IN FRIENDSHIP · ISSUE 108

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗い上着姿で外の街明かりを見ている女性。ガラスにその横顔が薄く映り込んでいる● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「ちゃんと話し合って終わらせるのが、誠実な終わり方だ」。この前提を、答えの数で確かめた研究があります。2021年の研究は、大学生179人(平均20.42歳)に、同性の友人との62の難しい場面(9場面を除き分析対象は53場面)を読ませ、自分ならどうするかを自由に書かせました。

集まった9,487件の答えのうち、関係を終わらせる行動は120件、距離を置く行動は210件、活動や話題を限定する行動は201件(分母はいずれも9,487件で、順に1.3%・2.2%・2.1%)。どれも全体では稀な答えで、終わらせるより距離を置く・限定するほうが多く書かれていました。

ただしこの号が扱うのは仲直りの作法ではなく、その数字が誰の、何の測定だったかです。件数は仮想の場面に書かれた答えの分類で、行動の記録ではありません。

葛藤・修復対応力(Conflict Repair)は、揉めない性格の別名ではなく、うまくいかなくなった場面で何を選ぶかと、壊したあとに何を言うか——その二つの手つきです。測られ方も二系統。終わり方の側は自由回答・自己報告・面接・パネル調査とメタ分析、謝り方の側は場面を読んだ人の評定と縦断研究。同じ号に並んでいても、同じ人の中で比べた数字ではありません。

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真
答えたのは、終わり方を書いた人と、謝り方を評定した人。同じ人ではない。 Visual: ALIFE

では、終わり方の側はどこまで数えられているのか。まず数えられたのは、この3つです。

01終了より、距離のほうが多く書かれた。大学生179人(平均20.42歳)が書いた9,487件の内訳は、終了120件(1.3%)・距離210件(2.2%)・限定201件(2.1%)。場面によっても差が出ました。秘密を漏らされるなど友情の核となる期待が破られた場面は、意見や必要がぶつかった場面(例: 同居人と騒音でもめる)より、終わらせる行動が書かれる見込みが8.67倍(1なら差なし)、距離を置く行動は12.68倍です。

02同じ標本で、友人のほうが高い割合だった。2019年の研究は、連絡を断ち接触に応じないまま終える終わらせ方を、554人(平均33.86歳)と747人(平均32.64歳)の二標本で数えました。747人では、友人にされた経験38.6%・した経験31.7%、恋愛はされた23.0%・した18.9%(分母は回答者、経験の有無の自己報告)。ただし二つの割合の差の検定は、この号では確認していません。時期も回数も問うていません。

0390人のうち27%は、終わりを経験していなかった。1986年の面接研究は、米国北東部で集めた18歳から28歳の白人90人に、友人関係の保ち方と終え方を尋ねました。軽い友人関係は近くにいられなくなることで、より親しい関係はやりとりが減ることで、親友関係は徐々に薄れることで終わる。終わらせる行為は出てきません。終わりを「過程」と語った人が有意に多く、90人のうち27%(24人)は親友関係が終わった経験を一度も持っていませんでした。40年前・90人という限定は残ります。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
距離210件・同じ標本の38.6%・分母90人の27%。まず数えられたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

数字そのものは動きません。動くのは、引かれていく途中のほうです。手がかりは3つ。

01疎遠になった理由を、人格に読み替えている。出やすい説明は「嫌われたのかもしれない」。オランダの7年間のパネル調査では、打ち明ける相手や助けてくれる人の数はほぼ変わらないのに、顔ぶれは入れ替わる。途切れる主因の一つは会う機会の消失。277件・のべ177,635人を統合した2013年のメタ分析でも、友人ネットワークをもっとも強く縮めたのは転居(d=-1.263、95%信頼区間 -2.05〜-0.48。dは0なら差なし、負は縮む向き)。親になる移行は減る向きでも区間がゼロをまたぎ(d=-0.236、同 -0.75〜0.26)、離婚は有意な変化なし(d=-0.107、同 -0.45〜0.24)。統合値であって、277件が一様という意味ではありません。減り方の多くは喧嘩の帰結ではない、というのがこの号の読み筋です。

02「一つだけ言うなら」を、赦しの要請にしている。謝る側です。2016年の二つの研究は、成人333人と学生422人に場面を読ませ、謝罪の6成分(後悔の表明・説明・責任の承認・悔い改め・償いの申し出・赦しの要請)の有効性を5段階で評定させました。1成分ずつ評定した110人では責任の承認3.49が最高、赦しの要請2.68が最低。422人の研究2では償いの申し出と悔い改めが並んで最高(3.62)、責任の承認は3.30で3位。両研究で一貫したのは赦しの要請の最下位です(2.68と2.32)。研究1では能力の失敗への謝罪3.45、誠実さの侵害への謝罪3.20(研究2も同じ向き)。測られたのは評定で、関係が修復されたかどうかではありません。

