IN ORGANIZATIONAL FOUNDATION · ISSUE 176
● 12 SECレジリエンスの資料でよく引かれるのは、倍率のついた数字です。この号は、その数字を書きません。たどった範囲では一次資料を特定できず、原典の出典一覧にも出どころがない。特定できない数字は、否定のためにも引用しません。
2017年の体系的レビュー〔範囲と手順を先に決めて拾い集めるレビュー〕は、1977年から2014年までの論文・書籍・書籍の章339件を整理し、概念化も操作化〔測れる形に置き換えること〕も研究ごとにかなり異なり、将来の逆境への耐性——またはその不在——を検出する実証の知見はわずかしかない、と書いています。
扱うのは強い組織の作り方ではなく、何がどこまで測られたかのほうです。並べた6本に、無作為に割り付けた実験は1本もありません。だから「効く」「防ぐ」とは書けず、書けるのは「結びついていた」までです。
組織再生力は、強さの名前というより、衝撃の前と後で何が残ったかを見る枠です。339件のレビューによれば、研究は5つの流れに分かれます——外部の脅威への対応、組織の信頼性、従業員の強み、事業のかたちの適応性、供給網の設計原理。
同じレビューは、流れのあいだの概念的な異同は未検討で、育てるための一般化できる原理についての知見も得られていないとも書きます。同じ年のもう1本は、危機管理の研究とレジリエンス研究がほとんど統合されないまま発達したと整理し、危機を「出来事」と見るか「過程」と見るかで立て方が変わると示しました。

では、何なら数字になっているのか。米国拠点963社を2つの物差しで測った分析、対応づけた企業を15年追った分析、震災に見舞われた企業の取引網の分析。まず測られたのは、この3本。
01米国963社の反応は、落ち込みの深さと、戻るまでの時間に割られた。2019年の分析。測りにくさを断ったうえで、結果に現れる形を損失の深さ=安定の側面と回復までの時間=柔軟性の側面に切り分け、米国拠点963社の世界金融危機への反応で、長期の戦略的な取り組みが短期の戦術的なものより多く寄与するという仮説を支持したと報告します。無作為の割り付けはありません。
0215年追った242社では、長期の側に差が報告され、短期の財務では支持が得られなかった。2016年の研究。潜在的で経路に依存する構成概念だから直接は測らず、長期の結果で評価する、と断ります。対応づけ〔似た条件の相手と1組ずつ比べる〕た121組・242社を15年追い、対照群と比べ財務の変動が小さく、売上の成長が高く、存続の見込みが高かった。ただし同じ抄録は、短期の財務成果との関係では支持が得られなかったとも明記します。
03震災後の日本では、外の取引先と地域内の取引先が、別の時期と結びついていた。2015年の分析。東日本大震災に見舞われた企業の企業レベルのデータ。長い取引網には負の側(途絶に巻き込まれやすい)と正の側(支援や集積の利点)があります。被災地の外の企業とのつながりは生産の早期再開と、地域内のつながりは中期の売上回復と結びついていた。供給網の正の効果は通常は負の効果を上回る、と結果は示唆する、まで(「通常は」は原典の限定)。

動くのは、数字ではなく、引用されていく途中のほうです。落ちやすいのは3か所。
01事後の判定が、前もっての見立てとして読まれる。前もって検出する実証はわずか。手立てが乏しければ、判定は後からになります。越えた組織を後から集めて共通点を数えれば、越えられなかった組織は最初から入っていません。ただしこの号の3本は違います——963社は反応の全体、242社は対照群との比較、震災の分析は被災企業のデータ。「生存の側だけを見ている」は、言葉の使われ方への指摘です。
02同じ研究者の2本が、独立した2つの検証に見える。963社の2019年の分析と、242社を15年追った2016年の研究には、同じ研究者が両方に入っています。データも設計も別——2019年は2008年の危機への反応、2016年は15年の追跡と対応づけ——ですが、独立した2チームの検証ではありません。測るものも違い、2019年は深さと時間、2016年は長期の結果です。加えて落ちやすいのが、2016年が支持を得られなかったと明記した短期の財務成果のほうです。
03観察された結びつきが、危機のあとの打ち手の指示に読み替えられる。2006年の研究は9.11後の米国の航空業界を追いました。危機後の人員削減は、回復を促す意図に反して4年にわたり回復を妨げていた。ただし削減に踏み切ったかどうかは、危機の前の財務的な余力の乏しさと、成り立つ事業のかたちの不在の両方と強く相関〔相関=どちらが原因かは言いません〕。その事業のかたち自体が、保たれてきた関係の蓄積に依存していた——原典のモデルでは、余力と関係の蓄積が相互に支え合う形です。無作為の割り付けはなく、出てくるのは「削減をやめれば回復する」ではなく、危機のあとの選択が危機の前の状態と相関していた、という位置までです。

どれも、あなたの職場でこれから起きることを言い当てるものではありません。標本は米国拠点に強く偏ります(963社も242社も米国拠点)。震災の分析は日本の企業データですが、特定のひとつの衝撃について。国が違えば制度も数え方も違い、足して比べることはできません。読めたのは、6点すべて抄録の範囲まで。
無作為の割り付けが1本もない以上、「余力を残せば回復する」も「備えは無駄だった」も出てきません。2016年の研究が支持を得られなかったと明記したのも、短期の財務成果との関係でした。そして——潰れた会社は、調査に答えません。答えた963社は、答えられる状態で残っていた側です。
前もって検出する実証は、わずかしかない。
差が出たのは、15年の側だった。
だから次の3件も、研究が命じた順番ではありません。3件書き留めたとき何が起きるかを確かめた研究はありません。記録が3件、残るだけです。
TRY IT TODAY
- 01RECALL
苦しかった時期をひとつ思い出す。真っ先に減ったものと、最後まで残ったものを、合わせて3件だけ挙げる。**1件以上は「残った」側にします。**
- 02WRITE
1件につき3項目だけ書く。名前/減る・残るのどちらか/いま、どれくらいあるか(多い・ふつう・ほとんど無い)。**特定の同僚や、誰かの働き方への評価は書きません。**
- 03CLOSE
今日の日付を添え、一度だけ読み返して閉じる。**改善案も、提出先も書きません。**いま自分がどう見立てたかが、そのまま中身です。
確かめられたのは四つ。339件のレビューは、概念化も操作化もかなり異なり、耐性またはその不在を検出する実証の知見はわずかしかない、と書いた。2019年の分析は、963社の危機への反応を深さと時間に分けて測り、長期の戦略的な取り組みの側で仮説を支持した。
2016年の研究は、対応づけた121組(242社)の15年で差を報告する一方、短期の財務成果では支持が得られなかったと明記した。2006年の研究は、危機後の削減が危機の前の余力の乏しさと事業のかたちの不在の両方と強く相関したと報告し、震災のデータでは、被災地の外の取引先が生産の早期再開、地域内が中期の売上回復と結びついた。
危機に強い組織の作り方も、備えは無駄だ、も書かれていません。組織の基盤を扱ってきたこの群は、ここで一区切り。——今日残せるのは判定ではありません。日付が1行、記録が3件。
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