IN ARTS · ISSUE 070

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台に、白い発酵乳の瓶・浅い切り漬けのグラス・琥珀色の発酵茶の細長い容器が三つ並んだ静物写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

1990年の実験では、58人が、レバーで800ミリ秒のあいだに決まった軌道を描く課題を、2日間で192試行練習しました。片方の群は毎試行ずれを見せられ、もう片方は前半を密に・後半ほどまばらにして全体の50%だけ。練習中の成績に、群間の明確な差は出ませんでした。差が出たのは翌日、フィードバックなしの保持テストで、半分だけの群の誤差は毎回の群より35%小さいものでした。

この号が扱うのは、助言のもらい方ではありません。返ってくる情報の回数が、どこまで測られてきたかのほうです。「ずれは早く、多く知らせてもらうほどよい」は、1989年の要約実験が報告する練習中の成績の方向と矛盾しません。ただし測られた範囲はその一文より狭く、翌日の側で形が変わります。芸事をしていない人も、読者から外れません。

フィードバック処理(Feedback Processing)は、情報を受け取る力というより、次の一回にどう配るかまでを含む言葉です。研究は、与えられる情報を二つに分けます。結果の知識——目標からどれだけずれたか(矢が的の右下に外れた、演奏が2秒巻いた)。やり方の知識——動きの質(肘が早く開いた、重心が後ろに残った)。もう一つ約束事があり、練習中の成績と、時間をおいて測る学習は別のものとして扱います。

(仮ビジュアル)夕暮れの大きなガラス壁ぎわに、黒い長袖と黒いパンツで裸足のまま立ち、海と岩場のほうへ目を向けている女性。ガラスにその姿が薄く映り込んでいる写真
同じ一回に返ってくる情報でも、測られている場所が違う。 Visual: ALIFE

では、回数を変えると何が変わるのか。「多いほどよい」と語られてきましたが、そう書ける範囲は、測るのを翌日へずらすと狭くなります。まず測られたのは、この3つ。

01100%と50%。練習中は差が出なかった。全体で50%だけ見せられた群と、毎試行見せられた群。練習中の成績に群間の明確な差はありません。翌日のフィードバックなしの保持テストで、50%群の二乗平均平方根誤差——目標の軌道からのずれをまとめた指標——は100%群より35%小さく、統計的に有意でした(F(1,56) = 6.24)。58人・192試行。実験室のレバー課題を大学の実験参加者に課し、24時間後に1回測った結果です。

02要約を長くすると、順位が反転した。1989年の実験は、結果の知識を1・5・10・15試行分まとめて渡す4群に分けました。練習中の成績はまとめる量が長い群ほど悪く、2日後の保持テストでは順位が反転したと報告されています。著者らはガイダンス仮説の支持と解釈しました。ただしALIFEが確認できたのは設計と方向までで、各群のミリ秒の値と参加者数は原典本文に到達できていません。方向を示す1本として扱います。

03与えること自体は、体育の場面で統合された。2022年のメタ分析は、体育での運動技能学習を扱った15研究・延べ853人を9つのデータベースから集めて統合しました。与えた条件が上回り、標準化平均差(効果量の一種)は 0.47、95%信頼区間は 0.01〜0.93(Z = 2.02、p = 0.04)。0なら差がなく、大きいほど与えた条件が上回る方向です(一般的な目安では「中」のあたり)。ただし下端は 0.01 でほとんど0に接し、統合値は15の研究が一様だった意味でもありません。対象は体育の場面に限られます。

(仮ビジュアル)ベージュの壁の前で、黒い石の細い天板を、青いガラス・銀の金属・赤い漆という三つの異なる脚がそれぞれ支えている彫刻的なコンソールテーブル
回数を半分にした群、要約を長くした群、与えること自体。まず測られたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

ここで止めると、「確認は減らせばいい」に着地します。検算しておきます。手がかりは3つ。

01その日の出来で、回数を決め直している。よく引かれるのはガイダンス仮説。1984年の総覧が、練習中の一時的な成績への効果と、保持テストで測る比較的永続的な学習への効果を分けて評価すべきだと論じ、それが出発点になったと紹介されています(ALIFEはこの総覧に到達できておらず、後年の紹介による間接的な確認にとどまります)。1991年の書籍の章は、頻繁なフィードバックによる低下を、不適応な短期的修正、情報処理活動を塞ぐこと、またはその組み合わせと解釈しました(公開部分の範囲でしか確認できていません)。どちらも枠組みと解釈で、回数を決め直す運用を直接検証した実験ではありません。