03「赦したほうがいい」を、無条件の推奨にしている。赦す側です。2010年の4つの研究(夫婦144人を結婚6か月以内から5年、裏切りを思い出した44人、仮想場面の247人、交際中の58人を6か月隔週で追跡)の結果は、条件つきでした。相手が償いなどで「あなたを安全に扱い、価値を認めている」ことを示した場合だけ、赦しは自尊心と自己概念の明確さの高さと結びつき、示さない場合は低さと結びつきました(踏み台効果)。無条件の推奨ではありません。赦しを促す介入のメタ分析(2014年)では、報告された赦しの程度が無治療の対照群に対して Δ+ = 0.56(95%信頼区間 0.43〜0.68)、他の治療に対して Δ+ = 0.45(同 0.21〜0.69)高く、効果は用量依存(Δ+ は0なら差なし)。介入の統合値で、いま目の前の相手を赦すべきかの答えではありません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
疎遠を人格に読み替える・「一つだけ」を赦しの要請にする・赦しを無条件の推奨にする。 Visual: ALIFE

どれも、目の前の一つの関係がこれからどうなるかは教えてくれません。答えたのは北米の学生と成人(179人の調査は募集地の明記がなく、90人の面接は米国北東部の白人のみ)、オランダの調査対象者、各国の研究を統合した数字。日本で同じ手続きをやり直した記録は、たどった範囲に1件もありません。測り方も揃わず、ほとんどが本人の申告です。抄録までしか読めていないのは、オランダのパネル調査と赦しの介入のメタ分析の2点。

時間の側も。同じメタ分析では、知人まで含めた全体のネットワークは成人期初期(推定24.6歳)で頂点に達し、以後は縮みます。友人ネットワークのほうは成人期を通じて——年あたり約0.08人、10年でほぼ1人分——減るとだけ書かれ、頂点の年齢は示されていません。減り方として挙がったのは転居・親になる移行・会う機会の消失。喧嘩や仲たがいは要因に出てきません。関係しないと示されたのではなく、測られていないだけです。

どれも稀ななかで、多いのは終了より距離だった。
両研究で一貫したのは、赦しの要請の最下位。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。3択を決めて書き留めたとき何が起きるかを確かめた研究は、扱っていません。ここからはALIFEの提案です。仲直りしなくてかまいません。決めて、書けば足ります。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    しばらく連絡が途絶えている友人を、一人だけ思い浮かべる。誰にも見せない紙かメモに、名前かイニシャルだけ書く。

  2. 02CHOOSE

    続ける・距離を置く(会う頻度や話す話題を限定する)・終える、の3つから1つを選んで書く。理由は一行でいい。

  3. 03SEND OR LOG

    続けると決めたら、今日のうちに一通だけ送る。距離を置く・終えると決めたら、決めたことを書き留めて、そこで閉じる。

10分。採点はありません。残るのは、保留にしない一件です。**決定を相手に通知する課題でも、謝罪の練習でもありません。**終えると決めた場合も、宣言せず書き留めるだけ。**相手からの被害や恐怖がある関係は、この課題の対象外です。**その場合は安全と距離が先。思い出すのがつらい相手なら、選ばずに閉じてかまいません。**苦しくなったら中止を。つらさが続く・強まる場合は、医療・支援の専門家へ。**

葛藤・修復対応力は、揉めない性格の名前ではありません。確かめられたのは三つ。9,487件の答えでは終了(120件)より距離(210件)・限定(201件)が多く、期待が破られた場面の終了は対立場面の8.67倍。連絡を断たれた経験は同じ標本で友人38.6%・恋愛23.0%、90人のうち27%は親友関係の終了を経験していない。赦しが自尊心の高さと結びついたのは、相手が安全と価値を示した場合だけ。話し合えば戻るとも、赦せば楽になるとも、研究は約束していません。——今日残せるのは割合ではありません。相手が一人と、3択のどれかと、理由の一行。記録が一つ増えるだけです。

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HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量 d・g
2つのグループの平均の差を、ばらつきの大きさで割った値。一般的な目安では 0.2=小、0.5=中、0.8=大。g は d を小規模研究向けに補正したものです。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
観察研究・前向き研究
介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。