IN ORGANIZATIONAL FOUNDATION · ISSUE 174

(仮ビジュアル)縦3枚に切り分けられた場面が並ぶ写真。左は寝具が乱れたままの暗いベッド、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「組織変革の70%は失敗する」。変革の資料には、ほぼ必ずこの一行があります。2011年の論考は、この数字が現れる公刊物を5件選び、一件ずつ検討しました。どの一件にも、掲げられた70%を支える妥当で信頼できる実証的根拠は見当たらなかった。物語の流通自体は認めたうえで、支える根拠は存在しない、が結論です。

扱うのは組織の変え方ではなく、受け取る側で何が起きるかが、どこまで数えられているか。これは「変革はたいてい成功する」の意味ではありません。同じ論考は、組織変革に固有の失敗率という考え方自体を、変化の曖昧さ・文脈への依存・受け取り方の競合・時間・測れるかどうかの5つの面から問い直します。職場を変える手順も、残るか辞めるかの話も渡しません。

変化適応力(Adaptability to Change)は、変化に強い体質の名前ではなく、方針が変わったと伝えられたとき受け取る側で何が起きるか、という点検の名前。機会の察知も、仕事を続けるかどうかも、この号の外。並べた7本に、無作為に割り付けた実験は1本もありません。だから「効く」とは書けません。書けるのは、結びついていた、予測していた、まで。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗い上着姿で街の明かりのほうを見ている女性。暗いガラスにその横顔が薄く映り込んでいる
点検の対象は、変化に強い体質ではなく、方針が変わったあとに起きること。 Visual: ALIFE

まず置かれたのは、この3本です。(うち2本はレビューで、それ自体が測った研究ではありません。だから「測られた」ではなく「置かれた」と書いています。)

0170%が現れる公刊物は、5件たどって検討されている。2011年の論考が問い直したのは、取り組みの70%が失敗するという数字の出どころと、その支えです。5件の公刊物をそれぞれ別のものとして批判的に検討し、支えとなる妥当で信頼できる実証的根拠は、どれにも見当たらなかったと報告しました。「変革は失敗しない」でも「70%より低い」でもありません。

021948年から2007年までの79件が、一つのモデルに整理された。同じ2011年のレビューが集めたのは、1948年から2007年までに公刊された、受け取る側の反応を扱った量的研究79件。分母は人数ではなく研究の件数です。反応を3つの面を持つ態度として概念化し、手前を変化前の条件(受け手の特性・組織の内部の状況)と変化に伴うもの(進め方・得か損かの見込み・中身)に分け、帰結を仕事に関するものと個人に関するものに分けています。

03改組の渦中では、性格の側と手続きの側の両方が報告されている。2000年の縦断研究(同じ人たちを時間をあけて複数回測る調査)が測ったのは、改組が進む職場。自尊感情・楽観・統制の感覚を合わせた個人のレジリエンスは受容の高さと結びつき、受け取った情報・自己効力感・決める過程への参加という3つの文脈特有の変数は、開かれ方(受容と、肯定的に見ることの合成)を予測。受容の低さは、職務満足の低さ・仕事上の苛立ち・辞める意思の強さと結びついていました。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
5件の公刊物の検討・79件の整理・改組の渦中の縦断研究。まず置かれたのは、この3本。 Visual: ALIFE

記述そのものは動きません。動くのは、引用されていく途中のほうです。落ちやすいのは3か所。

01枠組みが、測られた能力として運ばれる。よく引かれるのがダイナミック・ケイパビリティ。1997年の枠組みは、急速な技術変化の環境にある企業の富の創出と獲得の源泉と方法を分析し、競争優位は調整と組み合わせという独自のプロセスに宿り、企業固有の資産と発展の経路に形づくられる、と論じます。枠組みの提示であって、能力の測定ではありません。2009年の論考は、これを論理的な一貫性・概念の明確さ・実証の厳密さで評価し、問題を4つ挙げます——付加価値が不明確、理論的な基礎を欠く、実証の裏づけが弱い、実務上の含意が不明確。2つに縮めると、批判の形が変わります。枠組みのほうは2008年6月の時点で1,180件引用されていました。