02「自分で選べる方式」に、期待を置いている。いつ見るかを本人に選ばせる方式は自己制御フィードバックと呼ばれ、有望視されてきました。2022年のメタ分析は51実験・52の効果量を集め、素朴な統合推定は g = .44(95%信頼区間 .31〜.56)——0なら差がなく、大きいほど自分で選べる条件が上回る方向です(一般的な目安では「小」と「中」のあいだ)。ところが同じ「自己制御練習の運動学習への効果」というアウトカムに、出版バイアスを補正する重み関数モデルを当てると g = .107(.047〜.18)まで縮みました。p値の分布——p曲線——にも証拠としての価値は認められません。著者らの結論は、利益は小さく、現時点ではゼロと区別できない。無効だと証明されたという意味ではありません。

03形式の優劣を、決着済みだと思っている。同じメタ分析には、大事な断りが付いています。結果の知識か、やり方の知識か、映像か言葉か——下位の種別ごとに優劣を切り分けるには、現時点で証拠が足りない。与えること自体の効果は統合されましたが、どの形式が優れているかは決着していません。形式を比べた試験も扱っていません。映像そのものが情報になるのではなく、どこを見るかの指示と組み合わさって初めて情報になる——というのが、この号の読み筋です。

(仮ビジュアル)縦三分割の帯状の写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に脱ぎ置かれた上着と鍵
その日の出来で決め直す・決定権に期待する・形式の優劣を決着済みと読む。 Visual: ALIFE

六つを並べ直すと、矛盾はしていません。回数を半分にした群も要約を長くした群も、練習中と翌日以降で向きが変わりました。与えること自体は体育の15研究・853人で統合され、種別ごとの優劣は証拠不足。本人に選ばせる方式の上乗せは、補正すると g = .44 から .107 へ縮みます。練習中に見えている成績と、翌日に残っているものは、別のアウトカムです。

標本の断りも。ここで引いた実験は、レバー操作や時間の制御といった実験室課題を、欧米の大学生に短期間やらせたものが中心です。楽器や武道のような長期の複雑な技へそのまま外挿できるかは分かっていません。方向は信用してよいとしても、あなたの練習で最適な回数が半分になるとは限りません。

58人の実験で、練習中に見えていたものと、
翌日に残っていたものは、別だった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。確認の回数を半分にすればあなたの練習が伸びる、と確かめた研究は扱っていません。自分の判定が実際とどれだけ合っているかも、どの論文にも書かれていません。ここからはALIFEの提案です。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    いま練習している動きを1つ選び、同じ条件で10回続けてやる。

  2. 02CALL

    各回の直後に、自分で○△×のどれかを判定して声に出す。頭の中ではなく、声に出す。

  3. 03CHECK

    実際に確かめるのは5回目と10回目の2回だけ。残り8回は確かめずに次へ進み、最後に自己判定と実際が一致した回数(0〜2)を数える。

15分。**採点はありません。**一致が0でも外れではありません。測るのは、判定と実際がどれだけ合っていたかです。**刃物や重い道具は使わず、素手か軽い道具で。**運動や動作の制限を医療者から受けている場合は、そちらが優先。痛み・めまい・息苦しさが出たら中止を。録音も録画も要りません(記録するなら保存先と共有設定を確認し、不要になったら消してください)。芸事をしていなければ、料理の同じ工程など、始まりと終わりのはっきりした動作で。他人の出来は判定しません。つらさが続く場合は、この課題より先に医療・支援の専門家へ。

フィードバック処理は、教わり上手につけられた名前ではありません。確かめられたのは、58人・192試行で練習中は差がなく、24時間後の保持テストで誤差が35%小さかったこと、要約を長くすると2日後に順位が反転すると報告されていること、体育の15研究・853人で与えた条件が上回る一方、種別ごとの優劣は証拠不足とされたこと、上乗せが補正で g = .44 から .107 へ縮んだことです。上手くなるとも、迷いが消えるとも、研究は約束していません。今日残るのは統合値ではなく、10個の記号と、一致した回数がひとつ。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUSフィードバック処理を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
効果量 d・g
2つのグループの平均の差を、ばらつきの大きさで割った値。一般的な目安では 0.2=小、0.5=中、0.8=大。g は d を小規模研究向けに補正したものです。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。
出版バイアス
「効果が出た」研究ほど論文として世に出やすい偏り。これがあると、統合した平均値が実際より大きく見えます。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。