IN ROMANCE · ISSUE 124

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台に、白い発酵乳の瓶・浅い切り漬けのグラス・琥珀色の発酵茶の細長い容器が三つ並んだ静物写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「もめごとは、穏やかに、責めずに話し合う」。この助言に、条件も標本も追跡期間も付きません。米国で2010年の研究は、新婚の207組(北オハイオ72組・最大8回/東テネシー135組・最大3回)を追いました——相手を責め、命令し、拒む傾向は、軽微な問題しか抱えていない関係では自分自身の婚姻満足度のより急な低下を予測したが、より深刻な問題に直面している関係では、その同じ振る舞いがより安定した満足度を予測した。

この号は、どう振る舞うべきかを書きません。扱うのは、平均として測られたことと、条件で割ると向きが変わることは別物だ、という一点です。要求と引きこもりの型(demand/withdraw)は、74研究・のべ14,255人の統合で関係の質と r = .360。割ると、問題の深刻さでも社会経済的な条件でも、長期の向きが逆を向きます。

初期葛藤対応力(Early Conflict Response)は、上手な言い方の名前ではなく、かみ合わなかったあとに残る食い違いをどう処理しているか、です。測られたのは二系統——研究を一つの値にまとめたメタ分析と、同じ夫婦を何年か追い、条件ごとに向きを見た縦断研究。同じ人の中で比べた数字ではありません。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
平均を出した研究と、条件で割った研究。同じ「言い方」でも、別の測定。 Visual: ALIFE

では、どこまで測られているのか。

01平均としては、関係の質と .360 で結びついた。2014年のメタ分析は、要求と引きこもりの型について74研究・のべ14,255人を統合し、全体で r = .360。(r は連動の強さ。0で関連なし、1に近いほど一致。相関であって効果量(d)ではありません。)以下はいずれもこの74研究の中の下位集計値——妻が要求し夫が引く形 .380、夫が要求し妻が引く形 .392。臨床・苦悩のある標本 .413 は苦悩の無い標本 .345 より大きく、関係 .423・コミュニケーション .418 に対し、人口統計 .239・心身の健康 .249。統合値であって、個々の研究が一様だった意味ではありません。

02向きが入れ替わったのは、問題の重さだった。問題の深刻さそのものの変化が、この効果を媒介していた(媒介=あいだに入って結びつきを説明する経路)。見落とされやすいのはここ——対照的に、間接的な否定的コミュニケーションは、問題の深刻さにかかわらず、一貫して低い水準の満足度と結びついていた。条件で向きを変えるもの(責める・命令する・拒む)と、条件によらず一貫しているもの(当てこすり)が、「否定的」という一つの名前の下に同居しています。

03手応えと、12か月後の変化が逆を向いた。2009年の研究は、61組の話し合いを録画し、1年間3か月ごとに、狙われた特徴の変化を測りました——直接的な方略(肯定的なものも否定的なものも)は、当初うまくいかなかったと知覚されたが、その後12か月にわたる変化の増大を予測した。逆に、肯定的で間接的な方略は、その場での成功の知覚は高かったが、のちの変化を予測しなかった。どちらが良いかは言っていません。その場の感触を成果の代わりに使うと、測るものが入れ替わる——までです。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
平均は .360・207組で向きが入れ替わる・61組で手応えと12か月後が逆を向く。 Visual: ALIFE

動くのは数字ではなく、そこから引かれる途中のほうです。手がかりは3つ。

01「悪い」を、条件を抜いたまま運んでいる。条件は問題の重さだけではありません。米国・2019年の研究(オンライン初出2018年)は、515組を18か月、431組を9か月・18か月・27か月追跡。標本は米国の7州8か所とロサンゼルス郡の、収入の低い層を多く含むカップルです——社会経済的な危険度が、要求と引きこもりの型と妻の関係満足度の共変動を調整しており、危険度が高いときには引きこもりの水準が高いほうが有益だった。(調整=向きや強さが別の条件で変わること。)結論は、その社会的・経済的な文脈を理解せずに変えようとする努力は逆効果になりうる、と。「引くほうが良い」も「要求と引きこもりは悪い」も、条件を抜いた一般化としては出てきません。

