IN FINANCIAL FORTUNE · ISSUE 142

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台に、白い発酵乳の瓶・浅い切り漬けのグラス・琥珀色の発酵茶の細長い容器が三つ並んだ静物写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

複利の説明には枕詞がつきます。アインシュタインが人類最大の発明と呼んだ、というやつ。ところが文面が毎回違う——最大の発明、8番目の不思議、宇宙で最も強い力。出所をたどる公開調査は「人類最大の発明」の形について、「アインシュタインへの結びつきを支える材料は見つけられなかった。この発言をしたとは、きわめて考えにくい」と書いています。

最も古い例は1916年の米国の新聞広告の中の会話で、そう呼んだのは登場人物のほう。名が結びついた最も古い例は1976年の Wall Street Journal、そこでも「とされる」「言ったと伝えられる」でした(調査自身、より古い例が出る可能性は留保)。言えるのは「本人は言っていない」ではなく、「支える材料が見つかっていない」までです。

資本効率感覚(Capital Efficiency)は、投じた1に何がどれだけ戻るかを同じ物差しで並べる点検。余剰を入れる口は3つ——費用を減らす、入る量を増やす、運用に回す。率が投入の瞬間に確定するのは、費用の口だけ。

(仮ビジュアル)暗い室内で黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性。窓の外は夕暮れの空
答えたのは、米国の規制当局の例示条件と、米国の市場・投信の集計。同じ測定ではない。 Visual: ALIFE

先に断ります。この号は投資助言ではありません。商品も口座も銘柄も勧めず、やめろとも言わず、どの費用が低いかも比べません。並ぶ数字は3系統——例示計算、市場の実測、標本を持たない算術。まず測られたのは、この3本。

01同じ利回りでも、20年後に2万8,204米ドル開いた。米国の規制当局が2014年に出した資料は、10万米ドル・年4%・20年、費用が年0.25%・年0.50%・年1%の場合を図示します。同じ条件で計算すると、費用なし約21万9,112/年0.25%約20万8,815/年0.50%約19万8,979/年1%約18万611米ドル。差は約2万8,204米ドル(4金額と差は本号の計算。費用ゼロの系列は原典の図に無い)。費用差の年0.75%を元の10万米ドルに20年ぶん掛ければ1万5,000米ドル。実際の差はその1.8倍以上——払わずに済んだ分が残高に残り、そこにも同じ率がかかるからです。年4%は仮定、日本円には換算していません。

02探すためのお金は、時価総額の年0.67%と推計された。2008年の会長講演は、米国株式市場で1980年から2006年に超過リターンの探索へ社会全体が払った手数料・経費・売買費用の合計を積み上げ、時価総額(上場株式を値段で足した額)の年0.67%と推計しました。裏返せば、妥当な仮定のもとで典型的な投資家が受動的な市場ポートフォリオへ切り替えていれば、年リターンの平均は同じ期間で67ベーシスポイント(1ベーシスポイントは0.01%)高かった、とも。誰かの成績でも商品の費用水準でもありません。費用も税も国と時代で違うので、割合は他の市場へ移せません。

03持続性は、共通の要因と運用費用でほぼ説明された。1997年の分析は、生存バイアス(消えたものが抜け、残った側だけで平均が作られる偏り)を含まない標本で、米国の株式投資信託の持続性(去年の順位が今年に残るか)を調べました。平均リターンとリスク調整後リターン(値動きをそろえた成績)の持続性は、共通の要因(多くの銘柄がいっしょに動く部分)と運用費用でほぼ完全に説明される。原典は、持続的な選別の技量の存在を支持しない、と述べます。無作為割付ではないので、「選ぶ意味がない」という宣告ではありません。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
20年後に開く幅・探索の費用0.67%・持続性の説明。まず測られたのは、この3本。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、そこから結論が引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。

01出所の示されていない一言が、証明の代わりに置かれる。ひとつめは冒頭の枕詞。語録集の版元の紹介文は、およそ1,600件を収め、本人の発言に加えて「彼に帰せられている引用」も収めると説明します。この号はその本の本文に到達しておらず、中に複利についての一文があるかは書きません。複利の性質は数式でそのまま示せます。示せるのに権威を借りるのは、検算させたくないとき——というのが、この号の読み筋です。しかも枕詞は、増える側にだけ呼ばれます。

