IN FINANCIAL FORTUNE · ISSUE 133

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台の上に、白い発酵乳の入った瓶、切り漬けを詰めた低いグラス、琥珀色の発酵茶が入った細長い容器が三つ並んでいる静物写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

2006年に出た研究が、ニューイングランドの3つのスポーツクラブの会員7,752人について、契約の記録と実際に来館した記録を突き合わせています。この号が引くのは、そのうち企業の補助が無い、月会費70ドル以上の月契約を選んだ会員866人の数字です。

この866人は最初の6か月で平均月75.26ドルを払い、月4.36回通っていました——1回あたり17.27ドル。10回券は2つのクラブで100ドル、1回10ドル。この会員の80%は、同じ回数だけ通うのであれば、都度払いのほうが安く済んでいました。最後の来館から解約までは平均2.31か月、約187ドル(初期費用のかからなかった会員の平均)。

この号が扱うのは支出を減らす手順ではなく、合計を占めているのはどの費目か——その手前の問いです。投資助言ではなく、節約せよとも使うなとも書きません。

支出管理力(Spending Control)は、我慢の技術につけられた名前ではなく、出ていく側を層に分けて、合計を占めているのがどの層かを言えるかという点検です。

ここでALIFEは3層に分けます。決定が過去にあって支払いが現在にある固定費、毎回判断が入り1回あたりが小さい変動費、判断はしているが計画には無かった衝動買い。この3層は研究の分類ではなく、原典の数字を読むためにALIFEが提案する整理です。確かめるのは、削りやすさの順番と金額の大きさの順番が同じ向きに並ぶのかどうかです。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
答えたのは、米国の消費支出調査と、ニューイングランドの3クラブ。同じ測定ではない。 Visual: ALIFE

では、どこまで測られているのか。まず測られたのは、この3本です。

01年間支出の32.9%が、住居だった。米国労働統計局の消費支出調査では、2023年の1消費単位〔調査が家計を数える単位〕あたり年間支出77,280ドル、税引き前所得101,805ドル。住居25,436ドル=32.9%、輸送13,174ドル=17.0%、食料9,985ドル=12.9%(食料品6,053ドル・外食3,933ドル=支出全体の5.1%)、個人保険と年金9,556ドル=12.4%、保健医療6,159ドル=8.0%(分母はいずれも77,280ドル)。所得を5等分した層〔五分位〕の住居支出は最下位13,943ドル・最上位43,897ドル、食料は5,278ドルと16,996ドル。五分位からは派生の比率を作らないので、層ごとの重さは比べません。

02賃貸世帯の49.7%が、所得の30%以上を住居費に払っていた。米国国勢調査局のアメリカ地域社会調査(2023年1年推計)では、米国の賃貸世帯4,250万〔負担率が計算できた世帯〕のうち49.7%、2,100万世帯超が住居費に所得の30%超を払っていました。およそ半数です。30%超を払うべきではないという基準ではなく、そう払っている世帯を数えた統計。持ち家も、米国以外の世帯も含みません。

03月会費の会員の80%は、同じ回数なら都度払いのほうが安かった。冒頭の研究のデータセット全体は会員7,752人。4つの数字の分母は補助なし・月会費70ドル以上の866人です(10回券は残る1つのクラブでは80ドル)。80%の分母はこの866人、条件は「同じ回数だけ通うのであれば」。回数が変われば結果も変わる。契約記録と来館記録の突合であって実験ではなく、1997〜2001年の3クラブの記録です。固定費は意志の弱さでは増えず、手続きと忘却の側で増える——というのが、この号の読み筋です。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
住居32.9%・賃貸の49.7%・月会費の会員の8割。まず測られたのは、この3本。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、そこから結論が引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。

012.4%の話を、家計の主役の席に置いている。毎日の小さい買い物に365を掛け、さらに何十年かを掛ける——長く流通してきた計算です。この号は、流通している具体の金額や到達額を扱いません。書けるのは公的統計の側の算術だけ。仮に1日5ドルとすれば365日で1,825ドル、米国の2023年の平均支出77,280ドルに対して2.4%。外食を1ドルも使わなくても3,933ドル、5.1%。住居の32.9%とは、分母が同じでも桁が違います。1,825ドルが間違いだという話ではなく、言えるのは注意の配分までです。

