保証がつきます。ただし守られるのは移り方であって、前提そのものではありません。妥当〔移り方が正しいこと。前提が本当かどうかとは別〕と正しい結論は別です。
裏口もあります。対偶——AならばBが正しいなら、BでないならAでない、も必ず正しい。そうなっていない場面を1件見つけるだけで条件が崩れます。演繹の使いどころは、証明するより崩すことにある——というのが、この号の読み筋です。
数字になっているのは三系統——選択課題、その半世紀ぶんの集計、三段論法の判定課題。同じ物差しではありません。

まず測られたのは、この3本です。
011968年の論文は、「介入は効かなかった」という報告だった。4枚カードの課題に「選択課題」の名を与えたのは1968年の論文です(最初の報告は1966年の予備実験)。ただし主題は課題ではなく、対偶の推論を引き出す2種類の介入を試し、どちらも促進しなかったという報告でした——"two kinds of therapy do not facilitate the act of making the contrapositive inference"。両実験を合わせると、50%が規則に書かれた2枚だけを選び、規則が破れているかもしれない側を選んだのは16.7%でした。
02228の実験を集めると、抽象で19%、決まりの形で64%だった。2017年の集計〔メタ分析=多くの実験の結果を一つにまとめる手法〕は、228の実験を抽象的な規則104・日常的な規則44・義務論的な規則〔守らなければならない決まりの形〕80に分けました。正解の2枚を選んだ割合は抽象19%・日常29%・義務論的64%。ただし実験ごとの平均ではなく3分類それぞれの集計で、104・44・80は一致係数(W)側の分母、選択割合の集計単位は原典に明示がありません。Wは.34・.25・.54(1なら完全一致)で、ばらつきは残ります。
03結論が信じられる内容のとき、妥当なものと妥当でないものが同率になった。1983年の3実験は、三段論法を「妥当かどうか」×「結論が信じられるかどうか」の4つの型に分け、前提から必然的に導かれるかだけを判定させました。抄録が報告するのは、信念バイアス〔結論が信じられるかが、妥当かどうかの判定に混ざること〕が、妥当な三段論法より妥当でないもので顕著だったこと("belief bias was more marked on invalid than on valid syllogisms")。実験1(24人)では、結論が信じられる内容のとき、妥当な三段論法も妥当でないものも受容率92%。区別が消えています。信じられない内容では妥当46%・妥当でない8%。実験2と実験3でも同じ形でした。

数字は動きません。動くのは引用の途中のほうです。落ちやすいのは3か所。
01「抽象が難しいなら、具体例にすれば解ける」に読み替えられる。同じ年のもう1本が先に潰しています。主題のある材料が成績を上げるという先行の報告は、2つの実験で再現できませんでした("Two experiments failed to replicate previous findings")。上がったのは、参加者自身の過去の経験の一部であった規則だけでした。1985年の研究は逆向きで、許可の形を持ち出すと、その内容を経験していない参加者でも成績が上がりました。冒頭の実験でも、具体的だが経験していない規則(服の色と年齢)は先頭で48人中12人(25%)止まり。この1982年の2本は同じ2人の同年の連作で、独立した2チームではありません。
02教科書で覚えたカードが、原典のカードとして引かれる。この課題は、たいてい「D・K・3・7」の4枚として紹介されます。原典を開くと、その4枚はありません。1968年の文(1)は「片面に D があるなら、その裏には 3 がある」で、カードは D(3)・3(K)・B(5)・7(D)——表に見えているのは D・3・B・7 で、K は「3」の裏です。原典は順序を統制するため、各群の半数には別の文(2)を出しており、その見え札は 3・K・5・D。「D・K・3・7」という組は、原典のどちらの組にも存在しません。
03「訓練すれば論理に強くなる」の根拠として引かれる。演繹の資料でよく置かれるのが、論理の訓練で矛盾を見つける力が上がるという主張です。この号は、それを書きません。複数のクエリで書誌データベースを探しても、報告した査読論文にはたどり着けませんでした。存在しない、とは書きません——たどり着けなかった、というだけです。並べた6本のうち介入の効果を測ったのは1968年の1本だけ(2種類とも効かず)で、反復的な訓練の効果を測った研究は1本もありません。

答えたのは、ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジの1年生(36人で始まり、対照群の2人を除いた34人)、エディンバラ大学の1年生26人、フロリダ大学の学部生144人、1983年の3実験の24人・64人・32人。集計の側は228の実験で、その原典は多くの国で行われたと書きますが、この号が開けた個別の研究は、いずれも英国か米国のものです。実験室の数分の課題で測られたものが、本物の判断にそのまま当てはまるとは限りません。
「同じ中身なら同じ結果になる」とも書けません。75%は先頭で出したときの値で、同じ課題が2番目では48人中25人、3番目では48人中26人まで落ちます。原典自身がこれを "an unexpected result"(予期しない結果)と呼び、3実験すべてで観察されたが容易には説明できない、と書いています。設計の強さもそろいません。割り付けは1968年が「交互に割り当て」、1982年は申し込んだ順です。
全文まで読めたのは6点のうち3点。残る3点は抄録の範囲までで、読めていないものについては書きません(1983年の数値は抄録の逐語と検算まで)。「演繹を身につければ判断が良くなる」も、「演繹は役に立たない」も、この号の6本からは出てきません。
形は、同じ課題だった。
動いたのは、中身のほうだった。
だから次の2行も、研究が命じた順番ではありません。判断を2行に書き直したとき何が起きるかを確かめた研究はありません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
**最近1週間で自分が下した判断を1件だけ**選ぶ。買った・断った・後回しにした——小さいもので構いません。
- 02WRITE
1行目は「前提:」で始め、もとにある事実だと思っていることを1つだけ。2行目は「結論:」で始め、下した判断を書く。**前提は1つだけ。**
- 03MARK
前提が偽だったと仮定して、結論も崩れるかに○か×。**×なら、その結論は別のどこかから来ています。**×のときだけ、その「別のどこか」を一言足す。
保証されているのは、やはり移り方だけでした。確かめられたのは3つ。同じ論理構造でも、中身と提示の位置で正答率が動いたこと。教科書の見え札が原典のどちらの組にも無く、その論文自体は「介入は効かなかった」報告だったこと。結論が信じられるとき、妥当なものと妥当でないものの区別が消えたこと。
どうすれば論理に強くなれるかは、どこにも書かれていません。結論が形式的に整うと正しく見えます。その静けさは、前提の点検が済んだ証拠ではなく、点検が始まらなかった証拠かもしれない——というのが、この号の読み筋です。今日残せるのは判定ではありません。「前提:」が1行、「結論:」が1行、○か×が1つ。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS演繹を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

