IN EMPLOYMENT · ISSUE 087

(仮ビジュアル)暗い石の台の上に、洋梨とさくらんぼとオーツ麦を盛った器、半分に切った洋梨、水の入ったグラス、麻の布が並んでいる朝食の静物● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

適合度は、測れる量ということになっています。1987年のメタ分析は41件・77の相関係数を集め、興味と職務の一致度と満足との平均相関を .21 と報告しました。要旨は続けてこう書きます——環境をどう参照するかと、一致度をどう測るかで分けると、.35 を超える。同じ41件、同じ77の相関で、データは1件も増えていません。

この号が扱うのは、合う仕事の見つけ方ではなく、一致度という一つの量がどう作られ、どこまで動くかのほうです。ここで引く研究の多くは、すでにその職務に就いている人に一度だけ訊いて測ったものです。いま働いていない人も、この号の読者から外れません。

職務適合性の評価力(Person-Job Fit)は、目の前の職務が自分に合うかを見積もる力です。研究でこれに対応するのが一致度。目盛りを読むように取れる量ではなく、本人の側の並びと職務の側の並びを突き合わせて計算します。突き合わせ方(差を足す・相関を取る・上位の一致を数える)も、環境の側の並びの取り方(職業分類の表・その職場の人・本人)も、一通りではありません。だから「適合度 .43」のような数字は、式と参照先を書かないかぎり再現できません。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
同じ「合っている」でも、どの式で、どこを参照して出した数かで中身が違う。 Visual: ALIFE

では、一致度は何と、どれだけ関連するのか。報告されてきた値は、集め方と分け方のたびに動いています。まず測られたのは、この3つです。

0141件・77相関の平均は、.21だった。1987年のメタ分析は41件の研究から77の相関係数を集め、一致度と達成 .06、在職の安定 .15、満足の平均相関 .21 を報告しました(相関係数は連動の強さ。0なら関連なし、絶対値が1に近いほど強い。目安は .10 が弱い、.30 が中くらい)。要旨は続けて、分け方を変えると .35 を超えると書きます。データは1件も増えず、分け方だけで満足との相関が1.7倍以上に動きました。ただし「.35 超」は満足との相関についてで、達成と在職の安定を分けたあとの値は要旨に出てきません。満足も一致度と同じく自己申告です。

02.14 の隣に、補正の但し書きがある。2011年のメタ分析は74件の研究・141の独立した標本を集め、興味の測定と仕事の側の指標との関連を職務遂行 .14、訓練の成績 .26、離職意図 −.19、実際の離職 −.15 と推定しました(マイナスは逆向き。興味の測定が高いほど離職の側は低く並びます)。そしてこの値の隣に、要旨は「基準側の測定誤差については補正したが、範囲制限については補正していない」と明記しています。補正は、途中で止められています。職業に固有の興味尺度では職務遂行が .23 になるとも報告されました。

03一致度の指標 0.32、興味の得点 0.16。翌2012年の別のメタ分析は、60年を超える研究の総まとめとして60件・およそ568の相関を集め、一致度の指標のほうが、興味の得点そのものより成果をよく予測すると結論しました。同じ著者たちは2017年の再検討で92件・1,858の相関を集め直し、一致度の指標と基準との相関 0.32、興味の得点そのものと基準との相関 0.16 を報告します。強調点が分かれる主な理由は、補正をどこまでかけるか。なお .14 は興味の測定と職務遂行、0.32 は一致度の指標と基準との関連で、指している中身も同じではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの壁の前で、黒い石の細い天板を、青いガラス・銀の金属・赤い漆という三つの異なる脚がそれぞれ支えている彫刻的なコンソールテーブル
1987年の分け方、2011年の補正、2017年の指標。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

ここまでで止めると、「適合度は測れる」という結論に着地します。検算しておきます。手がかりは3つ。

01適合度を、一つの数字として受け取っている。「.43」も「.21」も、それだけでは再現できません。どの式で突き合わせ、環境の並びをどこから取ったかが書かれていないからです。18年後の2005年、追試メタ分析は1988年から2003年の26件・53の標本・6,557人を集め直し、環境にいる他者・満足の出どころ・コードの型が調整変数だという以前の知見には支持が見つからず、確認されたのは一致度の指標が効くことのほうでした。どの興味検査を使ったかも調整変数で、米国とイスラエルの研究のあいだにも差が出ています。平均相関そのものは要旨に載っていないため、この号では書きません。