02「到達した人」の標本を、「その集団」の標本として読んでいる。倹約すれば到達できる——1996年に出た本をきっかけに流通した主張です。この号は、その本の標本の作り方の記載には到達していません。確かめたのは別の側、米国連邦準備制度理事会の消費者金融調査の標本設計についての2007年の技術報告です。2004年の調査で、純資産500万ドル以上の回答者の約98%、100万ドル以上の85%超が、地域抽出ではなく税務データ由来の名簿標本〔作った名簿から選ぶ標本〕から来ており、最も裕福な層の回答率〔声をかけた人のうち答えた人の割合〕は10%。上位1%が家計純資産の約3分の1を持つとも推定されています。到達した人だけの標本には、続けて到達しなかった人が写りません——というのが、この号の読み筋です。

03日本と米国の割合を、横に並べて読んでいる。総務省統計局の家計調査(2024年平均)では、二人以上の世帯の消費支出が1か月300,243円で、食料29.9%、その他15.8%、交通・通信13.9%、教養娯楽10.1%、光熱・水道7.7%、住居6.0%。単身世帯は月169,547円(割合は公表の円額から本号が計算)。日本の住居6.0%と米国の32.9%を並べて日本は安いと読むのは誤りです。費目の定義が違い、二人以上の世帯の平均には持ち家も含まれるため住居は低く出ます。比較も合算もできる数字ではありません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
2.4%を主役にする・到達した人だけの標本・定義の違う二つの表。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

どれも、あなたの家計の来月の内訳ではありません。平均も構成比も、それが計算された集団の話です。答えたのは、米国の消費支出調査に回答した家計、米国の賃貸世帯、3クラブの会員、米国の消費者金融調査の標本。日本の家計調査は、比較ではなく設計の違いの対照として一度だけ置きました。持ち帰れるのは比率ではなく、どの層が合計を占めているかを見る手順のほうです。

ここに並んだ数字は、その年・その調査の記録であって、これから同じことが起きる約束ではありません。クラブの研究も記録の突合で、無作為に条件を割り当てた実験ではない。お金の判断は、あなた自身の状況の中で決まります。必要なら、ファイナンシャル・プランナーや金融機関の相談窓口など専門家と。返済が滞っている・生活費が足りないなら、記録より先に公的な相談窓口へ。

月会費の会員の80%は、
同じ回数だけ通うのであれば、
都度払いのほうが安かった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。あなたが明細を数えたとき何が起きるかを確かめた研究は、この号では扱っていません。減らす課題でも、解約する課題でもありません。

TRY IT TODAY

  1. 01LIST

    直近1か月の入出金とカードの明細から、あなたが何もしなくても毎月出ていくものの名前だけを1行ずつ書き出す。金額は書きません。

  2. 02COUNT

    行数を数えて、最後に1行足す。書くのは行数だけで、金額ではない。多い少ないの判定はしません。

  3. 03SORT

    各行の左端に、固定費・変動費・衝動買いのどれかの印を1つ付ける。迷った行は2つでも構いません。良い悪いは書かない。

15分。採点はありません。**解約・契約変更・金融商品の選択・口座開設・借入や返済の方法を決める課題ではありません。**明細の画像や口座情報は共有の場所やSNSに置かず、苦しくなったら中止を。**返済が滞っている・生活費が足りない・借り入れが重なっているなら、この課題より先に、金融庁の相談窓口、自治体の生活困窮者自立支援の窓口、法テラスなど公的な相談先へ。**

支出管理力は、我慢の技術につけられた名前ではありません。確かめられたのは三つ。米国の家計では年間支出77,280ドルのうち住居が32.9%で最大だったこと。賃貸世帯のおよそ半数、49.7%が所得の3割超を住居費に払っていたこと。補助なしの月会費の会員866人の8割は、同じ回数だけ通うのであれば別の払い方のほうが安かったこと。

倹約すれば到達できるとは、どこにも書かれていません。反省しやすい場所に、いちばん小さい数字が置かれている——というのが、この号の読み筋です。今日残せるのは、名前が並んだ紙と、行数と、行ごとの印が1つ。それだけです。

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本コンテンツは学習目的であり、投資助言や個別の金融商品の推奨ではありません。