02順序を、確かめないまま決めている。米国・2016年の研究は、新婚のカップルの肯定性・否定性・有効性を9か月間隔で4回観察し、満足度と照らしました——縦断的には、コミュニケーションから満足度への関連と、満足度からコミュニケーションへの関連の両方が確認されたが、どちらの経路もとくに頑健ではなかった。要旨は、コミュニケーション技法を鍵の予測因子として優先する理論と介入に重要な疑いを投げかける、と続けます。「どちらも頑健ではなかった」は「無関係だった」でも、一方の向きに決まった、でもありません。

03物語的な総説を、統合値として読んでいる。よく引かれるのが2001年の総説です——例外はほとんど見つからない。悪いは良いより強いということが、心理学の広い範囲にわたる一般原則として示唆される。ただしこれはメタ分析ではなく物語的な総説で、著者たちは系統的なキーワード検索は行えなかったと書き、効果量の統合値は報告されていません。ここから「d = いくつ」は引けません。この号の証拠はメタ分析1本・縦断3本・総説1本。総説の一般原則を統合値のように扱うと、言えることの範囲が静かに広がります。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
条件を抜いて「悪い」と運ぶ・順序を確かめずに決める・総説を統合値として読む。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは6点のうち3点。残る3点は抄録の範囲までで、その先は書きません。答えたのは米国で募集された新婚のカップルと、収入の低い層を多く含むカップルが大半。規模は61組・207組・515組・431組、異性のカップルが中心です。日本のカップルの葛藤を扱った査読研究は、たどった範囲ではごく少ない。

続いた関係のデータだけが残る、という逆向きも排除できません。別れた組は追跡から抜けます。「深刻な問題でも安定した」は、残っていた組の中での話。住む場所も収入も、どんな問題を抱えるかを本人の言い方とは別のところで決めています。危険度が向きを調整したのであって、それを本人が選べるわけではありません。

軽微な問題では、より急な低下を予測した。
深刻な問題では、同じ振る舞いが安定を予測した。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。言わずに済ませたことを数えたとき何が起きるかを確かめた研究は、扱っていません。話し合う課題でも、言う練習でも我慢する練習でもありません。

TRY IT TODAY

  1. 01COUNT

    紙かメモに今日の日付を書く。直近1週間で、言おうかと思ってやめたことの件数だけを数えて書く。相手も内容も書かない。

  2. 02SPLIT

    その件数を、自分の感覚で「軽いこと」と「重いこと」に分け、それぞれの件数を書く。基準は自分で決めてよく、どちらが多くても良い悪いはない。

  3. 03NOTE

    最後に、どこで分けたかの基準を1行だけ書き添え、読み返さずに閉じる。それで終わり。

5分。**採点も、言うべきかどうかの判定もしません。相手に伝える・話し合う・その場で持ち出す、という手順は一切含みません。**この号の研究は集団の平均と向きを測ったもので、あなたの一件を判定できる材料はありません。誰にも見せなくてかまいません。近い相手がいない・いま恋愛をしない読者は、仕事や日常のやりとりで成立します。**相手からの被害や恐怖がある関係は、この課題の対象外です。**数えるより先に、安全と距離を。**苦しくなったら中止を。**つらさが続く・強まる場合は、医療・支援の専門家へ。

確かめられたのは四つ。74研究・のべ14,255人の統合で r = .360。新婚207組で、責め・命令し・拒む傾向の向きが問題の重さで入れ替わったこと。間接的な否定だけは、深刻さによらず一貫して低い満足度と結びついたこと。61組では手応えと12か月後が逆を向き、515組・431組では危険度が妻の関係満足度について向きを調整したこと。言い方の正解は、どこにも書かれていません。書かれているのは、同じふるまいの向きが条件で入れ替わった、というところまで。——今日残せるのは、日付と件数と軽重の内訳と、分ける基準が1行。条件がひとつ、記録に残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS初期葛藤対応力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
相関係数 r
2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
観察研究・前向き研究
介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。