02補正をどこで止めたかを、確かめていない。2011年のメタ分析は基準側の測定誤差を補正し、範囲制限は補正していません。2017年の再検討は、補正の手続きそのものを主題にしています。同じ領域を扱った推定値が、補正をどこで止めるかで別の顔になるわけです。見るべきなのは、値そのものより先に、隣に書かれた補正の条件のほう。補正をめぐる議論は続いていて、この号ではどちらも正解として採用していません。

03「同じ人の回答だから膨らむ」を、一般則にしている。同じ人が答えているのだから膨らんでいる、とよく言われます。ところがこの領域では、逆向きの実例が出ています。2007年の研究は、カリブ海のキュラソー島にある1社の従業員94人に価値観と離職意図を尋ね、適合度を同じ人の回答から作る場合と、組織側の並びを別のところから取る場合の二通りで作りました。要旨の結論は——「別ソースの適合度のほうが、同一ソースの適合度よりも、離職意図と有意に強く関連していた」。1社94人の1本で、他の職場でも同じ向きになると示したものではありません。それでも、一般則は当てはまる場所を確かめてから使うものです。

(仮ビジュアル)縦三分割の帯状の写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に脱ぎ置かれた上着と鍵
一つの数字として受け取る・補正の条件を見ない・一般則をそのまま当てる。 Visual: ALIFE

並べ直すと、38年ぶんの流れが見えます。分け方で二つの値が出て、追試で確認されたのは指標が効くことのほう、成果との関係は補正の扱いで割れました。増えたのは、値の精度ではなく、値が動く理由の数のほうです。測っている量が、そもそも作り方に依存する量だった——というのが、この号の読み筋です。

標本の断りも置きます。対象は、米国とイスラエル、そしてカリブ海の1社の従業員です。日本の労働市場を対象にした査読研究は、探した範囲ではごく少ないままでした。そして、選択肢の多い人ほど合いそうな職務を選んで応募できるという逆向きも、この範囲では排除できません。

同じ41件から、.21 も .35 超も出る。
書かれていないのは、式と参照先のほう。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。件数で数えれば適合が分かる、と確かめた研究は、この号にありません。測られたのは、値が分け方と補正で動くところまで。ここからはALIFEが提案する実践の入口です。合いそうかどうかは、今日は判定しません。

TRY IT TODAY

  1. 01OPEN

    関心のある職務の募集要項を1件だけ開く。応募するかどうかは、今日は決めない。

  2. 02SPLIT

    書かれている業務内容を、1行が1つの業務になるように並べ直す。長い一文に3つ入っていれば3行に割る。

  3. 03COUNT

    1行ずつ「実際にやったことがあるか」だけを判定して印を付け、「8行のうち3行」のように二つの数字を書く。

5分。**採点はありません。**できそうか、向いていそうかも判定しません。印が0行でも、数として成立します。いま働いていない・これから初めて働く場合は、仕事以外の場面(学び直し・家事・介護・地域の役割)で数えてかまいません。**応募先や、そこで働く人を評価する課題ではありません。**書いたものは手元に置き、読み終えたら処分してかまいません。つらくなったら中止し、つらさが続く・強まる場合は、医療・支援の専門家へ相談してください。

職務適合性の評価力は、合う仕事を当てる技術の名前ではありません。確かめられたのは四つ。同じ41件・77の相関から .21 と「.35 超」の両方が出たこと。職務遂行 .14 の隣に「範囲制限は補正していない」と書かれていること。2017年の再検討は92件・1,858の相関で、指標 0.32、興味の得点 0.16 だったこと。そして別ソースの適合度のほうが離職意図と強く関連した、1社94人の例。合う職務が見つかるとも、満足が上がるとも、研究は約束していません。——今日残るのは適合度ではありません。全体の行数が1つと、印の付いた行数が1つ。数字が二つ、増えるだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS職務適合性の評価力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。