02説明と参加が、同じ一つの手続きに丸められる。2004年の研究は、不確実性を3つの型(戦略・構造・職務)に分けたモデルを一つの公共部門の組織で検証し、支持されました。経営側からのコミュニケーションと負の関連(一方が高いほど、もう一方は低い向き)にあったのは戦略の不確実性、参加と負の関連にあったのは構造と職務の不確実性。著者らは型ごとに対処の仕組みが違う示唆と書きます。支持されたのは「統制の感覚が、職務の不確実性から心理的な緊張への効果を媒介する」向き(媒介=一方の効果がもう一方へ伝わる通り道)。参加は通り道として測られたのではなく、統制の感覚と正、緊張と負の独立した関連。悪影響を短絡させうる、は著者の示唆で、測定された経路ではありません。

03「性格か、進め方か」の二択に整理される。二択にすると、両側が落ちます。縦断研究が報告したのは、個人差の側と、その場の条件の側の両方でした。片側だけ運ぶと「うちは変化に弱い体質だ」にも「性格は関係ない」にもなります。2013年の理論的なレビューは、変化への準備性の研究に2つの限界を挙げました——中核の認知には相当の一致があるものの感情的な要素が検討されてこなかったこと、多水準の視点が採られてこなかったこと。そのうえで個人・作業集団・組織の3水準の枠組みを展開します。79件のレビューとこの準備性のレビューには同じ研究者が入っており、独立した二つの検討ではありません。

(仮ビジュアル)縦3枚に切り分けられた場面が並ぶ写真。左は寝具が乱れたままの暗いベッド、中央は窓辺で外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
枠組みを能力として運ぶ・説明と参加を丸める・性格か進め方かの二択にする。読み違いは、この三か所。 Visual: ALIFE

全文まで読めた出典は、この号にはありません。6本が抄録の範囲まで、1本(2004年の研究)が抄録と本文の冒頭まで。読めていない範囲については書きません。7本に、無作為に割り付けた実験は1本もありません。どの国の、どんな職場で採られたのかも、抄録の範囲では多くが特定できていません(2004年の研究の著者はオーストラリアの大学に所属)。

ここから出てくるのは「変革はうまくいく」でも「変革は無駄だ」でもなく、その数字は支えを確かめないまま置かれていた、までです。根拠のない数字は、それを必要とする話の直前に置かれる——というのが、この号の読み筋です。そして、方針が伝えられた日から、行動が変わった日までの日数を測った研究も、7本にありません。ALIFEが提案する見立ての単位です。

流通している物語のほうは、認められている。
支える根拠のほうが、見当たらなかった。

だから次の3手も、研究が命じた順番ではありません。日付の差を数えたとき何が起きるかを確かめた研究も、ありません。職場へ働きかける課題ではありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    直近1年で、自分の周りで方針が変わったことを1件思い出す。大きさは問わない。良し悪しも、誰が決めたかも書かない。

  2. 02DATE

    それが自分に伝えられた日と、その方針にそって自分の行動が変わった日を、およそで2つ書く。他人の行動が変わった日は数えない。

  3. 03COUNT

    2つの日付の差を、日数の整数で1つだけ書き、今日の日付を添える。まだ変わっていなければ、今日までの日数に「未」を添える。**目標も、判定も書かない。**

10分。採点はありません。**職場を変える課題でも、残るか辞めるかを判定する課題でもありません。**どの原典も、個人の進退を扱っていません。日数の長短に、良い悪いはありません。誰にも見せず、提出もしません。勤め先の機密や、他人の個人情報は書かないでください。**苦しくなったら中止を。職場のことでつらさが続く・強まる場合は、この課題より先に、産業医や社内外の相談窓口、必要に応じて医療の専門家へ。**

確かめられたのは、5件のどれにも、70%を支える根拠が見当たらなかったこと、79件が態度と手前の条件と帰結に整理されたこと、縦断研究が個人の側と条件の側の両方を報告したこと、統制の感覚が職務の不確実性から心理的な緊張への効果を媒介していたこと。変革をどう進めれば成功するかは、どこにも書かれていません。——今日残せるのは判定ではありません。日付が2つと、その差が1つ。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS変化適応力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

観察研究・前向き研究
介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。