IN SELF · ISSUE 015
● 12 SEC悲しみには五つの段階があり、否認から始まって受容で終わる——この地図は、習っていないのに誰もが知っています。ところが、家族を亡くした233人を死別後1か月から24か月まで追った研究が見つけたのは、少し違う形でした。受容は1か月の時点ですでにいちばん強く、24か月まで一度も首位を譲らなかったのです。
もうひとつ、意味づけの総説には、あまり紹介されない観察が並びます。意味を探したが見つからなかった人より、そもそも探さなかった人のほうが適応が良かった。探索は無料ではない。この号は、外から親切な顔で届く「意味」を、値札のほうから検品します。
意味・目的の再発見力(Meaning Making)とは、病気や喪失で中身が抜けてしまった「何のためにこれをやっているのか」という場所を、もう一度埋め直していく力のこと。研究では、意味づけの努力(探すこと)と作られた意味(見つかったもの)を、別の変数として扱います。
日本語ではどちらも「意味を見つける」の一語で呼ばれますが、データの上ではまったく別に振る舞います。ここを混ぜたまま助言すると、値札を見ずに買うことになります。

意味を扱う介入には無作為化比較試験の蓄積がありますが、目盛りは等身大です。進行がんの12試験・1,459人のメタ分析では、統合された標準化平均差は意味の実感0.22(95%信頼区間 0.09〜0.36)、不安−0.16(同 −0.26〜−0.07)、抑うつ−0.15(同 −0.24〜−0.05)。生活の質は1か月以内で0.27(同 0.03〜0.52)でしたが、2〜6か月後には明確な差とは言えなくなりました。それでも、値切ったあとに残るものが3つあります。
01受容は、終着点ではなく最初からあった。コネチカット州で家族を亡くした233人を死別後1〜24か月まで追った縦断研究。五つの指標(不信・思慕・怒り・抑うつ・受容)が最大値をとる順番は理論の予測どおりでした(不信1か月、思慕4か月、怒り5か月、抑うつ6か月、受容は24か月まで増加。偶然にこの順になる確率 p=.008)。ただし受容は1か月時点ですでに最も強く、否認に対応する不信は最も低い水準にとどまりました。米国の単一州・自然死中心の観察研究で、順番の一致は関連の記述にすぎず、段階を順に経るべきだという指示ではありません。
02探すことと、見つけることは別に動く。意味づけ研究を統合した総説は、意味づけの努力と作られた意味を別の構成概念として区別しました。探そうとすること自体は必ずしも適応と結びつかず、まだ折り合いがついていないことの印である場合が多い。整理された研究には、意味を探したが見つからなかった人より、まったく探さなかった人のほうが良好に適応していた、という結果もあります。観察研究の総説なので、探索が不調をもたらすという因果は決められません。著者は、努力も作られた意味も量より質が重要な可能性を結論に挙げています。
03進行がんの試験で動いたのは、意味の側。進行がんの253人を、意味中心の集団療法と支持的な集団療法(いずれも8回)へ無作為に割り付けた試験。3回以上出席した人での効果量は、霊的な幸福感が0.54対0.17、生活の質が0.40対0.08。2か月後の追跡でも0.48対0.22、0.35対0.05でした。比較相手は無治療ではなく別の集団療法です。ただし脱落は大きく、割り付けられた人の32%は一度もセッションに出ていません。3回以上出席した人に限る解析は、脱落後の比較になるため、無作為化による保証が弱くなります。苦痛の強さを参加条件にしていなかったことも、著者らが挙げる限界です。

意味の探索は、本人が始めるぶんには本人の作業です。問題は、それが期限のない宿題に変わっているときで、手がかりは日常の側にあります。
01大文字の意味を、一個だけ探している。「これには意味があるはずだ」と、たった一つの答えを探し続けている。総説が整理した観察研究では、探したが見つからない人は、探さなかった人より適応が良くありませんでした。探索を始めた以上、見つからない期間が続くこと自体がコストになります。
02順番どおりに進めていない、と気に病む。段階説を実践の指針として用いることは役に立たず、害を及ぼしうる——後続の論考はそう明言しています。誤って信じた人は自分が適切に対処できていないと感じ、正しい順序で段階を経ているかを気に病む。援助者のもとには、ある段階を経験していないという理由で助けを求めてくる人が現れます。段階説は、複雑な経過をたどる人や危険性の高い人の識別にも役立ちません。
03意味が、外から配られてくる。「この経験にはきっと意味がある」「何かを学べたはずだ」。見つかったと答えれば成功例になり、見つからないと答えれば探し方が足りないことになる——反証できない形の言葉です。配る側にコストはなく、在庫は受け取る側に残ります。

終末期の患者を、尊厳を主題にした対話の療法・標準的な緩和ケア・患者中心のケアの3群へ無作為に割り付けた試験があります。主要評価項目である苦痛の指標では、群間に明確な差は示せませんでした(もともとの苦痛が低く、床効果が生じたためと報告されています)。一方、試験後の自己申告——役に立った、生活の質が上がった、尊厳の感覚が高まった、家族の自分に対する見方が変わった——では、この療法の群の割合が他の2群より高いものでした。
12試験・1,459人のメタ分析も、同じ輪郭を描きます。小さく出た統合値であって、個々の試験の結果が一様だという意味ではありません。対象も進行がんと終末期の患者に強く偏っており、慢性疾患やリハビリテーションでの検証はまだ薄いままです。
小さいことと、無価値であることは違う。
目盛りを間違えなければ、十分に使える道具。
意味を扱う介入は、苦痛の尺度を大きく動かす道具ではありません。動くのは意味の実感と、本人による有用感のほうです。そして「意味を探しなさい」という助言は、相手が見つけられる保証がない以上、期待値のはっきりしない提案でもあります。皮肉の矛先は、意味を見つけた人にも、見つけられずにいる人にも向きません。向くのは、探索を無料だと思って配っている言葉の側です。
TRY IT TODAY
- 01COUNT
今日1日で、自分が価値を置くことに使えた時間を分で数える。
- 02RECORD
その数字だけを記録する。0分なら、0と書く。
- 03WEEK
1週間ためて、日ごとではなく週の合計だけを見る。
意味の再発見は、ある日の悟りとして描かれがちですが、観察されているのはもっと地味な過程です。目標そのものが入れ替わるには月から年の単位がかかり、途中経過は本人にも見えません。先に動かせるのは短いほうの時間軸——今日の24時間のうち、何分をそちらに使えたかです。体調の波は日単位で暴れるので、測るなら1週間の合計で。悪い日が3日あっても、週で30分残っていれば、その週は残っています。0分でもかまいません。少なくともそれは、誰かが描いた地図の上の位置ではなく、あなたの実測値です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS意味・目的の再発見力を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量
- 差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
- 95%信頼区間
- 推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
- 無作為化比較試験
- くじ引きの要領で「介入を受ける群」と「受けない群」に分けて比べる実験。「効いたかどうか」を言うための標準的な設計です。
- 観察研究・前向き研究
- 介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。
- p値
- 差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