02引き算で実質を出し、近似を効く範囲の外で使う。ふたつめは率の読み方。「年5%」は名目(表示されている率)。購買力を見るのは実質、物価の変化を差し引いた率で、引き算では出ません。本体は割り算。米国の労働統計の公表元によれば、都市部の全消費者の消費者物価指数(CPI-U)総合は2022年12月までの12か月間、季節調整前で6.5%上昇。名目5%と並べると(本号の例示計算)、引き算は−1.5%、割り算は1.05÷1.065−1で約−1.41%。近いのは率が小さいときだけ。「72を年率で割ると倍になる年数」も同じ。法則と実際は、年2%で36年と35.00年、3%で24と23.45、4%で18と17.67、6%で12と11.90、8%で9と9.01、12%で6と6.12(本号の計算)。当たるのは年8%あたり、低い率では長め、高い率では短めに出ます。

03算術の恒等式が、運用の良し悪しの判定に格上げされる。みっつめ。1991年の短い論文は、市場の資金を、そのまま保有する受動的な側とそれ以外に分け、定義から下の2つの命題を出しました。著者は、どんな期間でも成り立ち四則演算だけに依存すると書き、「この原則を否定するように見える実証分析は、測り方が誤っている」とも書きます。ただし恒等式が言うのは全体の平均について。費用後でも受動側を上回る運用者はありえます——原典も、それは能動的な資金の少数派にとどまるはずだ、と書くだけ。「能動的な運用は良くない」「受動的な保有が優れている」への格上げはできません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
出所のない一言・引き算と近似・恒等式の格上げ。格上げされるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

答えたのは、米国の規制当局が置いた条件と、米国株式市場・米国の株式投資信託の集計で、期間は1980年代から2000年代が中心。どれも、あなたの家計の見通しではありません。費用も税も制度も国ごとに違います。日本の物価や費用の数値はひとつも使っていません——比較や合算ができないことに加え、公表元の現行ページで該当する年の値に到達できなかったためです。

ここに並んだ数字は、その国・その期間・その市場の記録か、決められた条件での例示計算で、これから同じことが起きる約束ではありません。「費用の低いものへ移せばよい」とも「任せれば取り戻せる」とも言っていません。返済が滞っている・生活費が足りないなら、率を数えるより先に、金融庁の相談窓口、自治体の生活困窮者自立支援の窓口、法テラスなどへ。

費用を引く前では、能動的に運用された1単位の平均は、
受動的に保有された1単位の平均に等しい。
費用を引いたあとでは、前者が後者を下回る。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。買う課題でも、売る課題でも、乗り換える課題でもありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    紙かメモアプリに、**今日目に入った「率」を3つ**、見た時刻とともに1行ずつ。金額や口座の情報は書きません。

  2. 02MARK

    各行に記号を3つ。**名目か実質か(N/R)。年率か月率か(Y/M)。費用を引く前か後か(前/後)。**判定できない項目には×。その場で分かるかどうかだけ。

  3. 03CLOSE

    書いたら閉じる。高い低いも、良い悪いも書かない。**3行すべてが×でも完了です。**判定できない率は比較に使えない、という記録。

15分。採点はありません。買う・売る・解約する・口座を開く・借りるはしません。明細や口座情報を共有の場所やSNSに置かないでください。**お金の判断は、必要ならファイナンシャル・プランナーや金融機関の相談窓口など専門家と。返済や生活費で行き詰まっているなら、この課題より先に公的な相談先へ。**苦しくなったら中止してください。

確かめたのは4つ。あの一言を支える材料が、公開調査に見つかっていないこと。例示条件での20年後の差が約2万8,204米ドル、単純に掛けた1万5,000米ドルより大きいこと。探索の費用が時価総額の年0.67%と推計されたこと。投信の持続性が共通の要因と費用でほぼ説明され、技量を支持しなかったこと。「能動的な運用は良くない」は、どこにも書かれていません。恒等式は誰が上回るかを特定しません。先に確定するのは費用の側だけ。その費用は増える側と同じ形で効きます。残せるのは×が付いた行だけです。

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本コンテンツは学習目的であり、投資助言や個別の金融商品の推奨ではありません。